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定例会の誘い
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六月下旬のある日、篠塚が昼休みにひとりで弁当を食べていると、栗原耀太と樋笠大地がひょっこりと姿を現した。
もっとも、栗原は身長百九十五ほどあるからひょっこりというイメージではなく、その時教室にいた生徒たちが動きを止めるくらいインパクトがあった。
「定例会のお誘いだぜ」樋笠は大袈裟な言い方をしたが、カラオケの誘いだ。
元S組の連中は月に一、二度かつての仲間でカラオケに行っているようで、その度に篠塚は誘われていたのだが、ここ何回かは続けて断っていたのだった。
「相変わらず、ひとりだな」栗原は遠慮なく篠塚の現状を指摘した。
隣の席の東雲は西潟の席近くで三日月らとお喋りランチを楽しんでいた。
春先のことを考えたら東雲もクラスにすっかりとけこんでいる。口数こそ少ないが、誘われたらそのグループに身をおくことを厭わなかった。
方や篠塚は今もひとりランチだ。昔は樋笠や栗原が絡んできて賑やかだった。しかし今のクラスには篠塚に遠慮なく絡んでくる男子生徒はいなかった。
「ボッチは気楽で良いよ」
「シノは静かに読書しているイメージだしな」栗原が言った。
「もう姫様とは交流ないのか?」樋笠が声をひそめた。姫様とは東雲のことだ。
「あちらは人気者だからね。学級委員の西潟さんが放さない」
「なるほど、なるほど」樋笠はおどけた後、訊いてきた。「で、カラオケどうする?」
実はSNSグループの連絡で参加の呼びかけがあった際には、行かないと返事をしたのだ。その結果二人が直接顔を見に来たというわけだった。
「今回は明音や璃乃にも猛プッシュしているぜ」
「あの二人が行くのなら顔を出さないといけないかな」
「シノも女子揃えると態度変わるなあ」
「やっぱ、やめておくかな」
「冗談、冗談、顔出してよ」樋笠が揉み手をした。
樋笠は調子が良いから信用できない、平気で土下座もできる奴だと篠塚はわかっていた。
「明音はわからないけど、璃乃は来ると思うよ」樋笠は囁くように言った。
「なんだよ、思わせ振りな言い方」
「シノはどちらかというと、璃乃とか泉月みたいなクール系がタイプだと思ってさ」樋笠は、離れたところにいる東雲の方を窺いながら言った。
「君はそういう見方しかできないのか」篠塚は溜め息をついた。
「悪い」栗原が樋笠の頭を掴んでぐいっと下げた。「こいつにはよく言っておくから」
「ててて……」樋笠は頭を上げられないでいた。
「わかったよ、行くよ、樋笠のために」篠塚は笑った。
「ほれ見ろ、結局俺の為じゃん」樋笠は栗原の手から逃れ、抗議するように栗原を見上げた。
「まあ、何はともあれ、楽しみにしているよ。日時はただいま調整中」
栗原が手を上げ、二人揃って出ていった。
地味なクラスは静かで、それなりに居心地は良かった。煩わしい生徒はいない。ひとりでいても目立つこともない。読書をしたりスマホをいじっている時間は安寧をもたらした。
しかし時には刺激が欲しくなる。昔の仲間とたまにカラオケに行くくらいはちょうど良い気晴らしになるのかもしれなかった。
もっとも、栗原は身長百九十五ほどあるからひょっこりというイメージではなく、その時教室にいた生徒たちが動きを止めるくらいインパクトがあった。
「定例会のお誘いだぜ」樋笠は大袈裟な言い方をしたが、カラオケの誘いだ。
元S組の連中は月に一、二度かつての仲間でカラオケに行っているようで、その度に篠塚は誘われていたのだが、ここ何回かは続けて断っていたのだった。
「相変わらず、ひとりだな」栗原は遠慮なく篠塚の現状を指摘した。
隣の席の東雲は西潟の席近くで三日月らとお喋りランチを楽しんでいた。
春先のことを考えたら東雲もクラスにすっかりとけこんでいる。口数こそ少ないが、誘われたらそのグループに身をおくことを厭わなかった。
方や篠塚は今もひとりランチだ。昔は樋笠や栗原が絡んできて賑やかだった。しかし今のクラスには篠塚に遠慮なく絡んでくる男子生徒はいなかった。
「ボッチは気楽で良いよ」
「シノは静かに読書しているイメージだしな」栗原が言った。
「もう姫様とは交流ないのか?」樋笠が声をひそめた。姫様とは東雲のことだ。
「あちらは人気者だからね。学級委員の西潟さんが放さない」
「なるほど、なるほど」樋笠はおどけた後、訊いてきた。「で、カラオケどうする?」
実はSNSグループの連絡で参加の呼びかけがあった際には、行かないと返事をしたのだ。その結果二人が直接顔を見に来たというわけだった。
「今回は明音や璃乃にも猛プッシュしているぜ」
「あの二人が行くのなら顔を出さないといけないかな」
「シノも女子揃えると態度変わるなあ」
「やっぱ、やめておくかな」
「冗談、冗談、顔出してよ」樋笠が揉み手をした。
樋笠は調子が良いから信用できない、平気で土下座もできる奴だと篠塚はわかっていた。
「明音はわからないけど、璃乃は来ると思うよ」樋笠は囁くように言った。
「なんだよ、思わせ振りな言い方」
「シノはどちらかというと、璃乃とか泉月みたいなクール系がタイプだと思ってさ」樋笠は、離れたところにいる東雲の方を窺いながら言った。
「君はそういう見方しかできないのか」篠塚は溜め息をついた。
「悪い」栗原が樋笠の頭を掴んでぐいっと下げた。「こいつにはよく言っておくから」
「ててて……」樋笠は頭を上げられないでいた。
「わかったよ、行くよ、樋笠のために」篠塚は笑った。
「ほれ見ろ、結局俺の為じゃん」樋笠は栗原の手から逃れ、抗議するように栗原を見上げた。
「まあ、何はともあれ、楽しみにしているよ。日時はただいま調整中」
栗原が手を上げ、二人揃って出ていった。
地味なクラスは静かで、それなりに居心地は良かった。煩わしい生徒はいない。ひとりでいても目立つこともない。読書をしたりスマホをいじっている時間は安寧をもたらした。
しかし時には刺激が欲しくなる。昔の仲間とたまにカラオケに行くくらいはちょうど良い気晴らしになるのかもしれなかった。
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