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魔王

幸運の町

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[便宜上町に名前を付けるべきです。どうしますか?]

ええと…すぐに思い浮かばないよ。アウラさん付けて?

[分かりました。それではルッカとします。幸運を意味します。]

そうなんだ…ありがとう!

殿下達にルッカを案内する。私達も初めて来たのでアウラさん任せだけどね。

建物の一つに入って機能の説明を始める。
これは、樹海の迷宮で造った隔離施設の拡張版みたいだ。水の出る蛇口、照明は魔力で自動で灯るものが付いていた。自動で補充される食糧庫。家具も食器も全て揃っていた。

「浴室は作りませんでした。その代わり共同浴場を多めに配置してあります。」

これは私以上にやらかしているよね?

「まあ…作ってしまったものは仕方ない。マスターに似てしまったんだねぇ。」

アウラさんがダメ出しされるんじゃないんだね。うん。私の所為でいいですよ。

殿下達を一通り案内して取り敢えず納得してもらった。終始目が点になっていたけど町としての機能は充分にあることは理解してくれたみたい。

「それで、ここに3千人もの民を移動させるのだな?」
「はい。他にも逃げ延びている人がいないか確認もします。」

とにかく早く3千人を避難させよう。食糧事情が厳しいと言っていたし、明日をも知れぬ不安から解放してあげたい。

渓谷に戻って騎士、兵士の皆さんにも協力してもらって転移の準備をする。
中にはもうここから動きたくないという人もいたけど、丁寧に話をして理解してもらった。

アウラさんにサポートしてもらってオーバーブースト付きの《リージョナルテレポート》の有効範囲を調べたら、一度に転移させられる事が分かった。

「それではいきます!《リージョナルテレポート》!」

町の外の何も無い平原に全員で転移した。

「町へご案内します。騎士、兵士の皆さんは自分の持ち回りの方達を案内してください。」

私達がルッカに行っている間に残ったみんなで管理し易いように班を編成してくれていた。
これには本当に助かったよ。

町の中では区画に分けて住む所の説明。区画内の住居割りについてはお任せする事に。
とはいえ騎士、兵士の方に丸投げはマズいだろうという事でアウラさんが各区画に一人ずつサポートに入ってくれる事になった。

同じ顔ばかりだと分かりにくいだろうからという事で少しずつ顔や髪型を変えたアウラさんが沢山……全て生成モンスターらしい。コアである本体は全体の管理をしてくれるそう。

その他病院とか衛兵とかも全部アウラさんをベースに作ったモンスターがやってくれている。

地上より住みやすい理想の町だね。帰りたくないという人が出そう…。

あとはアブレス国に戻ってオーバーブースト鑑定で国内の生存者を捜索。ピンポイントでそこに転移してルッカに連れてくるだけ。戦闘があるかもしれないので全員で行く事に。

「説得するのに時間が掛からない方が良いだろう。私もいくよ。」

レイロン殿下も同行してくれる事になった。

早速見つけたので転移する。そこは平原で後ろには川があった。私達は民を護りながら戦う騎士達の少し後方に現れた。アンデッドモンスターの大群に包囲されてしまっていて、その数に押されていた。

あ…ソラちゃん大丈夫かな?
そばにいたアリソンさんがしっかりと抱き留めてくれていてソラちゃんが暴走する事はなかった。

「っ!?君達は一体どこから…?」
「話は後!ミナ、支援宜しく!《ホーリネスサンシャイン》!」

騎士風の男性が驚きの声をあげるけど今は説明してる場合じゃない。

《フォルトゥナ》とオーバーブーストでリオさんを支援する。
超広範囲に眩い光が降ってきて一帯を埋め尽くしていたスケルトンやゾンビが消滅していく。

[アンデッドを使役していたリッチも消滅しました。]

リッチってマリさんのダンジョンにいたトンデモなく強いアンデッド?

[あれはカスタムされた個体です。通常世界のリッチはあれほど強くはありません。]

そうなんだね。

「あれだけいたアンデッド達が一瞬で…?」
「もう大丈夫よ。殿下、説明よろしく。」
「うむ。」

ここで保護できたのはおよそ200人。レイロン殿下が騎士達に説明をしてくれたのでスムーズに避難をする事ができた。

「戦闘状態になっている箇所が複数あります。人命優先の為に手分けして救出をしましょう。」

転移と通信が使える私、リオさん、ネネさん、ハナちゃんが分かれる事にした。3人を私のダンジョンへのアクセス権限をあたえておく。これなら直接転移ができるからね。

私のチームにはテュケ君とウルちゃんとオル君だ。

行き先については私が調べて《テレポートアザー》で他のチームを送り込む形を取った。

最後に私達が《テレポート》で移動する。

転移した先は岩山の山頂付近。複数の人が魔物の群れと戦っている。ほとんどの人が冒険者だ。魔物の方は頭に山羊の角を生やし、蝙蝠の翼の生えた真っ黒なデーモン。背丈は2メートル以上と、かなり身体が大きい。
素手の者、大きな棍棒のようなものを振り回している者、大剣で斬りかかっている者と、装備は様々だ。

今はとにかく襲われている人達を助けよう!

「みんな!お願い!」
「おう!」「「お任せください」」

テュケ君は長剣と小剣を抜いて斬り込む。ウルちゃんとオル君もすごい勢いで走っていき、近くのをデーモンに飛びついている。

「冒険者?加勢に来てくれたのか?」
「はい!皆さんを助けに来ました!」

デーモンには《ホーリネスサンシャイン》は効かないよね。
乱戦になっているから魔法を撃つのは危険だ。オーバーブーストを敏捷に付与してオーバードスピードで更に加速してオリハルコンショートソードを抜いてデーモンに斬り込んでいく。

一撃で倒せる程度だったので駆け抜けざまに次々に斬り伏せていった。
まだこちらに向かってきているデーモン達がいる。
少し距離があるので今なら魔法で片付けれそう。

「《レイブラスター》!」

ラッキーシュートで範囲を拡大して光線魔法を放つ。命中と共に膨大な熱量を受けたデーモン達はそのまま蒸発していった。

「皆さんかなり怪我をされてますね。《スターヒール》!」

オーバーブースト付きの広範囲回復魔法で全員を回復した。

「それで皆さんは冒険者みたいですけど合ってますか?」
「ああ。俺達は冒険者だ。」

剣士のおじさんが答えてくれる。

なんで殿下達と一緒にいなかったんだろう?
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