上 下
367 / 763
地球

女神

しおりを挟む
ソラちゃんはとショウ君の方は…?

『オラァっ!何だか前よりもおかしな事になってるが、んなこたぁ関係ねぇ!ぶちのめしてやる!』

ダキアさんがショウ君の横から斬り込んで来た。それに合わせて剣を引き戻し突きの構えで迎え撃とうとする。しかしそれも次の攻撃で遮られた。

アリソンさんが死角から回し蹴りを放ち、ショウ君を蹌踉めかせる。

バランスを崩したショウ君にダキアさんの大剣が振り下ろされる。長剣で軌道を逸らして防いだ所にクロウさんが長剣で突きを放ち左肩を貫いた。

「ぐっ…!?オレ…は……なに、を…」

ダメージで正気に戻りかけてるの?

「私が目を覚まさせてやる」

ソラちゃんが低い姿勢でショウ君の懐に飛び込んで短く持ったハルバードを振り上げる。
ショウ君が仰反る様にして宙を舞う。
2つに割れた状態で胸についていた石が外れて弾け飛んでいき、2つに分かれて地面に落ちた。

ショウ君も力尽きて地面に倒れる。

何とか倒す事ができた。

リュウさんは…?

「何とか治療は済んだが血を失い過ぎた。助かるかは分からない」

ルーティアさんが状態を教えてくれた。

ダキアさん達も技能が無いんだよね?スゴい動きをしていたけど…。

『長年戦ってりゃ、んなもん無くても勘で戦える』

ダキアさんはニヤリとしながら剣を納めていた。

『ミナちゃん無事で良かったよー』
『合流が遅くなってすまなかったな。だが、無事だと信じていた』

アリソンさんとクロウさんもいつも通りの様子だ。

『皆さん、ありがとうございました。無事で良かったです』
『お前はあまり無事じゃなさそうだな。よく頑張ったな』

いつもの様に頭を撫でられる。懐かしくて、嬉しかった。

『ミナ、まずは状況を話してくれるか?なぜリュウを助けてショウと戦っていたんだ?あの赤い石は何だ?』

ルーティアさんに聞かれる。
私は現在の状況を頭の中で整理しながら説明をしていく。

「ミナさん…私はルーティアさん達の話している事が分かりません」
「え…そうなんだ」

私は幸運の作用でアスティアの言葉を習得してるんだろう。
と言う事はソラちゃんも分からないんだね。

アリソンさんと何か話そうとしているけど、言葉が通じていない。

「ミナ、今すぐここを離れて」

ソラちゃんが大きな声で言ってくる。

「なんで?もう敵はいないよ?」
「多分…リヴェルティアがくる。私を殺しに」
「じゃあ一緒に逃げよう」
「無理だよ。見つけられちゃう」

ソラちゃん、それも覚悟の上でリヴェルティア様に協力するフリをしたの…?

「神様は私達に直接介入出来ないのでは?」
「それはアスティアでの話。ここは地球だから前提が違うよ」

ユキさんの指摘に対して冷静に答えるソラちゃん。

「神を謀るとは…やってくれますね、地球人は」

その声は穏やかを装ってはいたけど震えていて、怒りに満ちていた。

私達の少し離れた所に現れたのは白いドレスの様な服を着た美しい女神、リヴェルティア様だ。

「ソラ、あなたは家族に会いたくないの?」
「リヴェルティアは約束を守る気が無いくせに…あの時私に言って事覚えてる?『お父さんとお母さんに会わせてあげる』って。私にお父さんは居ないし、お母さんも既に死んでいて生まれ変わっている。適当な事を言って利用しようとしたのはそっちだ」

ソラちゃんの言う事を、目を細めて聞いているリヴェルティア様。

「アイと言いあなたと言い、本当に転生者は変な所で知恵が回るわね。でも、私に協力した時点であなたは私の手駒なのです。言う事を聞かない手駒は処分する、覚悟はいいですか?」

