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第4章 復讐者の身体能力
第27話 復讐者の家族愛と助手の正体
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助手の彼と別れ、冷夏は病院に向かった。
自分が眠りついていた病室には、夕日に照らされた弟の春也が横になっていた。
ベット脇に置かれている椅子に、腰掛ける。
春也もそうしていたのだろうと思いながら、冷夏は語りかけた。
「ねぇ、わたしがやろうとしていること、どう思う?」
目を閉じた春也は、答えはない。
きっと、自分もそうだったのだろう。
「間違ってるよね……復讐なんて」
言って、冷夏は苦笑する。
「本当はあんたが望んだ通り、わたしは病気とか嫌なこと、あんたに押しつけて幸せになる……それがいいんでしょうけど」
答えはない。
「わたしはあんたを使ってまで……幸せになりたくないの」
答えない春也の頭をそっと撫でる。
同じことをした記憶が脳裏を過ぎる。
思い出は今や遠のいてしまって、何故、撫でたのか、詳しくは思い出せない。
春也が落ち込んでいたから慰めたのか、あるいは褒めたかったのか、思い出せない。
覚えているのは嬉しそうで恥ずかしそうだった春也の顔と、その時、自分の胸のうちに感じた、暖かさ。
家事と弟の世話に追われて遊ぶことができなかった、辛さを和らげてくれた暖かみだけだった。
「ごめんね……あんたと幸せを分かち合って生きていけないなら、わたしは不幸になりたいんだ」
~~~~~~~~~
冷夏と別れた後の、孝幸は思っていた。
(俺は何やってるんだ……?)
孝幸は春也のメッセージ動画を見せるために渡していたスマホを通じて、冷夏の声を聞いていた。
スマホに仕込んでいた遠隔操作アプリで、通話状態に持ち込んでいたのだった。
(俺がやるべきは……助手の仕事なんかじゃねぇーだろ)
思いながらも、冷夏の声から病室なのだと想像した。
想像しながらも、意識に痛みのように過ぎる言葉。
【助手、キミはそもそも普通の人間じゃないんだよ】
次いで、自分の手の傷がまたたく間に治癒された記憶が過ぎって。
【貴方も身体を、人間のものじゃなくされたんでしょ? しかも騙されて……もしくは知らないうちに】
冷夏の推測……自分のそれも、同様だった。
(俺は……)
意識に浮かび上がる結論を、内心でさえ言葉にせず。
けれど、その結論を確かめるために――きっと冷夏の復讐に協力するか否かを決めたくなったからだろう――実家へと戻っていた。
ドアを開け放ち、玄関に靴を脱ぎ捨て、目指すは、自室ではなく母親が居るはずの部屋。扉の前に立つ。
母親……そう、もし自分が人間でないとするならば、母親は何者なのか。
(俺は……)
ずっと開けられなかった、人形に成り果て父と共に失踪した妹。その日を境に家族を避けた母親が居るはずの部屋の扉を開けると――
「……なんだ、これ……」
部屋の中央には、確かに、床に横たわっている女性の姿があった。
だが、孝幸の記憶にある中年の女性ではなく、若い女性。
横たわる女は……記憶の中にある妹の顔をしていた。
しかも妹の顔をした女の腹部は……。
「――、」
孝幸は見てしまったモノから目を逸らし、こみ上げてきた吐き気を、歯を食いしばって耐える。警察を呼ばなければとスマホを取り出す。
妹から貰ったスマホのケースを見、その手は止まる。
(妹……俺の妹が母親? なんだそりゃ? つーか、なんなんだよ?)
