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甘く深く
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Side 櫂斗
ハンバーガーは絶品で、食べ盛りの櫂斗でも満足できる量であった。
これは城が通うのも頷ける。
2人で病室に戻ると、時雨はまだ眠ったままであったが、疲れから熱が出てきたのか、頬は赤く、じっとりと汗をかいている。
熱を測ると37.5℃で、上がる前にと解熱剤を飲むために城が叩き起こした。
「吐き気は?寒く無いか?」
「ちょっと寒い…ゲホッ吐き気はないよ。」
ぼぉーっとした目で緩慢に答える。
「汗かいてるから、一回着替えような?」
櫂斗は服を脱がし、タオルで体を拭いて新しいパジャマに着替えさせる。
冷えピタは臭いが嫌いらしく、嫌がられた為タライに水を張って濡れタオルを額にのせた。
「なんじ…?」
「今は16時過ぎだな。昼も食べてないから、お腹空いて無いか?」
「いらない…。ケホッもうちょっと、ねてい…?」
「ああ。」
「かいとさん、いる…?」
「何処にも行かないよ。ゆっくり休んで良い。」
ベッドに腰掛け、時雨の汗で貼りついた前髪を手で撫で付ける。
「ん……」
熱が上がってきているのか、呼吸が少し速い。
無茶させてしまったと反省しつつも、時雨と番えた事は言葉に表せないくらい嬉しい。
手当のためにガーゼを貼っているが、己の付けた形を思い返すと、にやけずにはいられない。
「俺は今日、18時に上がるから、帰る前にもう一度来る。夜勤は今日ベテランと研修医がいるから、何か有ればそれ以降は渡してあるPHSで連絡をくれ。
科が違うから、ナースコールを押しても、内分泌科にしか繋がらんからな。」
城が出ていき、2人きりになる。
早く治る様にと願いながら、時雨をフェロモンで包み、額に濡れたタオルを時折変え、ただ顔を眺めたり、時折ほっぺをつついてみたりする。顔をやや顰める時もあるが、それもまた面白く、起きない程度に時雨をかまう。
そう言えば、父に連絡をしていないことを思い出し、メールで番ったことと、入学前に会える日がないかを送る。
返信が来たのは1時間後で、祝いの言葉と、入学式直前の土曜日なら都合がつくと書かれていた。
入寮はしているが、まだ入学前で寮の出入りは自由だ。
土曜に伺うと返信を返して、画面を閉じた。
城が再び来た時には、38℃まで上がっていた。まだ寒気があるらしく、もう少し上がりそうだ。
38.5℃まで上がったら点滴を行うから医者を呼ぶ様にと言い、城は帰っていった。
昼を食べたのが15時頃であった為、あまり腹は空いていない。夜はいいかとシャワーだけさっと浴びて、時間は早いが時雨の横に横になる。
触れる体が熱くて心配になる。
櫂斗の匂いが近くなったのがわかったのか、うっすら目を開け、ふにゃっと笑みをこぼすと時雨の方から抱きついてきた。
「無理させてごめんな。つらくない?」
「んぅ…かいとさ、いるから、へいき…」
再びスピスピと寝息が聞こえ、安心しきった顔で眠っている。
時雨の甘い匂いを感じながら、櫂斗も時雨の背に手を回し目を瞑った。
ケホッケホッっと耳に聞こえるかすかな咳の音で目が覚めた。
時雨を見ると、体を起こして咳き込んでいる。
「シグ、水飲もう。」
ベッドサイドに置いていた水をゆっくりと飲ませる。
「ゲホッん…ケホッ」
背中を摩り、落ち着くのを待つ。
「ありがと…」
しっかり眠った為か、薬が効いたのか、熱は37.0℃まで下がっていた。どうやら、喉が乾いて起きたが、唾を飲んだ時に変な所に入ったらしく、咳が止まらなくなったみたいだ。
「ケホッ起こしてごめんね。」
