無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり

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第一章 公爵令嬢の姉

17 追放という名の贈り物

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 私は少ない荷物をまとめあげ、カバン二つ抱えて部屋を出た。
 如何にも、未練がある様に体を引きずりながら移動する。
 ポーションを飲むには、人目がない場所まで我慢が必要だ。
 こんな所で、盗み等の疑いをかけられ立ち止まりたくない。
 ポーションは高価なのだ。

 屋敷を出る前に、備え付けの魔道具に書類を入れておいた。
 私が使ったかなり古い型の魔道具は、妹からの指示で私専用だ。

「これは手紙を運んでくれる魔道具ですわ。最新式が国から支給されたのですって。でも、こういうのは私にお似合いだから、私専用にするの。だって誰より忙しいのですもの」

 妹はそう言って最新式を自分の物とし、かなりの型落ちをさも特別に与えたかの様に私専用に用意したのだ。

 この魔道具は魔力が必要だが、外気に漂う空気中の魔力でも、溜まれば手紙を運んでくれる。
 但し時間がかなりかかる。
 自分の魔力を使えば短縮出来るが、これから何があるか分からない。

 一旦入れれば、こちらからの取り出しは不可。
 その内書類は相手に渡るだろう。

 屋敷中に私の追放は知れ渡っているようで、侮蔑や軽蔑の負の視線を感じながら屋敷を出た。

 邪魔をされず、本当に良かった。

 今まで使っていた質素な馬車の馭者席に乗り込み、ポーションの半分を飲んだら痛みが引いていった。

 これは私専用の馬車だもの。
 もちろん家名のプレートは投げ捨てた。
 プレートで足がつくなんてゴメンだわ。

 学園の授業で習っただけの頼りない操縦だが、私の見た目と合わさって見習いの練習中に見えるだろう。

 まずは資金を手に入れよう。
 今までポーションを売る事はしなかった。
 どこに人の目があるか分からない。
 公爵家の人脈を侮ってはならないから。

 私の生命線を取り上げられないよう、隠していたのだ。
 やっと解禁出来る。

 王都を出て、残りのポーションを飲み体を完治させた。

 四方に延びた道を見渡し、行き先を決める。
 妹に知られない内に、出来るだけ早く王都から離れなければ。
 もう代わりなんてしなくていい。
 私は私の人生を自由に歩むのだから。


 私は懐に大切に入れた、オルレンブルグ先生の手紙をそっと確認した。


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