リヴェルティア様は右手を正面に突き出すと、手をギュッと握りしめる。

それと同時に胸を押さえて苦しみだすソラちゃん。

「どうしたの…!?ソラちゃん!」
「うぅっ……い、た…苦し……い…」

ハルバードを取り落としてその場に蹲るソラちゃん。

「私を裏切った罰です。苦しみながら死になさい」

握った右手に力を込めるリヴェルティア様。

『何をしてやがる!やめろ!』

ダキアさんがリヴェルティア様に斬りかかる。

「邪魔をするな!」

リヴェルティア様は左手を軽く振るうと振り下ろした大剣を跳ね飛ばして、ダキアさん自身も遠くに吹き飛ばされた。

『ダキア!ちっ…とにかくあれを止めるぞ!』

ルーティアさんの指示でアリソンさんとクロウさんが同時に斬り込むけど、障壁の様なものに阻まれてしまう。

私はソラちゃんのそばに駆け寄って様子を見る。
胸を押さえて苦しんでいる。息もできない様子だ。

このままじゃソラちゃんが死んじゃう…。

「もうやめてください!リヴェルティア様は私を殺したいんでしょう?私をそれで攻撃すれば良いじゃないですか!」
「これは予め打ち込まなければ使えないの。私に協力をすると言った全ての転生者に打ち込んである。目的を果たしたら全員処分する為に用意したものです」

じゃあ…初めからみんなを殺すつもりで利用するつもりだったの…?

「うぅ…あぁぁぁっっ……!!」

ソラちゃんが体をのけ反らせて大きな声をあげる。

「やめて…!私はもう抵抗しませんから…だからソラちゃんを、みんなを助けてください!」

小剣を捨てて懇願する。それを冷たい目で見つめてくるリヴェルティア様。

「駄目ですね。私は女神、あなた達はただの人間。生かすも殺すも私達の気分次第、そしてあなたは私を不快にさせた。そのあなたの願いなど聞き入れる訳がないでしょう?むしろその逆、全員抹殺して、あなたを絶望の淵に追い込んでから死なせてあげましょう」

そんな…まさかそれをする為にみんなを利用して、ここまでの事をして来たと言うの…?

酷い…酷すぎるよ…。

「無力な自分に絶望しましたか?子供の様に泣き叫んでみますか?私はその方が嬉しいですよ?」

狂ってる…。

これが神様のする事…?

誰か…誰か……!助けて…!

[ミナ……見つ…ま……た。そちらに……ます]

今の声…アウラさん…?

途切れ途切れだけど確かに聞こえた。

「アウラさん!お願い!みんなを助けて!」
「願う相手が違うよ?」

空間が裂けてそこから出て来たのは…私…?

「女神リヴェルティア…神様を殺せるなんて…ふふっ…愉快ね!」

そう言ってリヴェルティア様に向かって飛び込んでいったのは背中に黒い翼を生やした私、《シャイターン》の私だった。その手には見慣れない禍々しい色をした剣を持っていた。
しおりを挟む
感想 1,506

あなたにおすすめの小説

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

野良竜を拾ったら、女神として覚醒しそうになりました(涙

中村まり
恋愛
ある日、とある森の中で、うっかり子竜を拾ってしまったフロル。竜を飼うことは、この国では禁止されている。しがない宿屋の娘であるフロルが、何度、子竜を森に返しても、子竜はすぐに戻ってきてしまって! そんなフロルは、何故か7才の時から、ぴたりと成長を止めたまま。もうすぐ16才の誕生日を迎えようとしていたある日、子竜を探索にきた騎士団に見つかってしまう。ことの成り行きで、竜と共に城に従者としてあがることになったのだが。 「私って魔力持ちだったんですか?!」 突然判明したフロルの魔力。 宮廷魔道師長ライルの弟子となった頃、フロルの成長が急に始まってしまった。 フロルには、ありとあらゆる動物が懐き、フロルがいる場所は草花が溢れるように咲き乱れるが、本人も、周りの人間も、気がついていないのだったが。 その頃、春の女神の生まれ変わりを探し求めて、闇の帝王がこちらの世界に災いをもたらし始めて・・・! 自然系チート能力を持つフロルは、自分を待ち受ける運命にまだ気がついていないのだった。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

転生したらドラゴンに拾われた

hiro
ファンタジー
トラックに轢かれ、気がついたら白い空間にいた優斗。そこで美しい声を聞いたと思ったら再び意識を失う。次に目が覚めると、目の前に恐ろしいほどに顔の整った男がいた。そして自分は赤ん坊になっているようだ! これは前世の記憶を持ったまま異世界に転生した男の子が、前世では得られなかった愛情を浴びるほど注がれながら成長していく物語。

生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30) 小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。 ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。 それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。 そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。 とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。 ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。 冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。 今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。 「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」 降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決! 面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。 これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。