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24 カマキリ様のラッキータイム サファ・ターン ★
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◆カマキリ様のラッキータイム サファ・ターン
第六階層。今回も、いいところをテオに見せられなかった。
いや、トータルすれば、六十パーセントは、いい働きをしていると思うんだけどな?
今回は、テオが苦手な虫だったから。すぐに退治してやらなければならなかったのに。
ユーリにいいところを持っていかれてしまった。
だってさぁ。あのカマキリキリマイ。俺の目には、全裸のテオが、上目遣いに目を潤ませて『俺を殺すとか、嘘だよね? サファ』って、懇願してたんだもん。
アレは、斬れないっていうか。
でも、一瞬の躊躇で、俺はカマキリの鎌に首を落とされていたのかもしれないんだから。
まだまだ、精神鍛錬が未熟なんだな?
しかし、このダンジョンは、本当におかしなダンジョンなのだ。
俺は勇者に生まれつき。勇者の加護というものが生まれつきあるのだ。
それは、魔王の魔力も跳ね返し。物理攻撃は半減し。毒への耐性もあり。精神攻撃は無効化される。という、無敵な能力なのだが。
このダンジョンでは、その加護が、五十パーセント減という体感である。
初っ端の、バラケイアの毒も、たぶん、俺は死なないものだったろうが。
しかし、毒の効果が表れるというのが、そもそも想定外だったし。
想定外と言ったら、このダンジョンで起こる出来事は、すべて想定外なのだ。
今までの冒険で培ってきた経験が、全く役に立たない。
紐で結ばれるだけのボス部屋って、なんだよっ?? 意味不明だ。
でも、おそらくだけど。
このダンジョンは、人間の性的エネルギーを搾取する特性のダンジョンなのではないか?
ダンジョンというものは、それそのものが、ある意味生命体のようなものである。
自分の好みに形を変えたり、魔獣を配置したりして。ご褒美を差し出しながら、冒険者を奥深くへ誘導するのだ。そして攻略されたら、構造を変えるのも。己が生き残るための処世術のように思える。
性的エネルギーを搾取するのが目的なら、出てくる魔獣の攻撃が、そこはかとなくエロイのも納得だし。
退避部屋に、必ず風呂やシャワーがあるのも。
ドロップ品に、夜の営みの手助けをするようなものが多いのも。
ダンジョン内で仲間同士が睦み合い、快楽や性の喜びを発散するよう仕組んでいるのだと、思える。
ダンジョンの作為に乗るのは、業腹だが。
テオとのエッチは、土下座してでもお願いしたいことだから。
思う壺なのは、致し方ないところだ。うーむ。
「先生は、カマキリキリマイは誰に見えていたのですぅ?」
第七階層のボス部屋手前で、退避部屋に入った俺たちは。テオの作ってくれた夕食を食べながら、焚火を囲んで団らんしていた。
それで、イオナが。クリスにズバリ聞いてきたのだ。
なんとなくだが。
毒に侵されたユーリを、クリスが舐めて治療し。
紐に結ばれたイオナを、クリスがほどいて救出し。
酩酊したユーリを、クリスがむにゃむにゃして…。
つまり。クリスは女性陣ふたりと深い仲に?
そしてイオナとユーリは。クリスを憎からず想っていて。クリスがどちらを選ぶのか、気になっているぅ?
今は、そんな状況のような気がする。
ま、鈍感なテオは。この空気には全く気付いていないようだが?
「…テオ」
は?
クリスの答えに、俺は目をみはった。
いやいや、わかっているんだよ? 彼が、どちらかの名前を言えば、修羅場になるから。無難なテオの名を口に出したということはね?
でも。気持ちは。俺のテオに手を出すなモードになるではないかっ。
それに、イオナもユーリも、納得できなーいという、憮然とした顔をしている。
まぁ、そうでしょうね?
