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「そうだとすると、俺は……沙耶を助けたいと願ったから、一緒に転生することになったんですかね?」
頭上から降ってきた声に、泣きたくなる。
「大浦君がいてくれて、本当に助けられてると思う」
幼い天使な笑顔に癒されて、私はこの世界で生きていくことができていたから。
だけど。
「……ゲームをやってるときには、ご都合主義な世界が心地よかったけど……自分の思い通りにならなくても、自分の意思で行動を起こして少しでも世界を変えられる前世の方が、ずっといいね」
ヒトの気持ちが読めるチートな能力もいらない。
相手の気持ちが分からなくて困ることもあるし、お互いにすれ違うことだってある。
それでも、互いに言葉を交わしながら、関係性を作っていく方が、ずっといい。
「そうですね」
ティエリがどちらに返事をしたのかはわからなかったけど、私も頷いた。
「こんな世界の設定なんて、絶対壊してやる」
ゲームの設定どおりに生きるなんて、まっぴらだ。
「え」
ティエリの戸惑う声に、私は顔を上げた。
私もまた、声を漏らした。
「ティエリ、体から……」
ティエリの体から、キラキラした光が放たれている。
「あ、俺も?!」
自分の体に視線を向けたティエリの言葉に、私も自分の体を見る。
私の体からも、キラキラした光が放たれていた。
それだけじゃない。体が薄くなっているようにも見える。
「どういうこと?」
気が付けば、私の体に触れていたはずの熱を感じなくなった。
「ティエリ?!」
「沙耶……これって……」
ティエリの声が消えていく。
目の前から、ティエリが消えた。
――と同時に、私の意識も、閉ざされた。
「沙耶、沙耶!」
遠くから、声がする。
……よく知った、女性の声。
「……叔母さん?」
重い瞼をこじ開けると、人の姿がぼんやりと映る。
「沙耶! よかった……。本当に困った子だわ。こんなに心配させるなんて」
震える声が、私に触れる。
手に触れる温かさに、一瞬ぎくりとなって、でも何も心の声は聞こえてこなかった。
顔を向けると、そこには叔母と、叔父がいた。
「あ、ナースさん呼ばないと。……良かった」
呟いた叔父の目は、真っ赤だった。
「叔父……さん、叔母さん……」
「沙耶、わかるのね?」
ホッと安堵した叔母に、私はコクリと頷いた。
「本当にどうしようって……姉さんたちと同じように死なせたくないって」
涙目の叔母が、私の手をギュッと握りしめる。
その反応に戸惑う。
私なんて、どうでもいいのだと思っていた。
「ずっと連絡がなかったのに、連絡来たのが事故だって言われて……」
すん、と叔母が鼻をすする。
ずっと……家を出てから、連絡もしてなかったけど……、叔母からも連絡なんてなかったから。
「私の連絡なんて、必要ないと……」
「……沙耶が距離を置いてたのには気づいたから、無理に関わって嫌がられたくなかったのよ。こんなことなら、元気な声をもっと聴いとくんだったって……」
叔母の声が涙に濡れていく。
「岩波さん!」
部屋に看護師が入ってくる。
その瞬間、私は別のことを思い出した。
「あの、一緒に事故に遭った大浦君は?!」
私の言葉に、看護師が戸惑ったように瞳を揺らした。
頭上から降ってきた声に、泣きたくなる。
「大浦君がいてくれて、本当に助けられてると思う」
幼い天使な笑顔に癒されて、私はこの世界で生きていくことができていたから。
だけど。
「……ゲームをやってるときには、ご都合主義な世界が心地よかったけど……自分の思い通りにならなくても、自分の意思で行動を起こして少しでも世界を変えられる前世の方が、ずっといいね」
ヒトの気持ちが読めるチートな能力もいらない。
相手の気持ちが分からなくて困ることもあるし、お互いにすれ違うことだってある。
それでも、互いに言葉を交わしながら、関係性を作っていく方が、ずっといい。
「そうですね」
ティエリがどちらに返事をしたのかはわからなかったけど、私も頷いた。
「こんな世界の設定なんて、絶対壊してやる」
ゲームの設定どおりに生きるなんて、まっぴらだ。
「え」
ティエリの戸惑う声に、私は顔を上げた。
私もまた、声を漏らした。
「ティエリ、体から……」
ティエリの体から、キラキラした光が放たれている。
「あ、俺も?!」
自分の体に視線を向けたティエリの言葉に、私も自分の体を見る。
私の体からも、キラキラした光が放たれていた。
それだけじゃない。体が薄くなっているようにも見える。
「どういうこと?」
気が付けば、私の体に触れていたはずの熱を感じなくなった。
「ティエリ?!」
「沙耶……これって……」
ティエリの声が消えていく。
目の前から、ティエリが消えた。
――と同時に、私の意識も、閉ざされた。
「沙耶、沙耶!」
遠くから、声がする。
……よく知った、女性の声。
「……叔母さん?」
重い瞼をこじ開けると、人の姿がぼんやりと映る。
「沙耶! よかった……。本当に困った子だわ。こんなに心配させるなんて」
震える声が、私に触れる。
手に触れる温かさに、一瞬ぎくりとなって、でも何も心の声は聞こえてこなかった。
顔を向けると、そこには叔母と、叔父がいた。
「あ、ナースさん呼ばないと。……良かった」
呟いた叔父の目は、真っ赤だった。
「叔父……さん、叔母さん……」
「沙耶、わかるのね?」
ホッと安堵した叔母に、私はコクリと頷いた。
「本当にどうしようって……姉さんたちと同じように死なせたくないって」
涙目の叔母が、私の手をギュッと握りしめる。
その反応に戸惑う。
私なんて、どうでもいいのだと思っていた。
「ずっと連絡がなかったのに、連絡来たのが事故だって言われて……」
すん、と叔母が鼻をすする。
ずっと……家を出てから、連絡もしてなかったけど……、叔母からも連絡なんてなかったから。
「私の連絡なんて、必要ないと……」
「……沙耶が距離を置いてたのには気づいたから、無理に関わって嫌がられたくなかったのよ。こんなことなら、元気な声をもっと聴いとくんだったって……」
叔母の声が涙に濡れていく。
「岩波さん!」
部屋に看護師が入ってくる。
その瞬間、私は別のことを思い出した。
「あの、一緒に事故に遭った大浦君は?!」
私の言葉に、看護師が戸惑ったように瞳を揺らした。
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