【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花

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後輩のつぶやき

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「ハース先輩と、アリス先輩って、美男美女だよな」
 二人が歩いていく後ろ姿を見た後輩の男子生徒が呟く。
「そうだな」
 隣にいた同級生も頷く。

「なのに、何で残念なカップルに見えるんだろうな」
「……言わなくてもわかるだろ?」
 二人の視線の先には、アリスの後ろを歩きながらアリスをチラチラ見ながらメモを取り続けているハースがいた。

「並んで歩けばよくないか?」
「ハース先輩のこだわりらしいよ」
「……いいのかな、残念なカップルで」
「ハース先輩は幸せそうだからいいんじゃないか。アリス先輩もいやがってはいないみたいだし」

「だな。リア充爆発しろって感じだよ」
「あれは完全に爆発してるだろ」
「……だな」


後輩の呟き②


「私もアリス先輩みたいに熱烈に愛されてみたい!」
 二人の姿を目に入れた女生徒が、両手を組んで、うっとりと呟く。
「本当に?」
 友人が、首をかしげる。
「本当よ!」
 女生徒が大きくうなずく。

「えーっと、いつも一緒にいるのよ?」
「いいじゃない! 好きな人とずっといられるなんて、幸せよ!」
「えーっと、周りの人を威嚇しちゃったりするのよ?」
「嫉妬されるなんて、愛されてる証拠じゃない!」

「えーっと、ずっと観察されてるのよ?」
「いいの! だって、それだけ私のことを理解してくれるってことでしょう?」
 女生徒のうっとりした顔とは裏腹に、友人の顔は冷めていく。
「それが一生続くのよ?」
「素敵じゃない! 一生仲がいいなんて、理想のカップルになれそう!」

 友人が首をふった。
「ハース先輩以外にいなさそうだけど。ハース先輩がいいってこと?」
 女生徒が、眉を寄せる。
「それは……違うわ」
「賢明な答えだと思うわ」

「あ、そうだわ」
 女生徒がポンと手を打った。
「アリス先輩みたいに、好きな人から好かれたいんだわ!」
「あ、それならわかるわ」
 友人が頷いた。
「……アリス先輩って、偉大ね」
 女生徒の言葉に、友人が今までで一番大きく頷いた。
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