「クリス先生は、俺のことが好きなのかぁ? 俺も先生、好きぃ」
「「「はぁ?」」」
テオの返しに。今度は、俺もイオナもユーリも、驚愕を口に出してしまった。
もう、空気を読まないピュアっ子がぁっ。
そんなテオに、クリスも、のほほんとたずねる。
「でも、テオは。カマキリを鞭でビシバシしていたじゃないか。俺だから、ビシバシできたのか?」
「アレは、カマキリは先生の顔じゃなかったからぁ。先生をビシバシしたりしないよ?」
唇をとがらせる、いつもの表情で答えたテオに。俺はホッとした。
カマキリキリマイは、敵の好きな相手に己を見せかけることで、生き永らえようとする誘惑の幻術を使ったのだ。
今、テオが好きな相手が、クリスではなくて。良かったけど。
仮に、俺だったとしたら。
俺相手に容赦なく鞭をふるったテオに、思うところはあるかな?
「それにさぁ、手足と腹は、カマキリのままだったんだもん。キモっ。マジ、虫は勘弁っ」
虫が苦手なテオは、自分の手で自分を抱きしめて、ブルリと震える。
そんなに、虫、嫌いなんだ。
まぁ、ダンジョンの外でも、毛虫がついたと思ったときは、かなりの挙動不審ぶりだったからな。
「そうよっ、私も、巨大カマキリはそう見えていたわ? だから攻撃できたのよ?」
ユーリは言い訳のように、クリスにそう言い募る。
彼女は、たぶん。カマキリの顔がクリスだったのだろうな? だから誤解されたくなくて、必死だ。
それが、クリスに伝わっているのかは、わからないが。
クリスはいまだ、おっさんの己に、恋愛沙汰は起きないと思っている。
エロダンジョンにいるから、たまたま、そういうエロい事象が起きているだけで。
ピッチピチの女盛りであるユーリやイオナが、自分に好意を寄せているなんて、欠片も思っていないのだろう。
だから、普段は。エロなど知りませんという、無害な、のほほんクマさんの顔をしている。
そんなクマさんに、テオも懐いているのだ。
俺は、ギラギラのエロエロだからな。
どんなことにも、逃げ場は必要だから。そこは、許してやる。
あくまで、恋愛対象外のうちは、だぞ?
★★★★★
ダンジョンの中では、退避場所でも、必ずひとり入り口の番をする。
退避場所に魔獣が入ってきたら、全滅するからな。
今はユーリが見張りに出ていて。
俺はテオのほど近くに。イオナとクリスは少し離れたところで、各々寝入っている。
そのとき。俺の腹の辺りがもぞりとして。毛布を掛けている俺の体の上に、テオが手を置いていた。
まぁ、人の気配とか。剣豪なら普通に、寝ていても気づくものだ。
「どうした? テオ。眠れないのか?」
俺が抱えて寝ることはしょっちゅうだが。テオの方から触れてくるのは、珍しかった。
テオは俺の体の上にしなだれかかるように、身を預けてきて。俺の顔を覗き込む。
「なぁ、サファ? 俺、お家に帰りたぁい」
そうして、人差し指で。俺の唇をぷにぷにとつつく。
ん? なんか。テオが変。
「サファがしたいこと、なんでもしていいから。ふたりで、このダンジョンから出よう? そうしたら、サファとずっとふたりきりで過ごしてもいいしぃ。エッチも、毎晩して、いいよ?」
そうして、唇に唇を押しつけてきた。
たどたどしい舌の動かし方は、まぁ、テオなんだけど。
んーーーふふふ。これはすっごい、心の揺れるお誘いだから。
テオからしてくれるキスも相まって、グラングランしちゃうけど。
でも。テオは、こんなこと言わないよね?
毎晩エッチも、そうだが。
特に。お家に帰りたぁいは。絶対に言わない。
テオは、恥ずかしがり屋の怒りんぼ。そして、負けず嫌いで、男らしさを常に追求していたのだ。
子供のときからな。
だから、ふたりで森に入って、怖い目にあっても。
早く帰ろうとは、自分からは絶対に言い出さなくて。
俺が帰ろうと言い出すまでは、涙目でついてくるのだ。
それは、たぶん。自分からリタイアするのが嫌だったとか。
俺が行きたいと言った森に、ついていくことにしたのに。付き添いの自分が折れるのは、男らしくないとか。
とにかく、俺に負けたくないとか。
いろいろあるとは思うけど。
男に二言なし、というのも。よくテオが言っていた格言だ。
だから、わかるんだ。この言葉を言っているのは。テオじゃないって。
「サファ? ふたりきりになれるところに行って、エッチ、しよ? サファのコレ。欲しいよ」
だがしかし。
テオの顔で、小悪魔チックな笑みを浮かべて。
俺の…すでに膨らみ始めた欲望を。物欲しそうに手でナデナデされたら。
んーーーふふふ。ちょっとだけ、遊びたくなっちゃうっていうかぁ? ちょっとだけ。
「いいよ。ふたりきりになったら、テオを食べさせて?」
唇をつけたままの至近距離で、囁くと。テオも、こくりとうなずく。
うん。清楚で初心な感じは、残っているけど。
俺はテオを抱えて立ち上がる。体の前で、テオをぶら下げて。コアラの親子みたいに手で彼のお尻を支えて、歩いた。
第六階層まで来ると、冒険者のパーティーごとに休憩できるような、仕切られた区画がある。
まぁ、これも。隣人を気にせず励みなさい、と言われているような気になるね?
