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第二十四章 油断
(22)
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「そうだ! これから先――」
と、ミュゼットが続けて言った。
「親愛の情をこめて、ユウトのこと“お兄ちゃん”って呼んでいい?」
「は!?」
「嫌なの? う~ん……それなら――ユウ兄ちゃんでどう?」
「別に何て呼んでもいいですけど……」
と、僕はミュゼットに言った。
「まずはそこのハイオークをなんとかしないと……」
「わかってるから、そっちはまかせておいて!」
ミュゼットはニッコリ笑った。
「変態オークには、ボクがとっておきの魔法でお仕置きしてやるんだから! これを使っちゃうと後がしんどいんだけどね」
とっておきの――
ということは、おそらく炎系の最上位攻撃魔法か。
ミュゼットは僕から少しだけ離れ、パンチを繰り出し続けるハイオークの方を向いた。
そして瞳を閉じ、精神統一して詠唱を始めた。
「偉大なる灼熱の神にして冥府の門番ジャウストよ――!
我れの手に紅蓮の力と久遠の炎を――!!」
『 地 獄 の 業 火――――!!! 』
中二病全開な魔法詠唱――
が、それをするのがミュゼットだと、まったく痛く見えない。
むしろ一瞬目を奪われてしまうぐらい、魔法でハイオークに立ち向うミュゼットの姿は様になっていた。
当然その威力も凄まじい。
ミュゼットが『地獄の業火』の詠唱を終えた途端、ハイオークの真下の地面が網目状にひび割れ、そこから真紅のマグマが天にも届く勢いで吹き上がった。
それは僕が今まで見てきたディスプレイに映し出されるゲームのCGとはまったく違う、魔法によって生み出されたリアルで凄絶な炎の嵐だった。
ハイオークの巨体はたちまちその火柱に包まれ、その最後の咆哮も、燃え立つ炎の轟音によってかき消されてしまう。
すべてを焼き尽くす『地獄の業火』はその後数分間、荒れ狂うように燃え続け――
炎が消え去った時には、一体のハイオークが、この異世界から跡形もなく消滅していたのだった。
と、ミュゼットが続けて言った。
「親愛の情をこめて、ユウトのこと“お兄ちゃん”って呼んでいい?」
「は!?」
「嫌なの? う~ん……それなら――ユウ兄ちゃんでどう?」
「別に何て呼んでもいいですけど……」
と、僕はミュゼットに言った。
「まずはそこのハイオークをなんとかしないと……」
「わかってるから、そっちはまかせておいて!」
ミュゼットはニッコリ笑った。
「変態オークには、ボクがとっておきの魔法でお仕置きしてやるんだから! これを使っちゃうと後がしんどいんだけどね」
とっておきの――
ということは、おそらく炎系の最上位攻撃魔法か。
ミュゼットは僕から少しだけ離れ、パンチを繰り出し続けるハイオークの方を向いた。
そして瞳を閉じ、精神統一して詠唱を始めた。
「偉大なる灼熱の神にして冥府の門番ジャウストよ――!
我れの手に紅蓮の力と久遠の炎を――!!」
『 地 獄 の 業 火――――!!! 』
中二病全開な魔法詠唱――
が、それをするのがミュゼットだと、まったく痛く見えない。
むしろ一瞬目を奪われてしまうぐらい、魔法でハイオークに立ち向うミュゼットの姿は様になっていた。
当然その威力も凄まじい。
ミュゼットが『地獄の業火』の詠唱を終えた途端、ハイオークの真下の地面が網目状にひび割れ、そこから真紅のマグマが天にも届く勢いで吹き上がった。
それは僕が今まで見てきたディスプレイに映し出されるゲームのCGとはまったく違う、魔法によって生み出されたリアルで凄絶な炎の嵐だった。
ハイオークの巨体はたちまちその火柱に包まれ、その最後の咆哮も、燃え立つ炎の轟音によってかき消されてしまう。
すべてを焼き尽くす『地獄の業火』はその後数分間、荒れ狂うように燃え続け――
炎が消え去った時には、一体のハイオークが、この異世界から跡形もなく消滅していたのだった。
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