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第26章

異世界のデートはイチゴが先です(3)

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 どこかで聞いたことがあるフレーズだと引っかかりを覚えながらも、予想していた話の展開に少しだけおかしく思う。
 やっぱり、女子はそういうコトが気になるのだろうね。
 羨ましそうな目でエリーさんを見ているドリアとは、全く違う思考回路だよ。

「リニーくんが、色々とやってくれているからね」

 オレの答えに、エリーさんはうん、うん、と大きく頷く。オシャレにすごく興味があるのか、瞳がキランキランしているよ。

 リニーくんのゴットハンドと、庭師が調合してくれた自然派シャンプーとリンスが、オレの髪をサラサラツヤツヤにしてくれていた。
 さらに付け加えるなら、石鹸とオイルで、お肌もスベスベだよ。

「リニー殿は、誰かさんたちと違って、とっても優秀でしょ?」

 誰かさんって……誰と比べているのだろうか?
 複数形なのが少し気になったけど、女子トークでは、そういう細かいことには触れてはいけないよね。

 オレは軽く笑って「ええ、そうですね」とだけ答えておくことにしたよ。

 ドリアが「マオが笑った」と、目を丸くさせて驚いているが、オレだって笑うことぐらいあるよ。社交辞令的な微笑だって浮かべることはできるんだからね。
 アルバイトというものをしていた勇者の記憶からは、スマイルゼロエンとかいうスキルも獲得したからね!

「でも、もったいないですわ。こんなに美しい髪なら、長く伸ばされて結えば、とても素敵ですのに……」

 エリーさんの残念そうなため息を、オレは軽く聞き流す。

 うん、それは知ってるよ。髪を長く伸ばしたら、オレがめちゃくちゃ美人になるのは、わかっているよ。

 実際にそうだったし、伸びかけた髪を切るように命じたら、メイドから「それだけはやめてほしい」と泣いて懇願されたこともあるからね。

 だけど、世の中の平和を保つためにも、オレの髪は短い方がいいんだ……。
 ぶっちゃけ、手入れに時間がかかって面倒だしね。

「そんなに、短い髪は似合っていませんか?」
「いえいえ。勇者様、決して、そういう意味ではありません! 短い髪型も素敵です!」

 エリーさんは慌てて首を振る。
 ポニーテールが勢いよく左右に揺れる。
 そんなに全力で否定してくれなくてもよかったんだが、オレはスマイルゼロエンを発動させながら「安心しました」と言って、この話題を終わらせた。

「長い髪のマオも見てみたい……」

 という、ドリアの声は、空耳として処理することも忘れないよ。
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