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3章 7人の婚約者編

聖女

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【3章開始】

「ということで、500年前に魔王を封印した賢者さんです」
「はーい!500年前、『賢者』って呼ばれてたヨルカでーす!この娘は自動人形のシーナ!ウチのメイドだよ!」
「初めまして。シーナと申します」

 俺はヨルカさんとシーナさんを連れて冒険者協会へ向かう。

「なるほどなるほど……うん。1から説明してくれ」

 さすがに省きすぎたようで、目の前にいるソフィア会長が頭を抱えた。
 俺は頭を抱えているソフィアさんに先ほどの出来事を1から説明していく。

「つまり、ヨルカさんが『剣聖』や『聖女』の能力を500年後の誰かに引き継がせ、魔王を討伐するために約450年間眠りについた。そして若返った姿で目覚めたというわけか」
「そういうことです」

 簡単にまとめたソフィアさんの発言に頷く。
 すると神妙な面持ちでソフィアさんが口を開く。

「実はアタシもそろそろ魔王が復活するのではないかと思っていた。『剣聖』の能力を引き継いだ人を探すようにお婆様から言われた時、魔王が復活することも一緒に伝えられていたからな」

(やっぱり魔王が復活することを知っていたか)

 剣聖カインは死ぬ間際にスキルを引き継いだ者をサポートするよう、とある女性にお願いしていた。
 その女性の子孫がソフィアさんとなるため、魔王が復活することを知っていると思った。

「魔王討伐のために何か対策とかしてますか?」

 俺の問いかけにソフィアさんは首を横に振る。

「全く進んでいないと言っていいだろう。一つの国を除いて魔王が復活すると思っていないからな。まぁ、復活することを知ってる王都も冒険者を育てることに力を入れてるだけだが」

 その返答に俺は納得する。
 俺だってカインの記憶とヨルカさんの話がなければ復活するなんて信じられないからだ。

「じゃあ対策というのは冒険者学校で強い冒険者を育てることくらいですか?」
「そうだ」

 詳しく聞くと、昔、魔王が復活することを聞いたソフィアさんの祖先は魔王討伐のため、他国に協力を要請した。
 しかし一つの国しか要請に応じてくれなかったため、当時の国王陛下と協力して冒険者学校を作った。
 今ではどの国にも存在する冒険者学校だが、当初は王都と要請に応じてくれた一国しか冒険者学校がなかったらしい。

「魔王復活が近づく中、アタシは魔王討伐のために女王陛下の協力を得ながら【鑑定】スキルのレベル上げに勤しんだ。理由は『剣聖』の能力を引き継いでいるカミトくんと、『聖女』の能力を引き継いでいる彼女のスキルを確認するためだ。魔王討伐には絶対に『剣聖』と『聖女』の力が必要になるからな」

 ソフィアさんは【鑑定】スキルを持っており、俺の【@&\#%】が【剣聖】スキルであることを看破していた。
 しかし、【@&\#%】がどうやって【剣聖】スキルになるかまでは鑑定することができず、【鑑定】スキルのレベル上げに努めていたとのこと。
 たまたま俺は自力で【@&\#%】を【剣聖】スキルへと変えることができたが、本来ならソフィアさんの鑑定結果を頼りに【剣聖】スキルへと変える予定だった。

「ソフィアさんやソフィアさんの祖先が今まで魔王討伐に向けて動いていることは理解しました。それで気になったのですが、『聖女』の能力を引き継いでる人に心当たりがあるんですか?」

 先ほどソフィアさんは「『聖女』の能力を引き継いでいる彼女のスキルを確認するため」と言った。
 つまり、俺と同じように文字化けして『聖女』の能力を発揮できていない人に心当たりがあるということだ。

「あぁ。カミトくんの鑑定とともに彼女の鑑定も定期的に行っていた。そしてその度にアタシは彼女にアドバイスをしていた。カインの能力を引き継いだ人を探す過程でたまたま見つけたんだけどな」
「その人ってセリアさんと一緒にパーティーを組んでるソラさんですか?」
「お、よく分かったな。このことは女王陛下しか知らないはずだぞ」
「ヨルカさんから教えてもらいました。俺が気づいたわけではありません」

 どうやら俺の知ってるソラさんが『聖女』の能力を引き継いでいるらしい。

(ってことは、ソラさんが俺の婚約者の1人かぁ。どうやってソラさんが婚約者になったのか、すごく気になるんだけど)

 今の関係からどのようにソラさんが婚約者になるのか理解できないため、過程がすごく気になる。
 そんなことを思っていると、ヨルカさんが話しかけてきた。

「カミトくんの知ってる娘が『聖女』の力を引き継いでるってことでいいの?」
「はい。そうらしいです」
「やはりカミトくんを待ってて正解だったね」

 自分の考えが当たり、嬉しそうな顔をするヨルカさん。

「なら今からソラさんに会って『聖女』の能力について尋ねないといけませんね。ちなみにソラさんは完璧に『聖女』の力を引き継いでいるんですか?」
「まだ完璧とは言えないな。おそらく『聖女』の力を半分も使いきれていないだろう」

(半分も使いきれていない状況でランクAのモンスターと1人で戦え、重症の俺を完璧に回復させることができるのか)

 ソラさんが完全な【聖女】スキルを得たら化け物になる気配しかしない。

「ねぇ。さっきから気になってたんだけど、もしかして『聖女』スキルって不完全な形で引き継がれてる?」

 俺とソフィアさんの会話を聞き、ヨルカさんが聞いてくる。

「俺の【剣聖】スキルも不完全な形でしたので、ソラさんの【聖女】スキルも不完全な可能性はありますよ」
「カミトくんの【剣聖】スキルも不完全だったんだ。じゃあ、『聖女』の引き継ぎも失敗してたってことかぁ」
「仕方ありませんよ。500年後の誰かに引き継がせるなんて普通はできませんから」
「うぅ~、やってしまった……」

 ヨルカさんが見るからに凹んでいる。
 魔女の帽子を被り、ぶかぶかのコートを着ている小さな女の子が凹んでいる姿をあまり見たくないので、俺はヨルカさんを励ます。

「き、気分転換に美味しい物でも食べますか?俺、【剣聖】スキルを引き継がせてくれたヨルカさんには感謝してますから」
「ほんと!?ならさっき来る途中にあった“どーなつ”って食べ物が食べたい!」
「私も“どーなつ”という食べ物が食べたいです」

 一瞬で元気になったヨルカさんだけでなく、近くにいたシーナさんも賛同する。

「ははっ、分かりました。では、俺たちはソラさんに会ってきます。俺とヨルカさんがいれば【聖女】スキルの覚醒もできると思いますので」
「あぁ。頼んだぞ」

 俺は嬉々として部屋を出るヨルカさんとシーナさんの後に続き、部屋を出た。
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