無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり

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幕間―別視点【四人ピックアップ】

便利な道具を勝手に捨てられた(前編)

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―――妹マリアーヌ・エイヴァリーズ公爵令嬢視点

 私は親しい方達と王都の有名なお店で、美味しくランチを楽しんでいた。
 今日は大変な事があったから、午後の授業はなくなったわ。
 食事が終わっても、話に花が咲いた。

「マリアーヌ、大変だったな」
「今まで気づいてやれず申し訳ない」
「兄弟が不出来だと大変だよな。俺の所も……」
「本当にマリアーヌ様可哀相。これからは相談してくれよな」

 皆の気遣いや言葉が気持ちいい。
 愛されている私は皆の注目を浴びるのが当然なんだから。

 ひとしきり皆の言葉を楽しんで、美味しいお茶やお菓子も食べて店を出た。

 店を出る前にオーレイヤン殿下は仰った。

「大変だったけど、もうマリアーヌが心配する事なんて起きないさ。ところで準備は進めているか?」
「勿論ですわ、殿下。いつもの様に完璧に仕上げて見せますわよ」

 そう、私の便利な道具がね。
 内心ほくそ笑みながら、自信のある笑顔で私は言った。
 そう、私の計画は完璧なのよ。

 これからの事を考えながら屋敷に帰宅すると、信じられない事が起きていた。
 両親が私の道具を勝手に捨てたというのだ。

「私達の大切なマリアーヌ。この家に不要な者はいなくなったよ」

 笑顔の両親は、既に学園長に話をして退学の手続きを済ませたそうだ。
 その間に消えていたから行方は分からないと言った。

 信じられない。なんて事をするのよ!

「お父様、暫定ではありますが、あれは次期公爵ではありませんか。どうしてこの様な事に……」

「ハハ、何そんな事を気にしているのか。それはもう随分前から王妃と話がついている。いずれマリアーヌが王族となり、子を複数成すだろう。その内の一人を貰い受ける。その予定だったからあれは必要ないんだよ」

 そんな話聞いてない。

「幼い頃からたくさん子が欲しいと言っていたではないか。マリアーヌの子なら優秀だろう。王族の血が入れば当家はまた箔が付く。これ程良い案はない」

「そうよマリアーヌ。幸い殿下とも親しくして頂き、貴方も健やかに育ちましたもの。学園を卒業したら結婚でしょう。もう少しリディアーヌの出来が良ければよかったのでしょうけど、退学ですものね。将来貴族としても使えないならもう必要ないですわ」

「これ、縁起でもない名を言うな」

 朗らかに話す両親と私の認識は違っていた。
 まさかの身内に計画を壊されるとは思わなかった。



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