転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

文字の大きさ
747 / 828
特別編3:異世界

神の国

しおりを挟む
──〔another side〕──

あれからかなりの月日が流れた。

かなり早い段階でオラクルの中で世界の時間を加速させる方法を見つけて実行しておいたから、外の世界ではそんなに時間が経っていないと思う。そうしたのには理由があった。

あの日、流石に人質を取ると言われたらこちらも穏やかに済ませる事はできなかった。
人に被害の出ない様に要塞の上半分程を吹き飛ばして首相さん達に警告する。

『私はクルエナール連邦だけに味方するつもりはありません』

その後、ザクスさんとルルちゃん、騎士さん達のご家族も転移で連れ出して大森林の獣人族の村に避難。何も知らない騎士さん達のご家族に事情の説明しながら今後の対応について話し合っていたら、数日後には軍隊を差し向けてきた。

私達の動きを読んでいたのかも知れない。

クルエナールがこの世界で最強の国家だとしても、例え私がオリジナルの10分の1程度の出力が出なくても手加減しなければどうとでも出来る。

私達に構わないでほしいと警告をしたのだけど、相手は森ごと焼き払うつもりで来ていたので已む無く排除した。

軍の動きを見て、政府高官であるマークさんのお父さんも連邦の味方をするつもりを無くしたらしく、森に住む獣人を国民とした国家を樹立しようと言い出した。ゴードンさんとニールさんのご家族もこの動きに賛成で、積極的に手伝ってくれる事になった。

ここまでは良かったのだけど、国の王を私にしようと言い出して困ってしまった。私はこの世界のものではないし、そもそも神様の代行なのだから人間に必要以上に介入してはいけないと思ったから。

…まあ今更なんだけどね。

断ろうとしたんだけど、『獣人族達には後ろ盾が必要です』と言われたらやらざるを得ない。アウラさんのサポートも貰いながら新しく興る国の王になる事にした。

断ろうとした理由はもう一つあって、大森林に攻めてきたクルエナール軍を追い払った時に物凄い違和感を感じていた。

かなりの数の人を殺めてしまったのだけど、罪悪感よりも高揚感があった事。こんな事なんて今まで一度もなかったのに…。

それから心の奥底から聞こえてくる声。

(滅ボセ…皆殺シニシロ…)
(全テヲ無ニ帰セヨ…)

アウラさんに聞いてみても[声は聞こえません]って言われた。

私にだけ聞こえてるんだ?
これってもしかして悪神化したウルドベルズ様だったり…?

いやいや、あの神様は完全に取り込んだのだから私に話しかけて来る事なんて無い筈だ。だとしたら悪神としての何か…例えば虚空の覇者ヴォイドマスターさん達が言っていた《闇》だったりするのかも。

…本体に戻らなくて正解だったね。

時間を加速させたのは私が悪神化するかを見定める為。そうなってしまっても本体の私達が必ず倒してくれる。

こんな私がこの世界の神様代行なんてやっていて良いのか分からないけど、今は出来る事をやろうと思う。

ーーーー

──結局、クルエナール連邦には滅んでもらった。

大森林で興った獣人族の国を対外的に認めてもらう為にクルエナール連邦以外の国に承認を得る事は意外と簡単に出来たのだけど、あの国とは最後まで歩み寄る事は出来なかった。

私を邪神と呼んで次々と軍隊を送り込んできたあの国は、遂には14歳以上の男女を全て徴兵すると発表して徹底抗戦の構えを示した。

これには国民も強く反発して内戦状態に。併合させられていた国が次々と挙兵してクルエナール連邦内は酷い状態になってしまった。

離反した国の中には私達に味方する国も多く、長い戦争で疲弊した人達に援助の手を差し伸べて友好関係を強固なものにしていった。

連邦が完全に崩壊、消滅するには二年かかった。

それまでに失った生命は数え切れない。

獣人族の国は旧クルエナール連邦を取り込む様な形で急拡大していき、この大陸で獣人を迫害する者は居なくなった。

これで平和になったかと思ったのだけど世界はそう簡単には出来ていない。
今度は獣人族が旧クルエナール連邦の高官だった部族を迫害する様になった。

勿論私はやめる様に言ったけど目の届かない所で横行して、また沢山の血が流れてしまった。

…同じ事の繰り返しだ。

(汚レタ魂ヲ駆逐セヨ)

この世界の人達にはみんな仲良くしてもらいたいと思うのだけど、何かあれば直ぐに戦争を始めてしまう。

領土の拡大、資源の確保、怨恨などなど…その兆候がある度に私が出向いて調停してきた。

(愚カナ人種ニ等シク滅ビヲ)

他の大陸の国とも争いが続いた。
理由は似た様なもので、侵略者には容赦なく反撃を行ったけど、それ以外には可能な限り友好的に触れ合ってきた。

外交に関しては騎士さん達とご家族が協力してくれて上手く取りまとめてくれていたし、国の重要な役職には種族の隔たりなく平等に就けるようにしてきたつもりだ。

もう少し安定したら私は国王を辞して神界に帰ろうと思うのだけど…。

(生ケル者全テヲ滅ボセ)
(世界ニ終焉ヲ──)

「あーもう!うるさいなぁ!」

ずーっと無視してきたけどそれを良い事に好き勝手に語りかけてきて、四六時中そんなこと言われたら頭がおかしくなっちゃうでしょ‼︎
それに何?等しく殺せだの穢れた魂を滅ぼせだの人種を滅ぼせだの、言ってる事が滅茶苦茶じゃない!結局私に何をさせたいの!?

言っておくけど世界を終わらせるなんて絶対にしないから!今まで沢山苦労してきたけど私はこの世界の人達に絶望して全員死んじゃえって考えにはならないよ!

ここで出会って来た人達の全てが良かった訳じゃないけど、ここでの出来事を無かった事になんて絶対にするつもりはないから‼︎

「私は神様代行として、本当の神様が見つかるまでこの世界を守り続けるんだから!だから何を言っても無駄なんだからね‼︎」

はぁっ…はぁっ…。
よく分からない謎の声に全力で言い返してしまった。

誰かに見られたら頭がおかしくなったと思われそう…。

「あのぅ…ミナ、さん…?」

おずおずとか細い声で私を呼んだのはルルちゃんだった。

うわぁ…見られてた…。

ここは元大森林に建てられたお城、私の部屋だ。ルルちゃんは私の補佐役として長年付き添ってくれている。

「何かあったのですか…?」
「う、ううん!何でもないよ!ホント何でもないから」

心配そうに私の事を見つめるルルちゃん。

この数年でルルちゃんは私よりも背が伸びてすっかり大人のお姉さんになっていた。この世界の獣人族は成長が早いらしく、寿命も人間の半分くらいだそう。

ルルちゃんは私に業務完了の報告があって来てくれたらしい。一通り報告を終えると「何かあったらいつでも相談してくださいね」と言って部屋を出て行った。

変な心配をさせちゃったね。

ーーーー

あの日以降あの変な声は聞こえなくなった。私が思う通りにいかないと分かって諦めてくれたのかな?

もしあの声が《闇》そのものだったのなら、こんな事で引き下がる事は無いのだろう。次はどんな手段で来るのか、何にしたって私は自分の意思で世界を滅ぼす事はないよ。

あれからオラクルに行って《闇》について調べてみたけど何も手掛かりを見つける事は出来なかった。
でも、何となくだけど分かった事がある。私の考えがもしも正しかったら──
しおりを挟む
感想 1,520

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。