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そしてかつての十傑が揃う
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五時を回った頃だった。扉が開き、小学生の女の子が顔を覗かせた。
双子のもう一人だと誰もが思った。
「莉音、来たの?」
「うん、あっちは狭くて、かっちゃんとせいちゃんがマイク握ったままでうるさい」
「そっかあ。あとでよく言っておくよ」
「だからいっちゃん連れてきた」
「でかした」小早川はにっと笑った。
その時は渋谷が歌っていた。
莉音の後ろから現れた女子を見て篠塚はじめ一部の者は驚いた。
「泉月」思わず声に出したのは神々廻だった。
「私服の泉月だ。レア~」高原が嬌声をあげて近寄り、東矢泉月の手を引いて中へと誘導した。
腰のあたりまであるさらさらのストレートヘア。黒のシャツに白の薄手のカーディガン。ボトムスは薄いグレーのスキニーパンツだった。モノクロの装いは東矢泉月によく似合う。
しかしこの着こなしは見たことがないと誰もが思ったはずだ。中等部時代に東矢家を訪れたことのある者は、いかにも良家のお嬢様といったドレス風のワンピースやらロングスカート姿の彼女を目にしたものだ。
それが今、街中でよく見るようなカジュアルな格好をしている。
同じクラスの高原と神々廻が驚いて絶賛しているのだからレアな姿であることは間違いなかった。
「何か、スッゴク新鮮だな」樋笠が言った。「自分で服買うのか?」
「失礼なことを言うわね」彼女が最初に口にしたセリフがそれだった。「私だって自分が着るものくらい買うようになったわ」
「ごめん、にらまないで」樋笠はタジタジとなった。
歌を途中で止めた渋谷が東矢のもとへ寄った。「泉月、可愛いな」
確かに学校にいる時と異なり、生徒会副会長の威圧感はなく、華奢な美少女というイメージだ。渋谷が言うのも頷ける。
「皆に言っているのでしょう、軽薄ね」しかし口は間違いなく東矢だった。
「チャラいのは許してあげて」高原が笑う。
「こいつは照れるとこういう言い方になるんだ」栗原が口を挟んだ。
「俺、照れてないけど、耀太」
「何でもいいけど、これで十人揃ったな、S組十傑」
「そんなのいまだに言ってるのは大地くらいだよ」小早川は呆れたように言った。「もうそれぞれのクラスで仲間を作ってるでしょ?」
「俺はボッチだけど」篠塚はボソッと呟いた。それで高原や小原、樋笠の笑いをとった。
「今日はわざわざ来てくれたのか? 俺のために」渋谷が言う。
「どうしたらそのような勘違いができるのかしら?」
「だからそれ恭平の冗談だってば」小原が笑う。「そのまま受けとるのは泉月らしいけど」
「引っ張り出されたのよ」東矢は小早川をチラリと見た。「そのう、小早川家の双子に」
「ん、イミフ」
樋笠や栗原、そして篠塚も、男性陣が不思議そうに顔を見合わせるのに反して、女子たちは事情をわかっているようだった。
「同じマンションの住人なんだよ」小早川が言った。「私たち小早川家が引っ越した先に東矢家も越していたわけ。他にも学校関係者が何人か越してきた。通勤通学に便利な新築の高層マンションだから知っているひとが多いのよ」
「明音と泉月が同じマンションになったのか」篠塚は確認するように訊いた。
「そうよ」
「私と純香は行ったことがあるけどね」小原が言った。
「それで双子と仲が良いんだな」栗原が納得した。
「でも、どうして今日泉月と一緒に?」そういう疑問を持ったのは樋笠だけではなかったろう。
「私がバイトしているとき、親がいないと莉音と玲音のふたりだけになってしまうんだ。それで泉月のところで預かってもらっている」小早川は言いにくそうだった。
ちらりと東矢泉月の方を窺いながら小早川は説明した。
「東矢家にはとても世話になっているよ」
「私というより」東矢泉月もまた奥歯に物が挟まったような言い方だった。「兄と姉がふたごを可愛がり、小早川家の双子もなついている」
「あれ、泉月にお兄さんやお姉さん、いたっけ?」樋笠が素朴な疑問を口にした。「義理のお兄さん、お姉さん?」
「義理ではない。血を分けたきょうだいよ。私もうまく説明できないけれど」
「へ?」
「あまり家庭の事情に踏み込むのは良くないわ」制したのは前薗だった。「それより、せっかくだから泉月ちゃんも何か歌ったら? 私、あなたが歌うのを聴いてみたいわ」
「私は、歌はあまり知らないけれど」東矢は困ったような顔をした。