妹の顔をした、横たわる女……その腹部の惨状をもう一度見てしまい、こみ上げてくる吐き気。堪えることに必死で、そもそも口を開けそうにない。
(だいたい……警察になんて説明すンだよ……)
妹は人形師によって、父親と失踪したはず――ならば、母親は何処へ。
(なんなんだ、これ……いや、俺は一体、なんなんだ……)
何一つ、理解できない。
疑問が意識を埋め尽くす。
そのせいか分からないが、不意に足の力が抜けて膝をついた……時だった。
「説明が必要だよね」
背後から蜜蘭の声がした。
「そこに横たわっているのは……キミのではなく、私の妹だ」
いつも通り、蜜蘭は訳の分からないことを言っていた。
自分が眠りついていた病室には、夕日に照らされた弟の春也が横になっていた。
ベット脇に置かれている椅子に、腰掛ける。
春也もそうしていたのだろうと思いながら、冷夏は語りかけた。
「ねぇ、わたしがやろうとしていること、どう思う?」
目を閉じた春也は、答えはない。
きっと、自分もそうだったのだろう。
「間違ってるよね……復讐なんて」
言って、冷夏は苦笑する。
「本当はあんたが望んだ通り、わたしは病気とか嫌なこと、あんたに押しつけて幸せになる……それがいいんでしょうけど」
答えはない。
「わたしはあんたを使ってまで……幸せになりたくないの」
答えない春也の頭をそっと撫でる。
同じことをした記憶が脳裏を過ぎる。
思い出は今や遠のいてしまって、何故、撫でたのか、詳しくは思い出せない。
春也が落ち込んでいたから慰めたのか、あるいは褒めたかったのか、思い出せない。
覚えているのは嬉しそうで恥ずかしそうだった春也の顔と、その時、自分の胸のうちに感じた、暖かさ。
家事と弟の世話に追われて遊ぶことができなかった、辛さを和らげてくれた暖かみだけだった。
「ごめんね……あんたと幸せを分かち合って生きていけないなら、わたしは不幸になりたいんだ」
~~~~~~~~~
冷夏と別れた後の、孝幸は思っていた。
(俺は何やってるんだ……?)
孝幸は春也のメッセージ動画を見せるために渡していたスマホを通じて、冷夏の声を聞いていた。
スマホに仕込んでいた遠隔操作アプリで、通話状態に持ち込んでいたのだった。
(俺がやるべきは……助手の仕事なんかじゃねぇーだろ)
思いながらも、冷夏の声から病室なのだと想像した。
想像しながらも、意識に痛みのように過ぎる言葉。
【助手、キミはそもそも普通の人間じゃないんだよ】
次いで、自分の手の傷がまたたく間に治癒された記憶が過ぎって。
【貴方も身体を、人間のものじゃなくされたんでしょ? しかも騙されて……もしくは知らないうちに】
冷夏の推測……自分のそれも、同様だった。
(俺は……)
意識に浮かび上がる結論を、内心でさえ言葉にせず。
けれど、その結論を確かめるために――きっと冷夏の復讐に協力するか否かを決めたくなったからだろう――実家へと戻っていた。
ドアを開け放ち、玄関に靴を脱ぎ捨て、目指すは、自室ではなく母親が居るはずの部屋。扉の前に立つ。
母親……そう、もし自分が人間でないとするならば、母親は何者なのか。
(俺は……)
ずっと開けられなかった、人形に成り果て父と共に失踪した妹。その日を境に家族を避けた母親が居るはずの部屋の扉を開けると――
「……なんだ、これ……」
部屋の中央には、確かに、床に横たわっている女性の姿があった。
だが、孝幸の記憶にある中年の女性ではなく、若い女性。
横たわる女は……記憶の中にある妹の顔をしていた。
しかも妹の顔をした女の腹部は……。
「――、」
孝幸は見てしまったモノから目を逸らし、こみ上げてきた吐き気を、歯を食いしばって耐える。警察を呼ばなければとスマホを取り出す。
妹から貰ったスマホのケースを見、その手は止まる。
(妹……俺の妹が母親? なんだそりゃ? つーか、なんなんだよ?)
妹の顔をした、横たわる女……その腹部の惨状をもう一度見てしまい、こみ上げてくる吐き気。堪えることに必死で、そもそも口を開けそうにない。
(だいたい……警察になんて説明すンだよ……)
妹は人形師によって、父親と失踪したはず――ならば、母親は何処へ。
(なんなんだ、これ……いや、俺は一体、なんなんだ……)
何一つ、理解できない。
疑問が意識を埋め尽くす。
そのせいか分からないが、不意に足の力が抜けて膝をついた……時だった。
「説明が必要だよね」
背後から蜜蘭の声がした。
「そこに横たわっているのは……キミのではなく、私の妹だ」
いつも通り、蜜蘭は訳の分からないことを言っていた。
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