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Chapter 1:まさか援交目的で誘った女子高生と、援助契約するとは思ってもいませんでした。

第32話 美愛ニヤァ― ACT  7

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「あんたおっぱい大きいから喜ばれたでしょ」
「えええっと、そ、そうかなぁ……。麻衣だってそれなりにあるじゃん」

「――――――それなりねぇ。まぁ、あるって言えばあるわなぁ。やっぱ男ってさぁ、おっぱいで女見定めてるところあるよね」
ああああ! わかるわぁ、それ。『可愛いね』の後に必ず視線が胸に行っているのをいつも感じていたから。

「で、ここのその家主といつもしてるんだ」
「だ、だから雄太さんとはしていないって!!」
「ふぅ―ン。雄太って言うんだ家主さん」
あっ! しまった。思わず名前だしちゃった。

「そんなにムキになんなくたって、ごく普通の事でしょ。男と女が一緒に暮らしていて何もない訳ないじゃん。血の繋がある訳でもないのに……。まっ、それでも例外はあるけどね」
「…………そ、そりゃ、ね。出会ったのは……最初は”それ”が目的だったんだけど。でも未遂だから……。ベッドで裸になって寝てたのは確かだよ。ただそれだけだったし、最後までやってないし」

なんだかあの時の事を思い出すと、無性に顔が熱くなる。

「ベッドで裸で寝てただけ? んでもって出会ったきっかけが”それ”って、美愛。あんたもしかして『援交』して知り合ったの、ここの家主さんと」
「『援交』って! 私はそんなつもりはなかったんだけど、公園のベンチに座っていたら声かけられて――――向こうは、これ後で知ったんだけど、援助交際のサイトで会う子と勘違いして声かけたって」
「んっ、公園? 援交サイト……? 間違って声掛けられたぁ? ねぇ―、美愛。それっていつくらいの話?」
マジな顔をしながら麻衣は私に近づいてきた。な、何なんだ一体!

「そ、そんな前じゃないけど、私がここに来てまだ1ヶ月もたっていないし」
「へぇー、そうなんだ。2,3週間前の事なんだぁ」
「……そ、そうね。確か……」
「で、公園ってさぁ、ここから近くのあの公園だよね」
「う、うん」
麻衣はスマホを取り出し、じっと画面を見つめ何か検索している。
そしてニまぁ―とした顔をして
「ふぅ―ン。そうか、そうなんだぁ。雄太さんて言うんだその人。ああ、なるほどね」と、独り言をぶつぶつ言い始めた。

「ちょっと麻衣どうしたの?」
「あ、いや。なんでもないよ」
なんか物凄く気になるうですけど!
「でさぁ、多分美愛が声かけられたのって、夜だったと思うんだけど。どうしてそんな時間にあんたは公園のベンチなんかに座っていたの?」
「ええッと……」やっぱり、そこに行っちゃうのね。
「ねぇどうして?」
「どうしてって」ええぃ、もういいや。全部話しちゃお!

「だ、誰か拾ってくれないかなぁって!」

「ぶっ!! 何それ? あんた家出でもしてたの。まるで猫じゃん」
「家出じゃないもん! ただ帰りたくなかっただけだもん」
「それ、家出って言うんじゃない?」
麻衣はお腹を抱えながらキャハハと笑いながら言う。

「な、何よぉ! そんなに笑わなくたって。た、確かに雄太さんからも同じこと言われたけど」
「でしょ。だよねぇ。こりゃ、傑作だぁ。なるほどそう言う事だったんだぁ。ああ、気になるなぁ、その雄太さんていう人」
「どうしてよ。どうしてそんなに気になるの?」
「うんうん、まぁいいじゃん。で、その雄太さんっていつも帰りは遅いの?」

「そ、そんなに遅くなる事はあんまりないんだけど……」ふと時計を見ると、もう6時を過ぎていた。
あっ、ヤバ。夕食の支度しないと。下準備だけでもしておかないと間に合わないよ。麻衣とつい話し込んでしまった。

「ごめん麻衣。もう夕食の支度しないといけないんだけど」
「ほぉ―、そうかそうか。いいよ、やりなよ。私の事は気にしなくたっていいからさ。あ、そうだ私も手つだおっちゃおうかな。うん、それがいいよね」
「ええ、悪いよ。そんな」
「いいよいいよ。だからさ、今晩泊めてよ。私、その雄太さんていう人に会ってみたいんだ。ねぇ、いいでしょ」
マジ!! ええっ、どうしよう。いいのかなぁ。私は別にいいんだけど。雄太さん怒らないかなぁ。

いきなりの展開ていうか、本当は麻衣の事、久しぶりに会った中学の時の同級生くらいにしか思っていなかったんだけど。まさか泊めて。なんて言われるとは思っていなかった。
でも、何で雄太さんにそんなに興味があるんだろう。
「明日も学校あるんでしょ。大丈夫なの?」
「うん、学校は大丈夫だよきっと。ま、いつもの事だからさ。あ、うちの方は心配しなくてもいいよ。どうせお母さんも今晩は遅いし……それに、私がいてもいなくても同じだから」
まただ、麻衣の瞳はどこか遠くを眺めているような感じがした。自分の事や家族の事に触れると、麻衣はそんな目をしている。

両親が離婚したって聞いたけど、それと何かやっぱり関係があるんだろ。
生活環境が大きく変わる。それは大きな負担でもあった事を、私は身をもって知っている。

だから、麻衣はそんな目をしちゃうんだろうか。

「そんでさ、今日の夕食の献立は何ですか、若奥様」
「へぇっ! 若奥様ってさぁ。だから私達そんなんじゃないって。これは私の仕事なんだから」
「そうだったね。でもさ、なんか美愛幸せそうで羨ましいよ」
「何で?」

何でそう思うの麻衣。

こんな汚れ切った私が普通の幸せを求めていていいはずがないじゃない。
私は、私の躰は汚れている。
そんな自分が今一番嫌いであり、そんな自分を見ることで私は今何とか糸が切れずに済んでいる。

「多分羨ましんだろね。好きとか愛してるとかそんなことじゃなくても、自分が今いる場所に頼れる人がいることに」


頼れる人かぁ。……確かにそうだね。


「―――――私には今はもういないけど」
「……そうなんだ」


その一言が、麻衣の口を開かせてしまった。
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