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「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした」

 手を合わせてそういうと、サオリさんは立ち上がって、ボクの食器を片付けようとする。

「あ、洗い物は、ボクがやるから、大丈夫です」
「そう?気を使わなくてもいいのよ?」
「いえ、御馳走になったので」
「……わかったわ」

 そういって彼女は、ボクが片づけをしている間に、ケトルでお湯を沸かす、それからインスタントのコーヒーを淹れて、キッチンの戸棚の中から、タッパーにはいったお菓子を取り出した。

「清司さんには秘密よ、この棚、使っていないようだったから、お菓子を入れるようにしてるの。乎雪くんも小腹がすいたら食べていいからね」

 そういたずらっぽく言われて、おもわず少し笑いながら返事をする。
 サオリさんはそれをテーブルにもっていって、一つつまんでコーヒーを飲んだ。

「……でも、安心したわ。清司さん、凛久くんにこっぴどく振られてすごく落ち込んでいたから、乎雪くんみたいないい子が恋人になってくれて、よかったわ」

 恋人ではないという所を訂正する前に、気になる事があって口を開く。

「セージが振られたんですか……?振ったんじゃなくて?」

 ……それも、こっぴどく?そんな事をされるような、セージの欠点が思い浮かばなくて思わず聞いてしまった。

「あ、えっと、きっともう大丈夫よ!凛久くんで懲りたはずだもの、乎雪くんは気にしないで」
「……そう、ですか」

 ボクの分だけの洗い物なのですぐに終わって、軽く手を拭く。

 ……懲りたってことは、セージがそのリクって元彼になんかしたのか?それにその男にセージは振られてどうやら落ち込んでいた。

 普通に次の恋人を探すのではなく、ボクを拾ったのには、なんか関係あんのか?

 なんだか、繋がっていそうで、けれど納得がいくような情報はない。

「こっちに来てお菓子を食べましょ?乎雪くん!」

 ボクが気にしていても、サオリさんはこれ以上話をする気はないようで、必死に話をそらそうとしている。

 ……また今度、本人からでも聞けばいいか。

 そう結論付けて、サオリさんのお菓子の相伴にあずかる。店で買った物だとてっきり思っていたのが、かそれも、サオリさんの手作りらしく、昼食を食べた後だというのに、いくらでも食べれる美味しさで、きっとセージの料理力はサオリさんがお母さんのお腹にいるときに、まるきり持ってきてしまったのかなと思った。



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