「大丈夫だ。起こしてくれた方が、何かあった時に早く気づけて嬉しい。知らない間に、シグが苦しんでいる方が俺は怖いから、シグが俺に教えてくれ。」
ポンポンと落ち着ける様に背中を叩き、また眠れるようにしていく。
「…ぅん、そー、する。」
今までの様子からも気づいていたが、どうやら頭を撫でたり、背中を摩るなどの行為が時雨はとても安心するらしい。
いつの間にか2人ともまた眠ってしまったようで、朝は城に2人揃って起こされた。
抱き合って眠っていた為、番とわかれて仕事にきた城には腹立たしかったらしく、布団を思いっきり剥がされ、櫂斗はバシバシと叩かれて雑に起こされた。
時雨の熱は朝には下がっており、顔色も良く安心する。
「体調も問題無さそうだから、明日退院しても良いぞ。」
診察を終えた城が隊員の許可を出した。
「本当⁈良かったぁ。入寮日に間に合うか心配だったんだ。」
時雨は目を大きくして飛び跳ねる勢いである。
「良かったな。退院日は家まで送ってもいいか?」
入院生活は制限こそあったものの、時雨と密接にいられる良い環境であった。
寮に入るまでの3日間は、また別々に過ごすことになる。
櫂斗も中等部の寮から高等部の寮に移るための部屋の清掃をしなければならず、3日間は忙しくなるだろう。
「そっかぁ…。ずっと櫂斗さんがいたから、寮に入るまでお別れなんだね…」
しゅんと耳が垂れ下がるのが見える。
「ゴホッ…3日だ。毎日電話する。すまない、俺も寮の片付けをしないといけなくて…」
「大丈夫だよ。僕も、入寮の準備が途中なんだ。夏兄がある程度生活用品はまとめてくれてるみたいだけど、ちゃんと確認しないとね。」
「坊ちゃん、別れる前に、お前さんのタオルでも羽織でもいいからシグに渡しとけよ。出来るだけ、匂いのついたやつ。」
精神安定になるからな~とウンザリした様子でカルテを打ち込んでいる。
「わかりました。」
今日はタオルを首に巻いて生活しようと決めて、最後の入院日を穏やかに過ごした。
ハンバーガーは絶品で、食べ盛りの櫂斗でも満足できる量であった。
これは城が通うのも頷ける。
2人で病室に戻ると、時雨はまだ眠ったままであったが、疲れから熱が出てきたのか、頬は赤く、じっとりと汗をかいている。
熱を測ると37.5℃で、上がる前にと解熱剤を飲むために城が叩き起こした。
「吐き気は?寒く無いか?」
「ちょっと寒い…ゲホッ吐き気はないよ。」
ぼぉーっとした目で緩慢に答える。
「汗かいてるから、一回着替えような?」
櫂斗は服を脱がし、タオルで体を拭いて新しいパジャマに着替えさせる。
冷えピタは臭いが嫌いらしく、嫌がられた為タライに水を張って濡れタオルを額にのせた。
「なんじ…?」
「今は16時過ぎだな。昼も食べてないから、お腹空いて無いか?」
「いらない…。ケホッもうちょっと、ねてい…?」
「ああ。」
「かいとさん、いる…?」
「何処にも行かないよ。ゆっくり休んで良い。」
ベッドに腰掛け、時雨の汗で貼りついた前髪を手で撫で付ける。
「ん……」
熱が上がってきているのか、呼吸が少し速い。
無茶させてしまったと反省しつつも、時雨と番えた事は言葉に表せないくらい嬉しい。
手当のためにガーゼを貼っているが、己の付けた形を思い返すと、にやけずにはいられない。
「俺は今日、18時に上がるから、帰る前にもう一度来る。夜勤は今日ベテランと研修医がいるから、何か有ればそれ以降は渡してあるPHSで連絡をくれ。
科が違うから、ナースコールを押しても、内分泌科にしか繋がらんからな。」
城が出ていき、2人きりになる。
早く治る様にと願いながら、時雨をフェロモンで包み、額に濡れたタオルを時折変え、ただ顔を眺めたり、時折ほっぺをつついてみたりする。顔をやや顰める時もあるが、それもまた面白く、起きない程度に時雨をかまう。
