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アイデア

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「まぁいい。お告げだとすると意味があるってことだよな……。流れに逆らわない……流されないようにじゃなくて流されるように?舟でいい?馬車が通れないようなものでも確かに問題はないわけだが……。流されるのは橋げた……橋げたがなければ流されない?うーん……」
 橋げたがなければ橋はかからないんじゃない?小さな川なら川岸から川岸に丸太でも渡せばいいだろうけれど。
 殿下が何かを思いついたとばかりに、ガゼボから飛び出した。おいおい、女性を置き去りにして何も言わずに走っていくとか、マナー違反だっての!
 殿下はすぐに、小石と小枝を拾って戻って来た。テーブルの上に小石を間をあけて並べ、その上に小枝を渡す。
「ねぇ、こういうのはどう?川にロープでつないだ舟を並べて浮かべるんだ」
 小石を指さす。
「その上に、木を渡す」
 小石の上の枝を指さす殿下。
「橋げたの変わりに舟を使う……と言うことですか?」
 すごい。すごい発想。
 もしかしたらセイラもこのことを言っていたの?確かに舟なら水害が置きそうなときは内側の川岸に上げてしまえばいいだろう。馬車は通れないが、人が移動するには充分じゃないだろうか?
 費用面にしても流された村の再建に比べれば大した額ではないはずだ。橋げたが必要な橋を作ろうと思えば技術者が何人も派遣され何か月もかかって作る必要があるけれど……舟……いえ、舟ではなく筏でも構わないんじゃないだろうか。それならば、技術者でなくとも作ることができるだろう。しかも、短期間で……。
「殿下!それならば、川のカーブの内側に村を作り、外側に畑を作ることが可能かもしれません!是非そのアイデアを陛下にお話しするべきです!」
 私の言葉に、殿下は目を見開いて、それから自信なさげに表情を曇らせる。
「父上は聞いてくれるだろうか……忙しいから話はあとで聞くと言われて真面目に取り合ってくれないかもしれない」
 確かに陛下はお忙しいでしょうが……。
「それに、俺……無能王子だから……そんな俺の言うことなんて……」
 無能王子?何だ、自覚が……げふんごふん。
 そうじゃなくて、本当に無能なのかな?ちょっとマナーがなってなくて、落ち着きがないし知らないことも多いけれど。
 そこまで頭の回転が悪いわけでもなさそうだし。お礼を言ったり謝ったりできて皇太子だということを鼻にかけるようなこともない。有能ではないけれど、無能と言うほどでも……。殿下が言った舟を使った橋のアイデアなんてすごいと思うし。
 なのに、なぜ陛下もお父様も殿下の能力に不安を感じ支えられる有能な婚約者をと私に打診しているの?


========
浮橋とかいうやつです。実際に設置されているところは……探すといくつかあるみたいですが……。
緊急時の端として自衛隊とか浮橋セットを持っているそうですよ。
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