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魔王

ダンジョンコア

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サチさんとマリさんについてはこのままここにいてもらって大丈夫だけどリアードの貴族が嗅ぎ回っているらしく、警備は強化している状況だ。
ダンジョンに篭ってもいいのだけど、2人には出来るだけ自由に生活してもらいたい。

いっそのことエリストの私の家に来て貰えばいいんじゃないかな?
ダンジョンへの移動についてはどれだけ離れていてもできるみたいなので2人に提案してみた。

「それは嬉しいのだが…良いのだろうか?元々私のせいでミナはあんな風になってしまったのだぞ…。」
「私は気にしていませんよ。これからも転生者同士仲良くしてください。」

サチさんは申し訳なさそうに話すけど、あれは神様の仕組んだことで本意じゃないんだよね?

「私は…マリと平穏に暮らす事だけを考えて、君達を殺す事さえ厭わないと思っていたんだ。そんな私を許してくれるのか…?」
「許すも何も、気にしてませんから。これからは私がマリさんとの平穏をお約束しますよ。だから協力しあいましょう。」
「ミナ…本当に…本当にありがとう。」

サチさんは泣きながら深々と頭を下げている。マリさんも一緒だ。

「ほら、私の言った通りでしょ。ミナなら絶対そう言うって。」

リオさんはサチさん達にエリストに来るように言っていたらしい。サチさん達は私に謝らない内は行く訳にはいかないと断っていたとか。

そんなこと気にしなくていいのに。

マリさんのダンジョンは探索者達に優しい構造のまま階層を増やしていて共生関係にあるので、サチさんともそうありたい。

「壊れたダンジョンコアについて、一度神様に相談してみようと思うのですが。」

天啓を使って聞いてみようと説明する。

「そんな事ができるのか…」
「是非お願いします。」

エスペランサに教会はないかと思ったけど、意外と普通にあった。何となく建てた建物の中に教会っぽい造りのものがあったけど、しっかりそこを使っていた。

「教会にしてほしくてあの形にしたんじゃなかったの?」

聞けばリオさんが建物を見て教会を誘致してくれたらしい。

何となく町の景観的にあったらいいな位にしか考えてなかったんだけど…うん、結果オーライだね。

早速教会でお祈りをさせてもらって、もう慣れてしまった白い空間へ移動した。
今回は私とマリさんとサチさんは同じ空間にいるみたい。

そこにはアウレリア様と知らない男性の神様がいた。

「私はゼルト。マリを転生させた探求を司る神だ。」
「初めまして。ミナといいます。」

「ミナ、暫く目を醒さなかったのは何故ですか?」
「…分かりません。」

ディルヴェ様の言う通り、神様達ですら過去の出来事は認識出来ていないんだね。なので惚けておく事にした。

「あのギフト、《プロディギウム》と言ったかな?あれの影響かもしれない。」

ゼルト様はそう言って少し考えている。

ゼルト様もアウレリア様も《プロディギウム》なんてギフトは見た事ないらしい。

って、過去の世界で変異したギフトを見られたら色々マズいんじゃないかな?
あれ?って事はみんなに過去の世界に行った事を話したらマズかったんじゃ…?

もう既に矛盾が発生してるよね。

嘘に嘘を重ねるとドンドン自分が追い詰められていく…うぅ、どうしよう…?

「ミナ、どうしました?」
「…嘘を吐きました、ごめんなさい。」

話す事にした。

ーーーー

私は過去の世界に行ってある神様と戦った事、現代が元通りになる様にウルちゃんの攻撃を止めたり、その時に《プロディギウム》を使用した事を話した。

その後、過負荷に耐えきれずに過去の仮初の身体は消滅して、もう1人の神様に修正を加えてもらう事で現代を元通りにしてもらった事まで話したけど、2人の神様の名前は口止めされていると正直に話した。

「分かりました。神の名前については聞きません。しかし私達もアスティアの神ですから、この事については主神たる父に聞く事にしましょう。」
「ごめんなさい…ありがとうございます。」

アウレリア様は優しく微笑みながら言ってくれた。

「それで…今日来たのは、サチさんのダンジョンコアが修復できないかと思って聞きに来たんです。」
「エンゲーラの件で破壊されてしまったコアですね。ゼルトが修復してくれるそうです。」

思い切って聞いてみたらアウレリア様は微笑んだまま答えてくれる。

「私とエンゲーラは勘違いをしていた。詫びになるかは分からないがコアの修復は私がやろう。」

ゼルト様はエンゲーラ様と共謀して私を殺そうとした。エンゲーラ様は自ら人と同じ世界に降りて私達と戦い、消滅した。ゼルト様は既に私達と争う意思はなく、今後は協力をしてくれるらしい。
インベントリから壊れたコアを取り出して渡すと、早速修復を始めてくれた。

「以前の様にコアに意志があった方が良いか?」
「いえ、普通のものにしてください。」

サチさんは前のコアで懲りたらしい。
コアはすぐに修復されサチさんに渡された。
ダンジョンコアはバスケットボール位の真っ白な球体になっていた。

「ありがとうございます。」
「さて、君の能力で破損したダンジョンコアがもう一つある筈だがそれも直してみるか?」
「直せるんですか?」
「同じものだからな。直せないわけはない。直した後は別のものになるが。」

インベントリに入れておいても何にもならないのでゼルト様に渡す。
こちらもあっという間に直してしまった。

「これは君が使うといい。」

そう言ってサチさんのコアと同じ形状のものを渡された。

ええと…私にダンジョンマスターをやれと?
困っていたらアウレリア様が補足してくれる。

「ミナが好きに使って良いという事です。他のマスターの様にダンジョンを作るのも良し、そのまましまっておくのも良しです。」
「はあ…ありがとうございます。」

喜んで良いのかよく分からない。取り敢えずお礼を言ってインベントリにしまっておいた。

「マリ、君にもすまない事をした。これからはサチとミナ、他の転生者とも協力して生きていくのだ。」
「はい。ありがとうございます。」

ゼルト様はマリさんの肩に手を置きながら言っていた。その言葉は力強く、それが嘘でない事を物語っていた。

「ミナ、あなたには自由に生きてもらいたいと思っていたのですが、これからも幾多の危機に晒されることでしょう。何があっても全力で己を貫き通してください。私はあなたを見守っています。」

アウレリア様は真っ直ぐ私を見ながら言った。

「ありがとうございます。やれるだけやってみます!」

私達は神界を後にした。
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