傲慢な超幸運王子はある意味最強

東間

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絶望猫

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ある所に一匹の子猫がおりました。

子猫は違う世界で死に、神によりこの世界に生まれ落ちた【神の恩恵者】でした。

子猫は何千、何万の時を生きました。
子猫は【不老不死】の恩恵を持っていました。

何度も死に何度も生き返り、子猫は絶望します。
ですが、元の世界に帰る方法を探し続けました。

子猫は元の世界では虐待され死んだ魂です。

子猫には元の世界に親友がいました。
親友だけを求め、元の世界に戻る方法を探しました。

『神にも手に入らない“至福の時”。それは、誰かを愛する時だ。だから俺は俺の守るべき者達を愛する。もちろん、お前もだ』

『愛されなかったなんて言うな。
……分かった。俺はお前に、唯一の友愛をあげよう。約束だ』

子猫は探します。何千、何万の時を過ごしながら、絶望しながら。

ある日子猫は子供を見つけました。
古い地下牢に閉じ込められている子供です。

子供はただ、嗤っていました。

子猫は度々そこを通る様になりました。

子猫は絶望しました。
ですが子供を見るとまた、歩き出しました。

子猫は死にました。
ですが子供を見るとまた、歩き出しました。

『なんでこんなに気になるんだろう?』

その日子猫は立ち止まり、子供に話しかけました。

『ここで何をしている?』

そう言った子猫に、子供は返します。

『死ぬ時を待っている』

と。

子供はそれ以降喋りませんでした。
黒い髪に同色の瞳の、闇の様な子供。

(まるで、日本人の様だ)

子猫はそう思いながら今日も子供の前を通ります。

ある日子供は死にました。
死因は餓死の様です。

子猫は鉄格子の前で待ちました。

子供が生き返るのを。

『なんで生き返らないんだ?』

子猫は首を傾げました。
子猫は永らく生物と関わっていなかった為、忘れているのです。

一度死んだら生き返らない事を。

『……そうか。死んだのか』

子猫は涙を流しました。
羨ましかったのか、悲しかったのか、理由は子猫にも分かりません。

そして子猫は再び何千何万の時を生きました。
子猫は何度目かの絶望をしました。
子猫は、虚しくなりました。

ある日子猫は古き日の子供を思い出しました。

『また会いに行ってやろう』

子猫は子供が死んだ事を忘れ、子供に会いに行きます。

あの頃より伸びた木々を渡り。
潤った泉の水を飲み。
美しく鳴く鳥達の鳴き声を聞き。

子猫はたどり着きました。
 
そして、出会ったのです。

『ホコリまみれではないか!』

『《うわっ愛し子待ってってば!》』

『《ギャー!愛し子停止してー!》』

『《汚れちゃうってば!》』

遥か昔出会った天使の様な色味を持つ、亡くなった子供にどこか似た幼子と妖精達に。

しかし幼子と妖精達はいつの間にか作られた鉄格子の中にいました。
ですが子猫は気づきません。

『おや、随分毛色が変わったな』

余りにも楽しそうな雰囲気に惹かれ、子猫は話しかけました。

幼子が此方を見ます。

『ッ!?…………は?何を言っているんだ?…僕は君とは初対面だ』

流暢に喋る幼子は妖精達に全身についたホコリを払って貰っています。

子猫は首を傾げました。

『忘れたのか?』

『いや初対面だ。貴様こそ脳が老化した事を忘れたのでは?』

『失礼な子供だな。私は『不老不死』だぞ?老化する筈ないだろう』

子猫は尻尾を地面に叩きます。

『ではそこにいる骸骨では?』

幼子は何も無い所を指差します。
ですが子猫は思い出しました。子供が死んだ事を。

『お前はどうして出ないのだ?』

子猫は首を傾げました。

『母が迎えに来るだろうから待っている』

『そうか』

子猫と幼子の会話は終わり、子猫は去りました。
そして数年後、子猫は再び訪れました。

『なるほど。僕の兄弟が産まれたか』

幼子は未だに鉄格子にいました。
妖精達と会話しています。

『まだいたのか。母親はどうした?』

『妖精が知らんのだ。僕が知るわけないだろう?』

幼子は平然と言いました。

『絶望しないのか?見捨てられたのではないのか?』

子猫はずっと思っていた事を言いました。
子猫はずっと絶望しました。神に見捨てられたのではないのかと思っていました。
それを幼子に重ねました。

『僕には妖精達がいる。それに、絶望して何になる?捨てられたと思った所で何になる?
考えただけ無駄だ。』 

『死にたくならないのか?』

『貴様しつこいな。幼児に向かって何聞いているんだ!
まず僕は幸せだ!ので、絶望もしない!ので、死にたくもない!』

『何だそれは。馬鹿か?』

子猫は笑いました。何万年ぶりに笑いました。

『どうしたら幸せは手にはいる?』

子猫は聞きました。幼子は

『妖精達は僕を愛しているからな』

と言いました。

『《キャー🖤》』

『《照れちゃいまっせ》』

『《僕たち愛してるよー!》』

妖精達も幼子も喜び合います。

子猫は首を傾げました。

『どうすれば幸せは手にはいる?』

子猫は渇望していました。幸せを。

幼子はそれを分かったのか、微笑みました。

『一般的な幸せは誰かを愛する事だ。』

『ッ!』

子猫はその言葉を聞き泣きました。

『お前は【神の恩恵者】だろう?何の恩恵を授かった?』

幼子は子猫に問います。

『……【不老不死】』

『そうか…恩恵とは何なんだろうな?』

『こんなの、呪いだ』

白い子猫はそう言うと鉄格子から、洞窟から去りました。

白い子猫は人間に変化出来る事も、誰かを愛した事も、子供の顔も忘れます。


【幸せだった記憶】で心を殺さないようにする為。


それが正解か、忘れてしまった子猫には分かりませんでした。
子猫は泉で一休みします。

『疲れた』

子猫はそう呟いて昼寝をしました。

『あら?こんな所に子猫ちゃんが…』

青白く細々とした女が子猫を持ち上げます。

『あの子に会わせたら喜ぶかしら?
ねぇ子猫ちゃん。私の息子の話し相手になってくれない?』

『ニャー』

『私、もうすぐ死ななくちゃいけないのよ。
私が力を扱えたら良かったんだけど…。ふふ難しいわね、幸せって。』

女はポロポロと涙を流します。

『愛しいロスバルド様の子供。な、のに、何で…。
私が聖女じゃなければ、ロスバルド様も倒れなかったのに。
あの子も外の世界で幸せに生活出来たのに…』

『ニャー?』

『ごめんね、子猫ちゃん。私、弱くて』

子猫は遥か昔に出会った様なこの女に同情しました。

(君が死ぬその時まで)

子猫は今日も幼子の元へ通います。

    
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