「じゃあ、一緒に何か歌いましょう」前薗が東矢の手を引いて行った。
双子のもう一人だと誰もが思った。
「莉音、来たの?」
「うん、あっちは狭くて、かっちゃんとせいちゃんがマイク握ったままでうるさい」
「そっかあ。あとでよく言っておくよ」
「だからいっちゃん連れてきた」
「でかした」小早川はにっと笑った。
その時は渋谷が歌っていた。
莉音の後ろから現れた女子を見て篠塚はじめ一部の者は驚いた。
「泉月」思わず声に出したのは神々廻だった。
「私服の泉月だ。レア~」高原が嬌声をあげて近寄り、東矢泉月の手を引いて中へと誘導した。
腰のあたりまであるさらさらのストレートヘア。黒のシャツに白の薄手のカーディガン。ボトムスは薄いグレーのスキニーパンツだった。モノクロの装いは東矢泉月によく似合う。
しかしこの着こなしは見たことがないと誰もが思ったはずだ。中等部時代に東矢家を訪れたことのある者は、いかにも良家のお嬢様といったドレス風のワンピースやらロングスカート姿の彼女を目にしたものだ。
それが今、街中でよく見るようなカジュアルな格好をしている。
同じクラスの高原と神々廻が驚いて絶賛しているのだからレアな姿であることは間違いなかった。
「何か、スッゴク新鮮だな」樋笠が言った。「自分で服買うのか?」
「失礼なことを言うわね」彼女が最初に口にしたセリフがそれだった。「私だって自分が着るものくらい買うようになったわ」
「ごめん、にらまないで」樋笠はタジタジとなった。
歌を途中で止めた渋谷が東矢のもとへ寄った。「泉月、可愛いな」
確かに学校にいる時と異なり、生徒会副会長の威圧感はなく、華奢な美少女というイメージだ。渋谷が言うのも頷ける。
「皆に言っているのでしょう、軽薄ね」しかし口は間違いなく東矢だった。
「チャラいのは許してあげて」高原が笑う。
「こいつは照れるとこういう言い方になるんだ」栗原が口を挟んだ。
「俺、照れてないけど、耀太」
「何でもいいけど、これで十人揃ったな、S組十傑」
「そんなのいまだに言ってるのは大地くらいだよ」小早川は呆れたように言った。「もうそれぞれのクラスで仲間を作ってるでしょ?」
「俺はボッチだけど」篠塚はボソッと呟いた。それで高原や小原、樋笠の笑いをとった。
「今日はわざわざ来てくれたのか? 俺のために」渋谷が言う。
「どうしたらそのような勘違いができるのかしら?」
「だからそれ恭平の冗談だってば」小原が笑う。「そのまま受けとるのは泉月らしいけど」
「引っ張り出されたのよ」東矢は小早川をチラリと見た。「そのう、小早川家の双子に」
「ん、イミフ」
樋笠や栗原、そして篠塚も、男性陣が不思議そうに顔を見合わせるのに反して、女子たちは事情をわかっているようだった。
「同じマンションの住人なんだよ」小早川が言った。「私たち小早川家が引っ越した先に東矢家も越していたわけ。他にも学校関係者が何人か越してきた。通勤通学に便利な新築の高層マンションだから知っているひとが多いのよ」
「明音と泉月が同じマンションになったのか」篠塚は確認するように訊いた。
「そうよ」
「私と純香は行ったことがあるけどね」小原が言った。
「それで双子と仲が良いんだな」栗原が納得した。
「でも、どうして今日泉月と一緒に?」そういう疑問を持ったのは樋笠だけではなかったろう。
「私がバイトしているとき、親がいないと莉音と玲音のふたりだけになってしまうんだ。それで泉月のところで預かってもらっている」小早川は言いにくそうだった。
ちらりと東矢泉月の方を窺いながら小早川は説明した。
「東矢家にはとても世話になっているよ」
「私というより」東矢泉月もまた奥歯に物が挟まったような言い方だった。「兄と姉がふたごを可愛がり、小早川家の双子もなついている」
「あれ、泉月にお兄さんやお姉さん、いたっけ?」樋笠が素朴な疑問を口にした。「義理のお兄さん、お姉さん?」
「義理ではない。血を分けたきょうだいよ。私もうまく説明できないけれど」
「へ?」
「あまり家庭の事情に踏み込むのは良くないわ」制したのは前薗だった。「それより、せっかくだから泉月ちゃんも何か歌ったら? 私、あなたが歌うのを聴いてみたいわ」
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「じゃあ、一緒に何か歌いましょう」前薗が東矢の手を引いて行った。
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