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クラスメイトの疑問
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「なあ、ハース、ちょっと聞きたいんだけど」
座っているハースがクラスメイトを見あげた。
「何だい、モブ君」
モブ君、と呼ばれたクラスメイトは、目を瞬かせて、口を開いた。
「私にはマークという名前があるんだけど」
「モブ君が俺のライバルになる気があるなら、名前も記憶するんだけど、もしライバルになるんなら、どっちがアリスのことを好きかについてどれくらい長く説明できるかってところと、どっちがアリスの行動を事細かに説明できるかってところで戦いを挑むよ」
一息で言い切ったハースに、マークはきっぱりと首を横にふった。
「ライバルにならないから、もうそれでいいよ」
だが、ハースは目を見開く。
「モブ君には、アリスのよさがわからないって言うのかい?」
その声には、マークを責める響きがあった。マークは天を仰いだ。
「えーっと、いい子だとは思うよ」
マークが考えた末の答えだった。
だが、ハースが首を横にふる。
「まさか、マーク君が俺のライバルになるなんて」
マークはあわてて首を横にふる。
「いや、アリスさんのことを好きなわけじゃない!」
ハースの表情が、なぜか沈む。マークはコクリと唾を飲んだ。
「……アリスのことを嫌いだって言うのかい? これは、モブ君ととことん議論するしかないかもしれない」
「いやいやいやいや、アリスさんのことは……そう! 友達としては好ましいと思っているよ!」
マークはこれが最適解だろうと、ホッと息をつく。
だが、ハースが半目になる。
「それは、何かきっかけがあると、恋に発展する可能性があるものだよね。マーク君」
「いやいやいやいや、それはない! ありえない! アリスさんは、僕の好みじゃない!」
「……話し合おうか、モブ君」
ハースが立ち上がる。マークは戸惑う。
「ハース、どうしたの?」
入ってきたアリスの声に、ハースの表情がパッと変わる。
「アリス!」
ニコニコしたハースに、マークが密かに息をつく。
「二人で何を話していたの?」
アリスの疑問に、ハースがうなずく。
「今日の授業について議論していたんだよ」
マークの口から、は? と声が漏れる。
「ね、マーク君?」
にこやかなハースに、マークが首をかしげる。
「議論してたのは、僕の呼び方とアリスさんを好ましく思うかどうかだったよね?」
「さ、アリス帰ろう!」
ハースがアリスの手をつかむ。
「ハース。また、人をからかったのね!」
アリスがハースを叱る。
「からかう?」
マークの呟きに、アリスがうなずく。
「ハースが迷惑をかけて、ごめんなさい」
「だけどね、アリス。マーク君が俺のアリス観察を邪魔したんだ。からかうに値すると思わないかい?」
「思わないわ」
アリスがきっぱりと告げた。ハースが悲しそうに首をふる。
「俺がどれだけアリスを好きだかわかっていないんだね」
「もういいわ。帰りましょう」
顔を赤くしたアリスが、歩き出す。
ハースはあわててアリスを追いかけていく。
残されたマークはガックリと肩を落とす。
疲れた。それだけだった。
「マーク、一体何をハースと話そうとしてたの?」
同じく教室に残されたケリーの問いかけに、マークはうーんと考え込む。
しばらくして、あ、と思い出す。
「アリスさんの観察をいつまで続けるつもりなのかなって」
「愚問よ。一生に決まっているわ」
ケリーが断言した。周りにいた他のクラスメイトも、うなずいている。
「飽きることってないのかなって」
マークの素朴な疑問だった。
「言わなくてよかったわね。延々と説教が始まるわよ」
ケリーのことばに、マークは身震いした。さっきの会話だけでも永遠に堂々巡りになりそうだったからだ。許してもらえないのかもしれない。
マークが思い返してみれば、モブ君と呼ばれていたのは、アリス観察の邪魔をしていたせいなのかもしれない。