そう言えば、父に連絡をしていないことを思い出し、メールで番ったことと、入学前に会える日がないかを送る。
返信が来たのは1時間後で、祝いの言葉と、入学式直前の土曜日なら都合がつくと書かれていた。
入寮はしているが、まだ入学前で寮の出入りは自由だ。
土曜に伺うと返信を返して、画面を閉じた。
城が再び来た時には、38℃まで上がっていた。まだ寒気があるらしく、もう少し上がりそうだ。
38.5℃まで上がったら点滴を行うから医者を呼ぶ様にと言い、城は帰っていった。
昼を食べたのが15時頃であった為、あまり腹は空いていない。夜はいいかとシャワーだけさっと浴びて、時間は早いが時雨の横に横になる。
触れる体が熱くて心配になる。
櫂斗の匂いが近くなったのがわかったのか、うっすら目を開け、ふにゃっと笑みをこぼすと時雨の方から抱きついてきた。
「無理させてごめんな。つらくない?」
「んぅ…かいとさ、いるから、へいき…」
再びスピスピと寝息が聞こえ、安心しきった顔で眠っている。
時雨の甘い匂いを感じながら、櫂斗も時雨の背に手を回し目を瞑った。
ケホッケホッっと耳に聞こえるかすかな咳の音で目が覚めた。
時雨を見ると、体を起こして咳き込んでいる。
「シグ、水飲もう。」
ベッドサイドに置いていた水をゆっくりと飲ませる。
「ゲホッん…ケホッ」
背中を摩り、落ち着くのを待つ。
「ありがと…」
しっかり眠った為か、薬が効いたのか、熱は37.0℃まで下がっていた。どうやら、喉が乾いて起きたが、唾を飲んだ時に変な所に入ったらしく、咳が止まらなくなったみたいだ。
「ケホッ起こしてごめんね。」
「大丈夫だ。起こしてくれた方が、何かあった時に早く気づけて嬉しい。知らない間に、シグが苦しんでいる方が俺は怖いから、シグが俺に教えてくれ。」
ポンポンと落ち着ける様に背中を叩き、また眠れるようにしていく。
「…ぅん、そー、する。」
今までの様子からも気づいていたが、どうやら頭を撫でたり、背中を摩るなどの行為が時雨はとても安心するらしい。
いつの間にか2人ともまた眠ってしまったようで、朝は城に2人揃って起こされた。
抱き合って眠っていた為、番とわかれて仕事にきた城には腹立たしかったらしく、布団を思いっきり剥がされ、櫂斗はバシバシと叩かれて雑に起こされた。
時雨の熱は朝には下がっており、顔色も良く安心する。
「体調も問題無さそうだから、明日退院しても良いぞ。」
診察を終えた城が隊員の許可を出した。
「本当⁈良かったぁ。入寮日に間に合うか心配だったんだ。」
時雨は目を大きくして飛び跳ねる勢いである。
「良かったな。退院日は家まで送ってもいいか?」
入院生活は制限こそあったものの、時雨と密接にいられる良い環境であった。
寮に入るまでの3日間は、また別々に過ごすことになる。
櫂斗も中等部の寮から高等部の寮に移るための部屋の清掃をしなければならず、3日間は忙しくなるだろう。
「そっかぁ…。ずっと櫂斗さんがいたから、寮に入るまでお別れなんだね…」
しゅんと耳が垂れ下がるのが見える。
「ゴホッ…3日だ。毎日電話する。すまない、俺も寮の片付けをしないといけなくて…」
「大丈夫だよ。僕も、入寮の準備が途中なんだ。夏兄がある程度生活用品はまとめてくれてるみたいだけど、ちゃんと確認しないとね。」
「坊ちゃん、別れる前に、お前さんのタオルでも羽織でもいいからシグに渡しとけよ。出来るだけ、匂いのついたやつ。」
精神安定になるからな~とウンザリした様子でカルテを打ち込んでいる。
「わかりました。」
今日はタオルを首に巻いて生活しようと決めて、最後の入院日を穏やかに過ごした。
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