妻の秘密

kana_01

文字の大きさ
12 / 21

第12話 それぞれの思惑

しおりを挟む
DNA検査結果を夫に付きつけられた香澄。

――――

§ 河西夫妻 §

「香澄、教えてくれ。相手は誰だ。」

「……」

「分かったとしてどうするつもりですか」

「僕は知りたいんだ。僕が香澄をどれだけ愛しているか知っているだろう。
にも関わらずだ。俺と結婚しながらもお前が体を委ねる事が出来る男を知りたい。
離婚するとか言わない。美羽は、俺とお前の子供だ。だが、美羽の本当の親を知りたい。その上でお前と一緒に育てたいんだ」

 夫の言葉に嘘はないだろう。しかし。

……。

「なぜ言えない。俺よりも美羽よりもその男が大事なのか」

「……そんな事ない。そんな事ない。相手は、園で会った、中田洋二です」
「いつからだ」
「あなたと結婚する前から」
「……っ! 結婚してからも関係を続けたのか」
私は頷くだけだった。

頭に血が上り、今にも香澄を殴りつけたい気持ちを抑えた。

「どうやって知った」
「大学時代の知合いです。一時別れていましたが、仕事でまた知合いました」
「どちらから誘った」
「彼からです」

「今も会っているのか」
「いえ、美羽が出来たと分かった時、別れました」

「……っ!」

何という事だ。僕は、香澄があの男と終わった後、俺はさせられていたのか。証拠を隠すために。お笑いだな。この女のおもちゃにされたのは僕だったか。

怒りとも呆れ共言えない感情が湧いて来た。今ここにいる事は無理だ。

「香澄、少し離れよう。頭が、いっぱいでパンクしている。だが、香澄はここに居ろ。美羽の面倒を見るんだ。実家にも帰るな。お前を愛している事は事実だ」

「少しって」
「分からない。一週間か一ヶ月か」

夫は、それだけ言うとスーツケースに必要な洋服を入れて出て行ってしまった。

私は、あまりのショックに涙も出ず、呆然としていた。
美羽が泣いている。行ってあげないと。


夫とは、もう二週間も会っていない。幸いスマホには出てくれる。それだけでも安心だ。今は美羽の事だけを考えて生きよう。夫は必ず帰って来る。そう信じる。



§ 中田洋二 §

俺は、二日程して家に戻った。
「あなた。……」

憔悴していた薫が玄関で待っていた。緩く抱擁してあげると

「ごめんなさい。ごめんなさい」
大きな声で泣きながら、涙を拭こうともせずに頬を濡らしていた。

「大丈夫だ。薫。お前と美香は俺の大切な家族だ」

更に大声で泣き始めたので

「薫、美香が泣きべそ掻き始めたぞ。お前を見ているからだ。もう泣くのは止めなさい」
「ぐしゅ。はっい」

 薫と別れる理由はない。利用できる女だ。俺に取って都合の良い女だ。いずれ俺の子供を作ればいい。美香も利用できる。

 俺は、美香の件が分かってから、二週間後、香澄に連絡した。緊急連絡網を使って。これなら出るだろう。あの男も、ばらし終わった頃だ。

「もしもし、河西です」
「もしもし、久しぶり。中田です」
「えっ、……何か御用でしょうか」
「用があるから電話した。お前の夫の秘密を教えてやる。会わないか」

碌な事はないだろう。夫の秘密と言っても、大したことはないはず。今、夫はいない。動かない方がいい。

「結構です」
いきなり切った。

少し経って、またかかって来た。出ないでいるといつまでもなり続ける。
「いい加減にして下さい」
「えっ、香澄。どうした」
しまった。康人さんだ。

「ごめんなさい。さっきから、悪戯電話みたいなものが掛かって来て」
「なに。本当か」
「はい」
「一人で大丈夫か」

「……帰って来て下さい」

「まだ、だめだ。今日掛けたのは、園のイベントが近いだろう。だからだ」
「えっ、父の日の事」
「そうだ。母の日の後、行う予定になっていた」

私は、別居していても美羽の事を気にしてくれると思うと嬉しかった。
「出席してくれるんですか」
「無理だ。だから断っておいてくれ」
「……そうですか」
「それだけだ。美羽は元気か」
「あなたが居ないので寂しがっています」
「……仕方ない。もう少し待て」
「分かりました」
その後、電話が切れた。


また、電話が鳴った。康人さんかと思い電話に出ると
「俺だよ。中田だ」
「電話かけないで下さい」

切ろうとした時、
「お前の夫と、俺の妻の件だ」
「えっ、どういう意味ですか」

「ははっ、会ったら教える。もうあの男は、お前の子供美羽だったか。あの子が俺の子だと知っているんだろう」
「なぜそれを」
「会えよ。色々教えてやる」

「……分かりました。美羽の事があるので、普段の日の午前中十時から一時間位なら」
「分かった。早速、明日会おう。場所は、メールで知らせる。変わってないよな」
「変わっていません」
「じゃあ、明日な」

明日が楽しみだ。

洋二が言っていた。康人さんと洋二の奥さん、確か薫さんと言っていた。どういう関係。それになぜ、美羽を自分の子供と言ったのか。事実であることは、この前の夫の言葉から分かったけど。
 嫌な予感しかしなかった。


―――――


しかし、次回からの展開。私も読めなくなってしまいました。

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。


しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

処理中です...