転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

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魔王

冒険者

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私達が助けたのは冒険者とその家族だった。かなり多い、50人位いるかな。

「君達は?」
「私はエルジュから来ました、エリスト所属の冒険者ミナです。魔王の発生を知って皆さんを助けに来ました。」
「魔王の復活を知って来たというのか…。それで、他にも来ているのだろう?」
「はい。頼りになる方ばかり来てくれています。ここは危険ですから安全な所に避難しましょう。」

声を掛けてくれた剣士のおじさんと話をする。

「安全な所なんてあるのか?俺達は魔物に追われてこんな所まで追い詰められてしまったんだ。」
「大丈夫です。」
「何が大丈夫なんだよ、レッサーデーモンに追われ続けてもう30人はやられてるんだ!こんな事なら渓谷に立て籠れば良かった…」

おじさんとのやり取りを聞いていた20歳位の男の人が割って入って来た。

「よせ、お嬢さんに当たるんじゃない。」
「折角オーガーの大群の誘導に成功したのに、こっちはレッサーデーモンの群れに遭うなんてよ…どっちがマシだったか…」
「よせと言っているだろう!」

青年に怒鳴りつけるおじさん。

…うん?オーガーを誘導?

「オーガーの群れの誘導ってどういう事ですか?」
「今のは聞かなかった事にしてくれ。」
「ダメです。私達は渓谷の避難民を救助してきました。何か知っているんですね。話してください。」

他の冒険者達も集まってくる。何か雰囲気がおかしい。武器を納める様子もなく、ゆっくりとこちらに近付いて来ている。テュケ君は私を庇う様に立ってくれた。

「ミナ様、またデーモンが来ました。今度は大物です。」

ウルちゃんは私の足元に来て教えてくれた。
…ウルちゃん、毛が黒くなってるね。

現れたのはすごく大きなデーモン、岩山と同じくらいあるね。
鑑定したらグレーターデーモンと出た。
それが3体。

「そんな…もうおしまいだ…」
「なんで俺達ばかりこんな目に…」
「きっとバチが当たったんだ…俺達だけ助かろうとしたから。」

冒険者達は戦意を無くしている。さっさと片付けてさっきの話を聞かなくちゃ。

「私がやりましょう。」

オル君が岩山から飛び降りて竜の姿に戻る。
巨大な竜の姿になったオル君が、一体を噛み砕いて、もう一体を尻尾の一撃で粉砕する。

最後の一体は私達に目掛けて魔法を撃ってきた。

「《バーストフレア》」

異世界の魔法ばかり受けていたから忘れていたけど普通の魔法はカウンターマジックリングで跳ね返る。
グレーターデーモンの目の前で大爆発が起こる。

インベントリから弓矢を取り出してオーバーブーストを付与したソニックアローで上半身を吹き飛ばした。

「さあ、話の続きをしましょうか?」
「くっ……分かった。」

オル君が犬の姿になって私のそばにやって来た。ウルちゃんも周囲を警戒している。

「まず俺はグレートアブレスの冒険者ギルドのサブマスターをやっているラギンというものだ。ここにいるのは冒険者とその家族だ。俺達は多くが避難していく渓谷とは別の方向に逃げた。」
「あちらも僅かな戦力で民を護りながらギリギリの戦いをしてきたみたいです。何故あちらに手を貸さなかったのですか?」
「それは…我々にはギルドに食料等の備蓄があって、それがあれば所属冒険者とその家族は暫く生きられると判断したからだ。一方大勢の避難民は食料の備蓄もなく、そこに加われば食料を奪われてしまうと判断したのだ。」

非常時に身内を優先して守ろうとする事を責める事は出来ない。でも冒険者なら兵士の人達と協力して戦ってほしかったと思う。これは私の勝手な思いだから言わないでおいた。

「分かりました。それで先程話していたオーガーを誘導したというのはどういう事ですか?」
「それは……」

言葉を濁すラギンさん。

「俺がやったんだ。平原方向で僅かな兵力の部隊がオーガーの群れと戦っていたけどそいつらは全滅して次は俺達に向かって来そうだった。魔物寄せの香を付けた馬を渓谷方向に走らせたんだよ。」

さっきの青年が話してくれた。話してくれたけど…

なんて事を……。

「俺達が生き残るにはそれしか無かった。他の避難民には悪いが…それしか…」

跪いて頭を抱える青年。
どう声を掛けていいか分からない。

「俺達がやった事は許される事ではない。だが頼む!助けてくれ……」
「私はあなた達を裁く権限はありませんし、見捨てる事はしません。まずは安全な所まで連れて行きます。ここにいるので全員ですか?」

ラギンさんに言われるまでもなく、私はこの人達全員を助けるつもりだ。
ただこの人達のとった行動でどれだけの犠牲者が増えたかと思うと憤りを隠せない。聞き返す口調は冷たいものになっていたかも知れない。

「ああ、これで全員だ。」
「分かりました。それでは転移しますね。《リージョナルテレポート》!」

オーバーブーストの必要はなく、一回でダンジョンの平原に移動した。
どうやら私達の組が一番最後だったらしい。

リオさんと一緒にいた老騎士が私達を見るなりすごい剣幕でやってきた。

「ラギン!この恩知らずめ!よくも抜け抜けとやって来れたな!」
「騎士アドルフ、貴方の要請を受ける事が出来なくて申し訳なかった。我々も自分達を守るので精一杯だったのだ。」

泥だらけの老騎士はラギンさんに掴み掛かる。

「やめてください。今は人間同士で争ってもしょうがないですよ。」
「お主がミナだな?救援かたじけない。…恩人に言われてはこれ以上貴様をどうこうする事はできぬ。」

アドルフさんは手を離してラギンさんをひと睨みしてから戻っていった。

つまりギルドに支援要請を出したけど断ったって事だよね。

アドルフさんと入れ替わりでレイロン殿下がやって来た。
その姿を見て跪くラギンさん。他の冒険者達もラギンさんに倣って跪く。

「ラギン、無事で何よりだ。」
「殿下、申し訳ありません!」

ラギンさんはブルブルと震えながら自分達のした事を全て話した。

「そうか…そこまでしておいて私の前に現れたという事は、覚悟が出来ているのだな?」

レイロン殿下は腰の長剣を抜くと、跪いているラギンさんの首に振り下ろす。

咄嗟に身体が動いてしまった。
オリハルコンショートソードを抜き放ち、殿下の振り下ろしに合わせて斬り上げる。

キーーンという甲高い音とともにレイロン殿下の剣を中程から斬り裂いて跳ね飛ばした。

「何をっ……」
「…他国の事に口を出すつもりは無かったのですが、ここは私の領域です。ここを血で汚すのはやめてください。それに…子供達も見ています。」

冒険者達の家族には幼い子供もいる。他の組にもだ。

「…分かった。」
「で、殿下…その剣は…」

アドルフさんが震えながら駆け寄ってくる。

「聖剣スィンブリンガーでは…?」

え…えぇ…折っちゃった…。
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