27 / 34
第4章 復讐者の身体能力
第27話 復讐者の家族愛と助手の正体
しおりを挟む
助手の彼と別れ、冷夏は病院に向かった。
自分が眠りついていた病室には、夕日に照らされた弟の春也が横になっていた。
ベット脇に置かれている椅子に、腰掛ける。
春也もそうしていたのだろうと思いながら、冷夏は語りかけた。
「ねぇ、わたしがやろうとしていること、どう思う?」
目を閉じた春也は、答えはない。
きっと、自分もそうだったのだろう。
「間違ってるよね……復讐なんて」
言って、冷夏は苦笑する。
「本当はあんたが望んだ通り、わたしは病気とか嫌なこと、あんたに押しつけて幸せになる……それがいいんでしょうけど」
答えはない。
「わたしはあんたを使ってまで……幸せになりたくないの」
答えない春也の頭をそっと撫でる。
同じことをした記憶が脳裏を過ぎる。
思い出は今や遠のいてしまって、何故、撫でたのか、詳しくは思い出せない。
春也が落ち込んでいたから慰めたのか、あるいは褒めたかったのか、思い出せない。
覚えているのは嬉しそうで恥ずかしそうだった春也の顔と、その時、自分の胸のうちに感じた、暖かさ。
家事と弟の世話に追われて遊ぶことができなかった、辛さを和らげてくれた暖かみだけだった。
「ごめんね……あんたと幸せを分かち合って生きていけないなら、わたしは不幸になりたいんだ」
~~~~~~~~~
冷夏と別れた後の、孝幸は思っていた。
(俺は何やってるんだ……?)
孝幸は春也のメッセージ動画を見せるために渡していたスマホを通じて、冷夏の声を聞いていた。
スマホに仕込んでいた遠隔操作アプリで、通話状態に持ち込んでいたのだった。
(俺がやるべきは……助手の仕事なんかじゃねぇーだろ)
思いながらも、冷夏の声から病室なのだと想像した。
想像しながらも、意識に痛みのように過ぎる言葉。
【助手、キミはそもそも普通の人間じゃないんだよ】
次いで、自分の手の傷がまたたく間に治癒された記憶が過ぎって。
【貴方も身体を、人間のものじゃなくされたんでしょ? しかも騙されて……もしくは知らないうちに】
冷夏の推測……自分のそれも、同様だった。
(俺は……)
意識に浮かび上がる結論を、内心でさえ言葉にせず。
けれど、その結論を確かめるために――きっと冷夏の復讐に協力するか否かを決めたくなったからだろう――実家へと戻っていた。
ドアを開け放ち、玄関に靴を脱ぎ捨て、目指すは、自室ではなく母親が居るはずの部屋。扉の前に立つ。
母親……そう、もし自分が人間でないとするならば、母親は何者なのか。
(俺は……)
ずっと開けられなかった、人形に成り果て父と共に失踪した妹。その日を境に家族を避けた母親が居るはずの部屋の扉を開けると――
「……なんだ、これ……」
部屋の中央には、確かに、床に横たわっている女性の姿があった。
だが、孝幸の記憶にある中年の女性ではなく、若い女性。
横たわる女は……記憶の中にある妹の顔をしていた。
しかも妹の顔をした女の腹部は……。
「――、」
孝幸は見てしまったモノから目を逸らし、こみ上げてきた吐き気を、歯を食いしばって耐える。警察を呼ばなければとスマホを取り出す。
妹から貰ったスマホのケースを見、その手は止まる。
(妹……俺の妹が母親? なんだそりゃ? つーか、なんなんだよ?)
