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平穏

カルパッチョ

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『お腹減った!』

ムニエルちゃんはいつものご飯の時間に人が来なくてお腹を空かせていた。

いつも何を食べてるんだろう?

『サカナ!』
『魚?生のまま?』
『切ってあったよ。』

ルブルスリウムは内陸の町だから海の魚じゃないのかな。

「レストランから買っていたのかもね。或いはテイクアウトかしら。」
「子爵様が持って帰るからと、カルパッチョを10人前大急ぎで作りました。」
「それね。フレッドに頼んで作ってもらいましょう。」

という訳でフレッドさんの家に戻り事情を説明。転移で港町に行って魚やその他食材を買いつけて戻ってくる。

「あの…ミナ様、私の怪我を治してくれた時に、足も治してくれたんですか?」
「え?はい。まだどこか痛みますか?」
「いえ、私の足は若い頃大怪我をした後遺症で、2度と治らないと言われていたので…。」

そうだったんだ。

「治って良かったです。これでお仕事もしやすくなりますね。」
「はい!ありがとうございます!」

スゴく喜んでくれた。ミリアちゃんを助けてくれたお礼になったかな?

フレッドさんの家のキッチンでは狭いので、子爵の屋敷の厨房を借りて調理をする事になった。
フレッドさんはテキパキと動き、それに合わせてミリアちゃんも手伝っている。

「中々の手際とコンビネーション。」
「本当ね。修行に来て数日なのに良い手際だわ。」
「きっと相性が良いのでしょうね。」

3人が感心しながら言っている。

フレッドさんは元々港町の出身で、魚の料理が得意だったらしい。
あのレストランは魔法の樽で生きた魚を仕入れていて、それが売りでもあったとか。

魚って捌くの大変だよね。お婆ちゃんに教わった事があるけど全然上手く出来なかったっけ。

今なら調理技能があるから簡単に出来てしまうんだけどね。

話している間に料理が出来上がったのでムニエルちゃんの所に持っていく。
扉の前にはログノスさん達が難しい顔をして立っていた。

「中の子…レッサーセイノールといったか、大丈夫なのか?」

ログノスさん達が心配していたのは、初めに発見した兵士達に対してムニエルちゃんが金切り声を上げて耳を破壊した事が原因らしい。
兵士の人達の耳は後で治療するとして、ログノスさん達にはコミュニケーションが取れているから突然攻撃されたりはしない事を説明しておいた。

「まあ、奴らも自業自得な所はあるんだけどな。」
「武器を構えて入ってきたら攻撃されるわな。」

アッシュさんとゼトさんが笑いながら言っている。

何でも他の部屋には結構な猛獣が居て、「ここにもヤバいのが居るに違いない」と踏み込んだらしい。

それは何とも…。

[音波砲はレッサーセイノールの数少ない攻撃手段の1つです。その他には精霊魔法を使う事ができる個体もいます。]

アウラさんが教えてくれた。

フレッドさんが作った料理を持っていくと、ムニエルちゃんは喜んで食べてくれた。

『ムニエルちゃんはいつからここにいるの?』
『うーん、8回ご飯が出てきたよ!』

3食食べれていたのなら3日前かな。

『ムニエルちゃん、おうちの場所分かる?』
『うーん…分からない。』

レッサーセイノールが住んでいる地域を連れて周るしかないかな。

『ムニエルは家族はいるの?』
『いるよ!おとーさんとおかーさん。』

「それなら鑑定で探せるかも知れないわね。」
「そっか!」

その手があったね。

ご飯を食べて元気になったムニエルちゃんとお話をしていたら日も落ちて外は暗くなっていた。

ムニエルちゃんをここに置いておくのは可哀想なので、孤児院のある階層に大きめの池を作ってそこに入ってもらう事になった。

明日の朝にムニエルちゃんをおうちに帰してあげよう。

フレッドさんと別れてミリアちゃんを孤児院に送り届けてから中央ギルドでレギウスさんに状況を報告をする。《蒼天の翼》のみんなも一緒だ。

「……そうか。無事に方がついて本当に良かった。ミナ殿には何とお詫びをすれば良いか…。」
「いえ、気にしないでください。レギウスさんが悪い訳ではありませんし。」
「いや、同じ貴族として申し訳ないのだ。」

レギウスさんは終始平謝りだった。

「ログノスさん達もありがとうございました。」
「いやいや、ミナの役に立てて良かったよ。」

何かお礼をと思ったけど「報酬はギルドからもらうから大丈夫」と断られてしまった。
今度あった時に装備でもプレゼントしようかな。

今日の用事は全て済んだのでエリストに帰る。

エリストの家には魔王討伐の時のメンバーが勢揃いしていた。

軽く挨拶をしながら食事をとらせてもらう。

「また貴族を仕留めたって?」
「エルジュにはまだまだいるみたいですね、駄目貴族。」

ルーティアさんとリオさんがそんな話をしている。
仕留めるって…。

「ムニエルがカルパッチョを沢山食べた。」
「ん…?魚づくしだな。」
「あい。」

こっちはソラちゃんとダキアさんだ。
それだと分からないよね。

レッサーセイノールの子を保護して名前を付けた事を話すと、「名付け親はソラだろう。」とみんな笑いながら頷いていた。

「明日ムニエルちゃんを送り届けようと思うんです。」
「お、それならついて行っていいか?レッサーセイノールを見てみたいし。」

マサキさんが手を挙げながら言う。勿論ネネさんとハナちゃんも一緒だ。

「俺も行くよ!」
「それじゃ俺も一緒に行かせてもらおうかね。」

テュケ君もマサキさんに習って手を挙げながら言う。隣にいたウェスターさんも参加だ。

「残念だが今回は一緒には行けないねぇ。」

ルーティアさん達はギルドの仕事があるらしく明日は朝から用事あり。

「海の中はちょっと…」

と言っていたのはリリエンタの面々。やっぱり獣人族ケルヴィムは水が苦手なんだね。

「そう言う訳だから一緒に行く人は今日はここに泊まってもらって、明日の朝出発よ。」

相変わらず部屋は余っているからね。

「皆さんに部屋をあげちゃダメでしょうか?」
「ミナの家なんだから好きにすれば良いと思うよ。」

みんな住んでいる所がバラバラだから転移能力付きのアイテムを使って自由に行き来が出来る様にしてみたいと話をしたらみんなに苦笑された。

「ミナさんらしいといえばそうなんですけど、私達には過ぎたるものですよ。」
「そうね。当たり前に使っているけど転移魔法って失伝してるから使えるのって私とミナとネネさんだけだし。」

リオさんに言われて思い出す。
…そういえばそうだった。

「でもまあ、何かあった時にすぐに集まれるのは便利よね。使用制限を付けて全員に渡しておいたら?」

これから何かあるとしたらリヴェルティア様絡みの事だろう。個人で対抗手段がない以上避難出来る様にしておくのはいい事だよね。
人数分ペンダントを作成して渡しておく事にした。
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