「わぁあ、サファの、もうおっきぃ。固くて、あっちぃね?」
歩く振動で、俺のモノが、テオの股間に当たる。まぁ、当たるよね?
このままでも、ぞくぞくするほど気持ちいいが。
マジックボックスからクッション性のある敷布を取り出して。その上にテオを下ろした。
俺が胡坐をかくと、テオはすぐにも膝の上に乗ってきて。
また、チュウし始めた。
なんか、すっごく愛しそうに。美味しそうに。俺の唇を舐めたり噛んだりしてくれて。
デレなテオを、もっと長く楽しみたかったけど。
俺はテオの首の後ろにいる、一センチくらいの小さなカマキリを掴んで。手で潰した。
すると、俺の口に吸いついていたテオが、ハッと息をのんで。目を覚ました。
「え? 俺。なんで、こんなことしちゃってるの?」
自分から俺のキスをねだったことは、意識があったみたいで。テオは顔を真っ赤に染めた。
恥ずかしくなっちゃった? かーわーいーいー。
「あぁ、カマキリキリマイの子供…おそらく後継がいて、それがテオを通して誘惑幻術を俺にかけようとしたみたいだな?」
つまり。カマキリキリマイの親玉は、やっつけたから。兵隊である子カマキリも消滅したはずなのだが。
それとは別に、カマキリキリマイの能力を踏襲する子供の女王カマキリがいたみたいだね?
だけど。今度こそ、俺がカマキリを潰してやったからな? 退治したぞ? テオっ!
「ええええぇっ、か、かま、カマキリが、俺にくっついてんの? どこ? サファ、取って? 早く、取って?」
でも、テオは。まだカマキリがくっついていると誤解して。俺に虫を取ってと言ってくる。
これはっ、カマキリ様のラッキータイムじゃね?
「落ち着いて、テオ。動くと、カマキリが逃げて。ユーリやイオナに取りついちゃうかもしれない」
ひえっ、となって。テオは、ビキッと身を固めた。背筋が伸びて、カチコチである。
自分がされて嫌なことを、テオは人にしたくないから。ここでカマキリと決着をつける気なのだろう。
いや、すでにプチっと、いっちゃってるけどね。
「サファ、どこにいるか、わかる? カマキリ、取れる?」
「あぁ、言ったろ? 俺が虫を退治してやるって。俺に任せておけ?」
そう言ったら。テオは、ぱぁっと、安堵の笑みを浮かべた。
うぅ、ちょっと罪悪感。
だが。ラッキータイムは逃せない。
「今、どこにいるの? 服、脱いだ方がいいか?」
「いや、シャツの中に入ったが。服を脱ぐと、逃げられそう。暗いところで逃げられたら、見失ってしまう」
「服の中? 感覚がないけど」
「ほんの、一センチくらいの、小さなカマキリだった。シャツの裾を出すな?」
俺の言うことを、素直に聞いて。テオは俺に任せてくれる。
「じゃあ、探すな?」
今は、対面で、テオが俺の腿に座っているところ。その状態で、裾から手を入れて。テオの背中を撫でていった。
すべすべの背中。なめらかで、指に吸いつくようで。いつまでも触っていたくなる。
肩甲骨のラインや、背筋や脇腹を、繊細なタッチで撫でていると。
テオが、鼻で吐息をついた。
「ごめん。ちょっと、感じた? 虫を探しているだけなんだけどぉ…」
「ううん、くすぐったかっただけ。大丈夫。続けて?」
続けて、いいんだぁ? じゃあね。
「あぁ、前の方に逃げたみたいだ」
そう言って、俺は腹の方に手を移動させた。
テオの腹は、薄いが。腹筋はそれなりにあって。おうとつを確かめながら、テオの肌をなぞっていった。
「さ、サファ、まだ? 早く。早く、取って?」
なんか、囁く感じで。まだ? とか。早く、とか言われると。
俺のモノをねだっているようにも聞こえて。エロいな?
