ジミクラ 二年C組

hakusuya

文字の大きさ
13 / 25

定例会の誘い

しおりを挟む
 六月下旬のある日、篠塚が昼休みにひとりで弁当を食べていると、栗原耀太くりはらようた樋笠大地ひがさだいちがひょっこりと姿を現した。
 もっとも、栗原は身長百九十五ほどあるからひょっこりというイメージではなく、その時教室にいた生徒たちが動きを止めるくらいインパクトがあった。
「定例会のお誘いだぜ」樋笠は大袈裟な言い方をしたが、カラオケの誘いだ。
 元S組の連中は月に一、二度かつての仲間でカラオケに行っているようで、その度に篠塚は誘われていたのだが、ここ何回かは続けて断っていたのだった。
「相変わらず、ひとりだな」栗原は遠慮なく篠塚の現状を指摘した。
 隣の席の東雲しののめ西潟にしかたの席近くで三日月みかづきらとお喋りランチを楽しんでいた。
 春先のことを考えたら東雲もクラスにすっかりとけこんでいる。口数こそ少ないが、誘われたらそのグループに身をおくことを厭わなかった。
 方や篠塚は今もひとりランチだ。昔は樋笠や栗原が絡んできて賑やかだった。しかし今のクラスには篠塚に遠慮なく絡んでくる男子生徒はいなかった。
「ボッチは気楽で良いよ」
「シノは静かに読書しているイメージだしな」栗原が言った。
「もう姫様とは交流ないのか?」樋笠が声をひそめた。姫様とは東雲のことだ。
「あちらは人気者だからね。学級委員の西潟さんが放さない」
「なるほど、なるほど」樋笠はおどけた後、訊いてきた。「で、カラオケどうする?」
 実はSNSグループの連絡で参加の呼びかけがあった際には、行かないと返事をしたのだ。その結果二人が直接顔を見に来たというわけだった。
「今回は明音あかね璃乃りのにも猛プッシュしているぜ」
「あの二人が行くのなら顔を出さないといけないかな」
「シノも女子揃えると態度変わるなあ」
「やっぱ、やめておくかな」
「冗談、冗談、顔出してよ」樋笠が揉み手をした。
 樋笠は調子が良いから信用できない、平気で土下座もできる奴だと篠塚はわかっていた。
「明音はわからないけど、璃乃は来ると思うよ」樋笠は囁くように言った。
「なんだよ、思わせ振りな言い方」
「シノはどちらかというと、璃乃とか泉月いつきみたいなクール系がタイプだと思ってさ」樋笠は、離れたところにいる東雲の方を窺いながら言った。
「君はそういう見方しかできないのか」篠塚は溜め息をついた。
「悪い」栗原が樋笠の頭を掴んでぐいっと下げた。「こいつにはよく言っておくから」
「ててて……」樋笠は頭を上げられないでいた。
「わかったよ、行くよ、樋笠のために」篠塚は笑った。
「ほれ見ろ、結局俺の為じゃん」樋笠は栗原の手から逃れ、抗議するように栗原を見上げた。
「まあ、何はともあれ、楽しみにしているよ。日時はただいま調整中」
 栗原が手を上げ、二人揃って出ていった。  
 地味なクラスは静かで、それなりに居心地は良かった。煩わしい生徒はいない。ひとりでいても目立つこともない。読書をしたりスマホをいじっている時間は安寧をもたらした。
 しかし時には刺激が欲しくなる。昔の仲間とたまにカラオケに行くくらいはちょうど良い気晴らしになるのかもしれなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、10人の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...