【R-18】17歳の寄り道

六楓(Clarice)

文字の大きさ
99 / 128
第15章、千晴編

【4】24歳、須賀千晴

しおりを挟む
「吉川先生、ダメですよー!須賀ちゃんにちょっかいかけるならメンバーの産休明けにしてね!1年後!」

突然、有馬さんの忠告が飛んだ。

「ちょっかいって…(笑)」

苦笑する吉川先生。
藤田先生は飲んでいた湯呑みをテーブルにごとりと置き「ふたり、お似合いなんじゃないか」と笑った。

緊張で味がしなかったのに、先生のその一言で咀嚼も止まった。

「藤田先生までやめてくださいよ、須賀さん困ってるじゃないですか」

吉川先生が、ね、と私に合図をし、私は作り笑いをする。

「あはは……困ってなんかないですよ」
「ほんと?それならよかった」

吉川先生は、塩顔で少し小柄。
でも体はガッチリしていて、幼い頃からずっと体操をしてきたらしく、優れた成績をおさめているらしい…。
他にも話をしていたけど、心ここに在らずになってしまい、聞いていない…。

お似合いって、先生に言われたくない…。

残りの親子丼を食べ終える頃に、先生たちのカツとじ定食がやってきた。

「じゃあ、お先に行きましょうか。失礼しますねー」

有馬さんについて立ち上がり、お店のおばあさんにお金をお支払いして店を出た。

「おいしかったでしょー?」
「はい、とても…」
「あはは。須賀ちゃんは意外と顔にでるのね?」

有馬さんは曇りない笑顔で笑っている。

「お、おいしかったですよ?」
「うん。また行こうねぇ」

気になる一言を残されながら、お昼からの業務が始まり、有馬さんの真意はわからないままだった。




そんな調子で毎日が過ぎ、1学期が終わろうとしていた。

備品、物品発注、修繕手配も事務室の仕事。
簡単な庶務だけと言われていたが、少しずつ業務内容が増えていく。
派遣コーディネーターから、来月から時給が上がると聞かされ、やりがいを感じ始めていた。

朝のバスで倉谷先生に遭遇した。
前はめんどくさくて、素知らぬ顔して避ける時もあったけど、大人気ないので会釈はする。

「おはよ!今日はご機嫌なの?」

普通に対応しただけでご機嫌扱いだ。

「千晴ちゃんてさー、最近吉川と仲良い?」

あれから、定食屋さんで一緒になるくらいだけど…?

「普通ですよ」
「嘘だね!あいつも、若い女子いたらすぐ飛びついて目ざといわ~」

吉川先生、散々。(私も?)

「倉谷先生は若かったら何でもいいんですか?」
「違うよ!若くてかわいい子だよ!」

2ヶ月も経つと倉谷先生のノリにも慣れてきた。
藤田先生も吉川先生も車で通勤しているので、バスで会うことはない。



もうすぐ終業式。
学生の時と違うのは、夏休みに入っても仕事は続くこと。
そしてもうすぐ、私の誕生日だ。

17歳になった日は藤田先生と過ごした。
子供扱いされながら、一緒にお昼寝した二人きりの時間。
おかげで毎年誕生日は先生のことを思い出してしまう。

「千晴ちゃん、終業式の打ち上げ来る?」
「え…」
「いいじゃん!俺幹事なの。決まり!吉川の隣には座らせないけどね!」

ピシッと指をさされた。
バスを降りたら、中等部の生徒が「彼女?」と聞いてきて、「そうなるように努力してる!」と軽く答えている。
最初はヒヤヒヤしていたけど、最近は私も呆れ笑っている。

倉谷先生の精神年齢は中学生と同じぐらいかな。
難しい年頃の子とも仲良くやっているみたいだし、そこは尊敬する。

藤田先生は、私が倉谷先生と歩いていようが、吉川先生とお昼ごはんを食べようが、何も言ってこない。
業務中には会わないし、放課後のサッカー部を見つめていても、フェンスの向こうにいる藤田先生がこっちを向く事はなかった。





「ったく………」

藤田先生の不機嫌な呟きが聞こえてくる。

その後ろでは、無邪気な高いびき……。
私はビクビクしながら助手席に乗っていた。

「誰だ、吉川に無理やり酒飲ませたやつは」

信号を睨み、歩行者を確認する藤田先生。
おっかない顔だ…。

「倉谷先生です……」
「ガキか」

ガキだと思います…。
私が怒られているような気がしてきて、しゅんと小さくなる。

吉川先生は倉谷先生より後輩。
先輩の命令は絶対だという体育会系の血に従ったのか、吉川先生は終業式後の宴会でガブガブ飲んで、酔い潰れてしまったんだけど…

「……相変わらずだな。須賀は」

深いため息に深い眉間のシワ。

「どういう意味でしょうか……」
「お前が男に言い寄られてるのがだ」

潰れる直前。
みんないる前で、吉川先生は「好きです!」と連呼し、私に抱きついて気を失ったのだ。

「まだ一杯も飲んでなかったのに…」

藤田先生は仕事を片付けて来たので、途中参加組だった。席に着いたぐらいで騒動が起きた。

「車出してもらってすいません…私が運転できれば……」
「そうだな」

手厳しい…。即答だった。

でも、先生と話すのは久しぶり。
それに、後ろの高いびきがなければ、ドライブしてるみたい。
そのぐらい喜んだって、バチ当たらないよね?

そして車は教員住宅につき、藤田先生は後部座席に横たわっている吉川先生の頬をぺちぺちと叩いた。

「意識はあるな。おい。起きろ。家だ」
「……えっ?」
「ブン殴られたくなかったら起きろ」
「は、はいっ」

脅して起こした…。
吉川先生はふらふらしながら車を降りて、藤田先生も降りた。

「私も…」と降りようとしたら、「お前はいい。足手まといだ」と制された。

足手まといってひどい。
だけど、先生が言いそうな事ではあるので、むしろ懐かしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

処理中です...