ついつい、俺もたぎって。ギンと勃ち上がる。
「あ、みつけた」
そう言って、俺はテオの両の乳首を指先で摘まんだ。
「んぁ…そ、それは。違う」
「ん? 違う? これは虫じゃないのか?」
親指と人差し指で、こよりを作るように、摘まんでこすると。
テオは。ふあぁ、と口元をゆるめて。
でも、乳首だと言うのが恥ずかしいみたいで。下唇を噛んだ。
「絶対、そうだよ。二匹、いるんだな? ほら、コリコリって、感触があるだろ?」
手はテオの脇の下を抱え、親指だけを乳首にあてて、じっくりと揉み込む。
花芽を押しつぶすように、クリクリと親指の腹でこすり。乳輪も丸く撫でる。
乳頭をしつこく親指でイジメていたら。
「は、あ。あ、ん」
テオも、気持ちよさそうに身を震わせ、背中をそらす。
でもそれは、刺激を欲しがり胸を突き出すみたいに見え。エロティックだった。
「ん、ん、ダメ。サファ、それ……だ、から」
「なぁに? テオ。コレ、なんなの?」
乳頭をくにゅくにゅと刺激して、テオにわざと、これがなにか言わせる。
恥ずかしがるテオが、すっごく可愛いし。
羞恥を煽ると、テオはすっごく敏感になるから。
「ち…くび。だ、から。早く、ねぇ、早くぅ」
「早く、なに? 乳首、気持ちいいの? もっとコレ、してほしいってこと?」
耳元に、甘く囁いたら。
テオは、顔を真っ赤にして…怒った。
「早くっ、虫を取れって言ってんだよぉ、この、クソエロ駄犬がぁッ!」
第六階層。今回も、いいところをテオに見せられなかった。
いや、トータルすれば、六十パーセントは、いい働きをしていると思うんだけどな?
今回は、テオが苦手な虫だったから。すぐに退治してやらなければならなかったのに。
ユーリにいいところを持っていかれてしまった。
だってさぁ。あのカマキリキリマイ。俺の目には、全裸のテオが、上目遣いに目を潤ませて『俺を殺すとか、嘘だよね? サファ』って、懇願してたんだもん。
アレは、斬れないっていうか。
でも、一瞬の躊躇で、俺はカマキリの鎌に首を落とされていたのかもしれないんだから。
まだまだ、精神鍛錬が未熟なんだな?
しかし、このダンジョンは、本当におかしなダンジョンなのだ。
俺は勇者に生まれつき。勇者の加護というものが生まれつきあるのだ。
それは、魔王の魔力も跳ね返し。物理攻撃は半減し。毒への耐性もあり。精神攻撃は無効化される。という、無敵な能力なのだが。
このダンジョンでは、その加護が、五十パーセント減という体感である。
初っ端の、バラケイアの毒も、たぶん、俺は死なないものだったろうが。
しかし、毒の効果が表れるというのが、そもそも想定外だったし。
想定外と言ったら、このダンジョンで起こる出来事は、すべて想定外なのだ。
今までの冒険で培ってきた経験が、全く役に立たない。
紐で結ばれるだけのボス部屋って、なんだよっ?? 意味不明だ。
でも、おそらくだけど。
このダンジョンは、人間の性的エネルギーを搾取する特性のダンジョンなのではないか?
ダンジョンというものは、それそのものが、ある意味生命体のようなものである。
自分の好みに形を変えたり、魔獣を配置したりして。ご褒美を差し出しながら、冒険者を奥深くへ誘導するのだ。そして攻略されたら、構造を変えるのも。己が生き残るための処世術のように思える。
性的エネルギーを搾取するのが目的なら、出てくる魔獣の攻撃が、そこはかとなくエロイのも納得だし。
退避部屋に、必ず風呂やシャワーがあるのも。
ドロップ品に、夜の営みの手助けをするようなものが多いのも。
ダンジョン内で仲間同士が睦み合い、快楽や性の喜びを発散するよう仕組んでいるのだと、思える。
ダンジョンの作為に乗るのは、業腹だが。
テオとのエッチは、土下座してでもお願いしたいことだから。
思う壺なのは、致し方ないところだ。うーむ。
「先生は、カマキリキリマイは誰に見えていたのですぅ?」
第七階層のボス部屋手前で、退避部屋に入った俺たちは。テオの作ってくれた夕食を食べながら、焚火を囲んで団らんしていた。
それで、イオナが。クリスにズバリ聞いてきたのだ。
なんとなくだが。
毒に侵されたユーリを、クリスが舐めて治療し。
紐に結ばれたイオナを、クリスがほどいて救出し。
酩酊したユーリを、クリスがむにゃむにゃして…。
つまり。クリスは女性陣ふたりと深い仲に?
そしてイオナとユーリは。クリスを憎からず想っていて。クリスがどちらを選ぶのか、気になっているぅ?
今は、そんな状況のような気がする。
ま、鈍感なテオは。この空気には全く気付いていないようだが?
「…テオ」
は?
クリスの答えに、俺は目をみはった。
いやいや、わかっているんだよ? 彼が、どちらかの名前を言えば、修羅場になるから。無難なテオの名を口に出したということはね?
でも。気持ちは。俺のテオに手を出すなモードになるではないかっ。
それに、イオナもユーリも、納得できなーいという、憮然とした顔をしている。
まぁ、そうでしょうね?
「クリス先生は、俺のことが好きなのかぁ? 俺も先生、好きぃ」
「「「はぁ?」」」
テオの返しに。今度は、俺もイオナもユーリも、驚愕を口に出してしまった。
もう、空気を読まないピュアっ子がぁっ。
そんなテオに、クリスも、のほほんとたずねる。
「でも、テオは。カマキリを鞭でビシバシしていたじゃないか。俺だから、ビシバシできたのか?」
「アレは、カマキリは先生の顔じゃなかったからぁ。先生をビシバシしたりしないよ?」
唇をとがらせる、いつもの表情で答えたテオに。俺はホッとした。
カマキリキリマイは、敵の好きな相手に己を見せかけることで、生き永らえようとする誘惑の幻術を使ったのだ。
今、テオが好きな相手が、クリスではなくて。良かったけど。
仮に、俺だったとしたら。
俺相手に容赦なく鞭をふるったテオに、思うところはあるかな?
「それにさぁ、手足と腹は、カマキリのままだったんだもん。キモっ。マジ、虫は勘弁っ」
虫が苦手なテオは、自分の手で自分を抱きしめて、ブルリと震える。
そんなに、虫、嫌いなんだ。
まぁ、ダンジョンの外でも、毛虫がついたと思ったときは、かなりの挙動不審ぶりだったからな。
「そうよっ、私も、巨大カマキリはそう見えていたわ? だから攻撃できたのよ?」
ユーリは言い訳のように、クリスにそう言い募る。
彼女は、たぶん。カマキリの顔がクリスだったのだろうな? だから誤解されたくなくて、必死だ。
それが、クリスに伝わっているのかは、わからないが。
クリスはいまだ、おっさんの己に、恋愛沙汰は起きないと思っている。
エロダンジョンにいるから、たまたま、そういうエロい事象が起きているだけで。
ピッチピチの女盛りであるユーリやイオナが、自分に好意を寄せているなんて、欠片も思っていないのだろう。
だから、普段は。エロなど知りませんという、無害な、のほほんクマさんの顔をしている。
そんなクマさんに、テオも懐いているのだ。
俺は、ギラギラのエロエロだからな。
どんなことにも、逃げ場は必要だから。そこは、許してやる。
あくまで、恋愛対象外のうちは、だぞ?
★★★★★
ダンジョンの中では、退避場所でも、必ずひとり入り口の番をする。
退避場所に魔獣が入ってきたら、全滅するからな。
今はユーリが見張りに出ていて。
俺はテオのほど近くに。イオナとクリスは少し離れたところで、各々寝入っている。
そのとき。俺の腹の辺りがもぞりとして。毛布を掛けている俺の体の上に、テオが手を置いていた。
まぁ、人の気配とか。剣豪なら普通に、寝ていても気づくものだ。
「どうした? テオ。眠れないのか?」
俺が抱えて寝ることはしょっちゅうだが。テオの方から触れてくるのは、珍しかった。
テオは俺の体の上にしなだれかかるように、身を預けてきて。俺の顔を覗き込む。
「なぁ、サファ? 俺、お家に帰りたぁい」
そうして、人差し指で。俺の唇をぷにぷにとつつく。
ん? なんか。テオが変。
「サファがしたいこと、なんでもしていいから。ふたりで、このダンジョンから出よう? そうしたら、サファとずっとふたりきりで過ごしてもいいしぃ。エッチも、毎晩して、いいよ?」
そうして、唇に唇を押しつけてきた。
たどたどしい舌の動かし方は、まぁ、テオなんだけど。
んーーーふふふ。これはすっごい、心の揺れるお誘いだから。
テオからしてくれるキスも相まって、グラングランしちゃうけど。
でも。テオは、こんなこと言わないよね?
毎晩エッチも、そうだが。
特に。お家に帰りたぁいは。絶対に言わない。
テオは、恥ずかしがり屋の怒りんぼ。そして、負けず嫌いで、男らしさを常に追求していたのだ。
子供のときからな。
だから、ふたりで森に入って、怖い目にあっても。
早く帰ろうとは、自分からは絶対に言い出さなくて。
俺が帰ろうと言い出すまでは、涙目でついてくるのだ。
それは、たぶん。自分からリタイアするのが嫌だったとか。
俺が行きたいと言った森に、ついていくことにしたのに。付き添いの自分が折れるのは、男らしくないとか。
とにかく、俺に負けたくないとか。
いろいろあるとは思うけど。
男に二言なし、というのも。よくテオが言っていた格言だ。
だから、わかるんだ。この言葉を言っているのは。テオじゃないって。
「サファ? ふたりきりになれるところに行って、エッチ、しよ? サファのコレ。欲しいよ」
だがしかし。
テオの顔で、小悪魔チックな笑みを浮かべて。
俺の…すでに膨らみ始めた欲望を。物欲しそうに手でナデナデされたら。
んーーーふふふ。ちょっとだけ、遊びたくなっちゃうっていうかぁ? ちょっとだけ。
「いいよ。ふたりきりになったら、テオを食べさせて?」
唇をつけたままの至近距離で、囁くと。テオも、こくりとうなずく。
うん。清楚で初心な感じは、残っているけど。
俺はテオを抱えて立ち上がる。体の前で、テオをぶら下げて。コアラの親子みたいに手で彼のお尻を支えて、歩いた。
第六階層まで来ると、冒険者のパーティーごとに休憩できるような、仕切られた区画がある。
まぁ、これも。隣人を気にせず励みなさい、と言われているような気になるね?
「わぁあ、サファの、もうおっきぃ。固くて、あっちぃね?」
歩く振動で、俺のモノが、テオの股間に当たる。まぁ、当たるよね?
このままでも、ぞくぞくするほど気持ちいいが。
マジックボックスからクッション性のある敷布を取り出して。その上にテオを下ろした。
俺が胡坐をかくと、テオはすぐにも膝の上に乗ってきて。
また、チュウし始めた。
なんか、すっごく愛しそうに。美味しそうに。俺の唇を舐めたり噛んだりしてくれて。
デレなテオを、もっと長く楽しみたかったけど。
俺はテオの首の後ろにいる、一センチくらいの小さなカマキリを掴んで。手で潰した。
すると、俺の口に吸いついていたテオが、ハッと息をのんで。目を覚ました。
「え? 俺。なんで、こんなことしちゃってるの?」
自分から俺のキスをねだったことは、意識があったみたいで。テオは顔を真っ赤に染めた。
恥ずかしくなっちゃった? かーわーいーいー。
「あぁ、カマキリキリマイの子供…おそらく後継がいて、それがテオを通して誘惑幻術を俺にかけようとしたみたいだな?」
つまり。カマキリキリマイの親玉は、やっつけたから。兵隊である子カマキリも消滅したはずなのだが。
それとは別に、カマキリキリマイの能力を踏襲する子供の女王カマキリがいたみたいだね?
