【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

廊下にて

　アリスとハースが廊下を歩いていると、廊下に佇むメルルが見えた。
　アリスは嫌な予感がした。
　何しろ、メルルにガン見されているのがわかる。

「アリスさま！」
　キタ！　アリスは身構えた。
「断る！」
　ハースが即答した。

「まだなにも言ってません！」
　メルルが食い下がる。
「断る！」
　ハースはにべもない。

「お姉……」
「断固拒否だ！　行こう、アリス」
　ハースは言いきると、アリスの手を引っ張る。
　アリスは背中にメルルの視線を感じる。

「話ぐらい、聞いてあげても……」
「聞く必要などない！　どれだけ俺たちの時間を割いると思ってるんだ！」
　プンスカ怒るハースに、でも、とアリスは思う。
　メルルの視線は、ハースの視線によく似ている。

　だからなんだか、放っておけない気がするのだ。