異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと

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ケーキの材料

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「無能王子?誰がそんなことを言ったの?」
 私もそう思っていたことは棚に上げる……。
「か、家庭教師が父上と母上に話をしているのを聞いたんだ……。俺は……10歳を越えても、ろくに読み書きができない。今も、手紙を1枚読むのに人の数倍はかかるし、理解するには1時間はかかる……とても将来政務を行うのは無理だろうと……。それを聞いて母上は泣き出し、父上は頭を押さえていた」
 読み書きが、10歳でもできない?庶民で文字が読めないとか書けないのは学ぶ機会がないからだが、殿下の立場なら3歳4歳のころから文字は習うだろう。それなのに、12歳になっても書類1枚目を通すのに1時間もかかるようじゃ、確かに政務は……。ん?待てよ?
 手紙1枚の内容を理解するのに1時間かかる?でも……。
「財務長官から、なぜ川のカーブの外側に村をつくるのか話を聞いたんだよね?」
「何で、話を戻した?まさか、無能だと聞かされて慰めの言葉が見つからなくて困ったからか?いいよ、慰めてくれなくても」
 いや違うって。違うけど、私の言葉の裏を想像することもできる。的外れだけど。
 理解する能力がないとか、考える力がないのとは違う。ん?何か言ってたぞ……。セイラが……。
『殿下ってディスレクシアなんだ。読み書き障害とか本当にいるんだ。あーでも、私は計算がどう頑張ってもできなディスカリキュリア……計算障害だし、まぁ発覚してないだけで色々努力ではどうにもならないことってあるんだろうなぁ。人の顔が覚えられない失顔症の人が営業に配属されて苦労してたなぁ。人事もいい加減だよなぁ。ったく。でも王様ばっかりは適材適所もできないから大変よね……』
 適材適所?両手を突き上げる。
「ふごぉぉぉぉぉっ!」
「おう!またお告げだな!」
 両手を突き上げ奇声を上げて立ち上がった私を見て、殿下はパチパチと拍手をする。
 まてい!見世物じゃないわ!というか、拍手などいらぬ。恥ずかしさの上塗りだよっ!
「殿下は、もう文字の読み書きなどしなければいいです。書類は読み上げてもらって、サイン以外は代筆してもらえば問題ない」
 手紙の代筆なんて、読み書きがあまり得意ではない令嬢なんて普通にやってますし。
「は?」
「本を読んで勉強できないなら、本を読み上げる人を採用すればいいです。読み書きが出来ないだけで無能だというような人間はやめさせた方がいいですよ。はっきり言って、私はケーキはどれも美味しくて好きですが、そのケーキを食べて材料に何が使われているかなんてまるっきりわかりません」
「卵は使われているな」
 まぁそうですね。って、そうじゃなくて!話の腰を折らないでくれます?
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