だけど。今度こそ、俺がカマキリを潰してやったからな? 退治したぞ? テオっ!
「ええええぇっ、か、かま、カマキリが、俺にくっついてんの? どこ? サファ、取って? 早く、取って?」
でも、テオは。まだカマキリがくっついていると誤解して。俺に虫を取ってと言ってくる。
これはっ、カマキリ様のラッキータイムじゃね?
「落ち着いて、テオ。動くと、カマキリが逃げて。ユーリやイオナに取りついちゃうかもしれない」
ひえっ、となって。テオは、ビキッと身を固めた。背筋が伸びて、カチコチである。
自分がされて嫌なことを、テオは人にしたくないから。ここでカマキリと決着をつける気なのだろう。
いや、すでにプチっと、いっちゃってるけどね。
「サファ、どこにいるか、わかる? カマキリ、取れる?」
「あぁ、言ったろ? 俺が虫を退治してやるって。俺に任せておけ?」
そう言ったら。テオは、ぱぁっと、安堵の笑みを浮かべた。
うぅ、ちょっと罪悪感。
だが。ラッキータイムは逃せない。
「今、どこにいるの? 服、脱いだ方がいいか?」
「いや、シャツの中に入ったが。服を脱ぐと、逃げられそう。暗いところで逃げられたら、見失ってしまう」
「服の中? 感覚がないけど」
「ほんの、一センチくらいの、小さなカマキリだった。シャツの裾を出すな?」
俺の言うことを、素直に聞いて。テオは俺に任せてくれる。
「じゃあ、探すな?」
今は、対面で、テオが俺の腿に座っているところ。その状態で、裾から手を入れて。テオの背中を撫でていった。
すべすべの背中。なめらかで、指に吸いつくようで。いつまでも触っていたくなる。
肩甲骨のラインや、背筋や脇腹を、繊細なタッチで撫でていると。
テオが、鼻で吐息をついた。
「ごめん。ちょっと、感じた? 虫を探しているだけなんだけどぉ…」
「ううん、くすぐったかっただけ。大丈夫。続けて?」
続けて、いいんだぁ? じゃあね。
「あぁ、前の方に逃げたみたいだ」
そう言って、俺は腹の方に手を移動させた。
テオの腹は、薄いが。腹筋はそれなりにあって。おうとつを確かめながら、テオの肌をなぞっていった。
「さ、サファ、まだ? 早く。早く、取って?」
なんか、囁く感じで。まだ? とか。早く、とか言われると。
俺のモノをねだっているようにも聞こえて。エロいな?
ついつい、俺もたぎって。ギンと勃ち上がる。
「あ、みつけた」
そう言って、俺はテオの両の乳首を指先で摘まんだ。
「んぁ…そ、それは。違う」
「ん? 違う? これは虫じゃないのか?」
親指と人差し指で、こよりを作るように、摘まんでこすると。
テオは。ふあぁ、と口元をゆるめて。
でも、乳首だと言うのが恥ずかしいみたいで。下唇を噛んだ。
「絶対、そうだよ。二匹、いるんだな? ほら、コリコリって、感触があるだろ?」
手はテオの脇の下を抱え、親指だけを乳首にあてて、じっくりと揉み込む。
花芽を押しつぶすように、クリクリと親指の腹でこすり。乳輪も丸く撫でる。
乳頭をしつこく親指でイジメていたら。
「は、あ。あ、ん」
テオも、気持ちよさそうに身を震わせ、背中をそらす。
でもそれは、刺激を欲しがり胸を突き出すみたいに見え。エロティックだった。
「ん、ん、ダメ。サファ、それ……だ、から」
「なぁに? テオ。コレ、なんなの?」
乳頭をくにゅくにゅと刺激して、テオにわざと、これがなにか言わせる。
恥ずかしがるテオが、すっごく可愛いし。
羞恥を煽ると、テオはすっごく敏感になるから。
「ち…くび。だ、から。早く、ねぇ、早くぅ」
「早く、なに? 乳首、気持ちいいの? もっとコレ、してほしいってこと?」
耳元に、甘く囁いたら。
テオは、顔を真っ赤にして…怒った。
「早くっ、虫を取れって言ってんだよぉ、この、クソエロ駄犬がぁッ!」
応援ありがとうございます!
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