妹の顔をした、横たわる女……その腹部の惨状をもう一度見てしまい、こみ上げてくる吐き気。堪えることに必死で、そもそも口を開けそうにない。
(だいたい……警察になんて説明すンだよ……)
妹は人形師によって、父親と失踪したはず――ならば、母親は何処へ。
(なんなんだ、これ……いや、俺は一体、なんなんだ……)
何一つ、理解できない。
疑問が意識を埋め尽くす。
そのせいか分からないが、不意に足の力が抜けて膝をついた……時だった。
「説明が必要だよね」
背後から蜜蘭の声がした。
「そこに横たわっているのは……キミのではなく、私の妹だ」
いつも通り、蜜蘭は訳の分からないことを言っていた。
自分が眠りついていた病室には、夕日に照らされた弟の春也が横になっていた。
ベット脇に置かれている椅子に、腰掛ける。
春也もそうしていたのだろうと思いながら、冷夏は語りかけた。
「ねぇ、わたしがやろうとしていること、どう思う?」
目を閉じた春也は、答えはない。
きっと、自分もそうだったのだろう。
「間違ってるよね……復讐なんて」
言って、冷夏は苦笑する。
「本当はあんたが望んだ通り、わたしは病気とか嫌なこと、あんたに押しつけて幸せになる……それがいいんでしょうけど」
答えはない。
「わたしはあんたを使ってまで……幸せになりたくないの」
答えない春也の頭をそっと撫でる。
同じことをした記憶が脳裏を過ぎる。
思い出は今や遠のいてしまって、何故、撫でたのか、詳しくは思い出せない。
春也が落ち込んでいたから慰めたのか、あるいは褒めたかったのか、思い出せない。
覚えているのは嬉しそうで恥ずかしそうだった春也の顔と、その時、自分の胸のうちに感じた、暖かさ。
家事と弟の世話に追われて遊ぶことができなかった、辛さを和らげてくれた暖かみだけだった。
「ごめんね……あんたと幸せを分かち合って生きていけないなら、わたしは不幸になりたいんだ」
~~~~~~~~~
冷夏と別れた後の、孝幸は思っていた。
(俺は何やってるんだ……?)
孝幸は春也のメッセージ動画を見せるために渡していたスマホを通じて、冷夏の声を聞いていた。
スマホに仕込んでいた遠隔操作アプリで、通話状態に持ち込んでいたのだった。
(俺がやるべきは……助手の仕事なんかじゃねぇーだろ)
思いながらも、冷夏の声から病室なのだと想像した。
想像しながらも、意識に痛みのように過ぎる言葉。
【助手、キミはそもそも普通の人間じゃないんだよ】
次いで、自分の手の傷がまたたく間に治癒された記憶が過ぎって。
【貴方も身体を、人間のものじゃなくされたんでしょ? しかも騙されて……もしくは知らないうちに】
冷夏の推測……自分のそれも、同様だった。
(俺は……)
意識に浮かび上がる結論を、内心でさえ言葉にせず。
けれど、その結論を確かめるために――きっと冷夏の復讐に協力するか否かを決めたくなったからだろう――実家へと戻っていた。
ドアを開け放ち、玄関に靴を脱ぎ捨て、目指すは、自室ではなく母親が居るはずの部屋。扉の前に立つ。
母親……そう、もし自分が人間でないとするならば、母親は何者なのか。
(俺は……)
ずっと開けられなかった、人形に成り果て父と共に失踪した妹。その日を境に家族を避けた母親が居るはずの部屋の扉を開けると――
「……なんだ、これ……」
部屋の中央には、確かに、床に横たわっている女性の姿があった。
だが、孝幸の記憶にある中年の女性ではなく、若い女性。
横たわる女は……記憶の中にある妹の顔をしていた。
しかも妹の顔をした女の腹部は……。
「――、」
孝幸は見てしまったモノから目を逸らし、こみ上げてきた吐き気を、歯を食いしばって耐える。警察を呼ばなければとスマホを取り出す。
妹から貰ったスマホのケースを見、その手は止まる。
(妹……俺の妹が母親? なんだそりゃ? つーか、なんなんだよ?)
妹の顔をした、横たわる女……その腹部の惨状をもう一度見てしまい、こみ上げてくる吐き気。堪えることに必死で、そもそも口を開けそうにない。
(だいたい……警察になんて説明すンだよ……)
妹は人形師によって、父親と失踪したはず――ならば、母親は何処へ。
(なんなんだ、これ……いや、俺は一体、なんなんだ……)
何一つ、理解できない。
疑問が意識を埋め尽くす。
そのせいか分からないが、不意に足の力が抜けて膝をついた……時だった。
「説明が必要だよね」
背後から蜜蘭の声がした。
「そこに横たわっているのは……キミのではなく、私の妹だ」
いつも通り、蜜蘭は訳の分からないことを言っていた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる