JACK【約5人向け声劇台本】【男3女2】

未旅kay

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逃げまどう群衆の中で、不動ふどうの少年がいた。

ワイヤレスイヤホンを着けた彼は、イヤホンの表面をなぞった。

Al:ハイバッテリー。コネクティング。エミット。ゼットレーイ。

ダン:「だるいな」

群衆の隙間を駆ける。

青色に輝く合成チタンで打たれた、クラウソードを抜刀する。

(少し走る)

ダン:「はッ!」

(二階ほどの図体を持つムゲンたいを斬り倒す)

ムゲン体、真っ二つ!

ダン:「歯応はごたえのないヤツだな」

絹田きぬたダンはため息を吐く)

ダーウィン:「僕の分も残しておいてくれたら良かったのに」

飄飄ひょうひょうとした感じで、涼川すずかわダーウィン登場。

ダン:「図体がデカいだけだ」

(二人に無線が繋がる)

マイ:『気を抜かないでよ、ムゲン体の特徴は一体でも見つけたら周りにも注意!何だからね』

ダーウィン:「はいよー。それってフラグかにゃ?」

ダン:「周囲のドローンには……何も映っていないだろ」

(無線から冷静な声が聞こえる)

コロロ:『上です』

ダンとダーウィンを無数の影が包む。

二人は空を仰ぎ見る。

ダン:「は?」

三十羽以上のカラスが、二人に向かって滑空してくる。

ダーウィン:「わぁお!この数ヤバいんじゃない?」

ダン:「一羽でもスカると、一撃喰らうぞ」


(カラスのムゲン体をクラウソードで斬りまくる)

ダン:「はッ!ああ!」

ダーウィン:「なーにカラスみたいな声出してんだ……よッ!」

ダン:「余裕……じゃんか!」

ダーウィン:「今、首二つあったんですけどぉ」

ダン:「口より手を動かせ!」

残り約十羽……?

ダン:「おい!」

ダーウィン:「デカいのが来たよ!」

ダン:「おいおいおいおいおいおい!」

ダーウィン:「さっきのより、すげーデカいじゃん!」

四枚羽根よんまいばねの漆黒の怪鳥が二人に迫る。

ダーウィン:「ダン!構えろ!」

ダン:「黙れ。集中してる!」

刹那。

(ズドーーーン)

二人の眼前がんぜんまばゆい光が通り過ぎる。

怪鳥は眩い光線に包まれ、消滅した。

ダン:「……!」

ダーウィン:「……お!?」

ダーウィン:「僕らがいるのに、容赦なさすぎ」

ダン:「…殺す気かよ」

自身の二倍ある刀身とうしんのデカい大剣を引きずる小柄な少女━━コロロが歩いてくる。

コロロ:「ヨイショ。ヨイショ……っと」

横をマイが申し訳なさそうに歩いてくる。

マイ:「二人とも無事で良かったね」

AI:ローバッテリー。クラウソードのエネルギーが減っています。

コロロ:「私の……バッテリー切れみたい」

マイ:「コロロ、高出力のクラウビーム撃ったからね」

コロロ:「…疲れたぁ」

ダーウィン:「残りのカラスもいないみたいだし、セーフハウスに帰還だね」

ダン:「シャワー、浴びてえ」

JACK日本支部隊員セーフハウス。帰還。午後8時。

(ラウンドリールーム、自動販売機前ベンチにて)

(ダン、ダーウィン飲み物を飲む)

ダーウィン:「ぷはーー、酷い目に遭ったぁ」   

ダン:「クラウソードの新作モデルだっけか?」

ダーウィン:「そうそう、ただバッテリー消費が激しいのが難点だってさ」

ダン:「天才少女、染毬そまり博士はかせの頭脳にかかれば一月ひとつきで解決だろ」

コロロ:「……クラウビッグソード」

(二人、少しだけびっくり)

ダン:「うお!」

ダーウィン:「コロロちゃん、相変わらず足音を立てずに近づいてくるね」

(コロロ、二人を一瞥いちべつすることもなく自動販売機でジュースを買おうとするが、10円足りないことに気づく)

コロロ:「……」

マイ:「はい」

(マイが10円を渡す)

コロロ:「マイちゃん、ありがとう」

マイ:「ダン、昼間のカラスの群れ。二人だけに向かって飛んできたんだよね?」

ダン:「ああ、俺達に一直線って感じだった」

ダーウィン:「カラスの群れ。同一個体どういつこたいの可能性ってことかな」

マイ:「単なる数の暴力なら……まだしも」

(間)

コロロ:「それらが一つの命令に、忠実に動いているのだとしたら」

ダン:「厄介だよな。一羽一羽が俺たちの、死角やらすきを狙ってきていた」

(間)

(ダンが決まり悪そうに、マイに頼む)

ダン:「マイ様、女神様…………お願いがありまして……」

マイ:「あーー、はいはい。本部に戦闘データと今の話を報告書として送って欲しいんでしょ」

ダン:「……すまない」

(マイとコロロがジュースを持って、廊下を歩きながら)

(コロロ、ジュースを一口飲んでから)

コロロ:「ぷへぇ。マイちゃん、ダンに甘いね」

マイ:「適材適所ですぅ」
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