マークはこれから、ハースに対しての言動に細心の注意を払おうと思った。
座っているハースがクラスメイトを見あげた。
「何だい、モブ君」
モブ君、と呼ばれたクラスメイトは、目を瞬かせて、口を開いた。
「私にはマークという名前があるんだけど」
「モブ君が俺のライバルになる気があるなら、名前も記憶するんだけど、もしライバルになるんなら、どっちがアリスのことを好きかについてどれくらい長く説明できるかってところと、どっちがアリスの行動を事細かに説明できるかってところで戦いを挑むよ」
一息で言い切ったハースに、マークはきっぱりと首を横にふった。
「ライバルにならないから、もうそれでいいよ」
だが、ハースは目を見開く。
「モブ君には、アリスのよさがわからないって言うのかい?」
その声には、マークを責める響きがあった。マークは天を仰いだ。
「えーっと、いい子だとは思うよ」
マークが考えた末の答えだった。
だが、ハースが首を横にふる。
「まさか、マーク君が俺のライバルになるなんて」
マークはあわてて首を横にふる。
「いや、アリスさんのことを好きなわけじゃない!」
ハースの表情が、なぜか沈む。マークはコクリと唾を飲んだ。
「……アリスのことを嫌いだって言うのかい? これは、モブ君ととことん議論するしかないかもしれない」
「いやいやいやいや、アリスさんのことは……そう! 友達としては好ましいと思っているよ!」
マークはこれが最適解だろうと、ホッと息をつく。
だが、ハースが半目になる。
「それは、何かきっかけがあると、恋に発展する可能性があるものだよね。マーク君」
「いやいやいやいや、それはない! ありえない! アリスさんは、僕の好みじゃない!」
「……話し合おうか、モブ君」
ハースが立ち上がる。マークは戸惑う。
「ハース、どうしたの?」
入ってきたアリスの声に、ハースの表情がパッと変わる。
「アリス!」
ニコニコしたハースに、マークが密かに息をつく。
「二人で何を話していたの?」
アリスの疑問に、ハースがうなずく。
「今日の授業について議論していたんだよ」
マークの口から、は? と声が漏れる。
「ね、マーク君?」
にこやかなハースに、マークが首をかしげる。
「議論してたのは、僕の呼び方とアリスさんを好ましく思うかどうかだったよね?」
「さ、アリス帰ろう!」
ハースがアリスの手をつかむ。
「ハース。また、人をからかったのね!」
アリスがハースを叱る。
「からかう?」
マークの呟きに、アリスがうなずく。
「ハースが迷惑をかけて、ごめんなさい」
「だけどね、アリス。マーク君が俺のアリス観察を邪魔したんだ。からかうに値すると思わないかい?」
「思わないわ」
アリスがきっぱりと告げた。ハースが悲しそうに首をふる。
「俺がどれだけアリスを好きだかわかっていないんだね」
「もういいわ。帰りましょう」
顔を赤くしたアリスが、歩き出す。
ハースはあわててアリスを追いかけていく。
残されたマークはガックリと肩を落とす。
疲れた。それだけだった。
「マーク、一体何をハースと話そうとしてたの?」
同じく教室に残されたケリーの問いかけに、マークはうーんと考え込む。
しばらくして、あ、と思い出す。
「アリスさんの観察をいつまで続けるつもりなのかなって」
「愚問よ。一生に決まっているわ」
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「飽きることってないのかなって」
マークの素朴な疑問だった。
「言わなくてよかったわね。延々と説教が始まるわよ」
ケリーのことばに、マークは身震いした。さっきの会話だけでも永遠に堂々巡りになりそうだったからだ。許してもらえないのかもしれない。
マークが思い返してみれば、モブ君と呼ばれていたのは、アリス観察の邪魔をしていたせいなのかもしれない。
マークはこれから、ハースに対しての言動に細心の注意を払おうと思った。
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