上 下
68 / 117
3章 7人の婚約者編

ヨルカの想い

しおりを挟む
 俺はヨルカさんとシーナさんを連れてソラさんを探す。
 まずは冒険者協会にいるルーリエさんにソラさんの居場所を聞くため、冒険者協会へ向かう。
 冒険者協会に到着し中へ入ると、ルーリエさんとメルさんが談笑していた。

「ルーリエさん、メルさん!」
「あ、こんにちは!カミトさん!」
「どうしたの?慌ててるようだけど」

 俺の呼びかけに2人は会話を中断して振り向いてくれる。

「ソラさんの居場所って分かりますか?」
「ソラさんですか?ソラさんなら買い物に行くと言ってましたよ」
「さっきまで私たちと話してたから遠くには行ってないと思うわ」
「ありがとうございます」

 俺はルーリエさんとメルさんに感謝を伝え、離れたところで待っていたヨルカさんとシーナさんに話しかける。

「ヨルカさーん!ソラさんは買い物に行ったらしいです!」
「ならウチらも買い物に行くよ!」
「急いでください。お腹が空いて死にそうです」
「シーナさんは自動人形だからお腹なんて空かないだろ……」

 そんなことを呟きつつ、ヨルカさんたちのもとへ歩き出そうとすると…

「ちょっと待ってください」
「ちょっと待ちなさい」

 ルーリエさんとメルさんが俺の肩を“ガシっ”と掴む。

「な、なんでしょうか?」

 ものすごい力で動きを止められ、俺は2人の方を振り向く。

「どちら様ですか?あの2人は?」
「やけに親しそうね。また可愛い女の子を口説き落としたの?」

 2人から目に見えない謎のオーラを感じる。
 正直に答えないと殺される雰囲気を。

「ま、またってなんですか。た、確かに可愛いですが口説き落としてませんよ」
「ふーん」
「カミトさんって意図せずに口説き落とす天才ですからね。知らないうちに口説き落としている可能性はあります」
「そうね。リーシャたちの件もあるからね」
「うっ!」

 ジト目で2人から見られる。

「じゃ、じゃあ、俺はソラさんに会ってくるから!」
「あ、ちょっと!」
「カミトさん!まだ話は終わってませんよ!」

 そんなことを後ろの方で言っていたが、スルーしてヨルカさんのもとへ向かい、ヨルカさんとシーナさんを連れて冒険者協会を出た。



「んー!この“どーなつ”という食べ物、とても美味しいよ!」
「はい。とても美味しいです」

 俺はソラさんを探しながら2人にドーナツを奢る。

(シーナさんって味覚あるのか?自動人形だからないと思ったけど……まぁ、その辺りは気にしないでおこう)

 美味しそうに食べるシーナさんを横目に、俺はソラさんを探す。
 すると、遠くのベンチに腰掛けて俯く元気のないソラさんを発見した。

「おーい、ソラさ……」
「しーっ!」

 俺が遠くで座っているソラさんを大声で呼ぼうとすると、ヨルカさんに口を塞がれる。
 そして、ヨルカさんが耳に手を当てて「ふむふむ」と言っている。

「どうしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ。ごめんね、引き留めて」

 そう言って俺の口から手を放すヨルカさん。

「……?」

 俺はヨルカさんの行動に首を傾げつつも、ソラさんのもとへ向かった。



~ヨルカ視点~

 時は少しだけ遡り、ウチは表情の暗いソラさんがベンチに腰掛け、何かを呟いている様子を見て、カミトくんを止める。
 そして、感覚過敏の魔法を使い、ソラさんの独り言に耳を傾ける。

「はぁ。カミトくん、2人の王女様から告白されたって。しかもセリアさんやメルさん、ルーリエさんもカミトくんのこと好きみたいだし。カミトくんはたくさんお嫁さんをもらえるけど、みんなよりも胸が小さくて可愛くない私なんて絶対もらってくれないよ……」
「ふむふむ」

 ソラさんとカミトくんの関係を知りたかったが、王女様2人がカミトくんに告白しており、ソラさんとルーリエさん、セリアさん、メルさんの4人が好きだけど告白してないという現状を把握する。

「どうしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ。ごめんね、引き留めて」
「……?」

 カミトくんが首を傾げながらソラさんのもとへ向かう。

「ウチが目覚めたことで、カミトくんが7人の女の子と婚約できないといった状況は避けたいからね」

 カミトくんが7人の女の子と婚約した世界にウチはいない。
 そのため、ウチのせいでカミトくんが7人の女の子と婚約できない可能性もある。

「そんな未来にしたらダメだよ」

 ウチは一言だけ呟き、とある記憶を思い出す。
 それは未来視で見たカミトくんと7人の婚約者が魔王と戦っていた場面。



『ごめん……ね。私、ここまでかも。だから最後に一言。こんな私と婚約してくれてありがと。私、とても嬉しかったんだ。大好き……だよ。カミトくん』
『カ、カミト様を好きになって良かった……ですわ……はぁはぁ……わ、わたくし、カミト様と過ごす時間が一番幸せでした……愛してますわ、カミト……さま』

 最後まで戦っていた婚約者2人がカミトくんの腕の中で力尽きる。
 その周囲には、残り5人の婚約者が息絶えていた。

『~~っ!俺もみんなのことが大好きだよ。みんなと出会えて幸せだった』

 カミトくんが亡くなった2人を抱きしめ、涙を流しながら7人に言う。
 しかし誰も返事をしてくれない。

『何をぶつぶつ言ってるかは知らんが、これでお前の婚約者は全員死んだ。お前の目の前でな』
『っ!魔王ぉぉぉぉ!!!!』



 ウチはそこで思い出すことをやめる。

(カミトくんを含め、カミトくんの婚約者たちは全員、カミトくんとの婚約を喜んでいた。みんな愛し合っていた。そんな未来をウチが目覚めたことで無かったことにしてはいけない)

 そのためウチは密かに1つ目標を決めていた。

(絶対、カミトくんには未来視で見た7人の女の子と婚約してもらう!そしてみんなで魔王を倒す!)

 ウチは秘めた想いを胸に、カミトくんの後を追った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

クラスごと異世界に召喚されたんだけど別ルートで転移した俺は気の合う女子たちととある目的のために冒険者生活 勇者が困っていようが助けてやらない

枕崎 削節
ファンタジー
安西タクミ18歳、事情があって他の生徒よりも2年遅れで某高校の1学年に学期の途中で編入することになった。ところが編入初日に一歩教室に足を踏み入れた途端に部屋全体が白い光に包まれる。 「おい、このクソ神! 日本に戻ってきて2週間しか経ってないのにまた召喚かよ! いくらんでも人使いが荒すぎるぞ!」 とまあ文句を言ってみたものの、彼は否応なく異世界に飛ばされる。だがその途中でタクミだけが見慣れた神様のいる場所に途中下車して今回の召喚の目的を知る。実は過去2回の異世界召喚はあくまでもタクミを鍛えるための修行の一環であって、実は3度目の今回こそが本来彼が果たすべき使命だった。 単なる召喚と思いきや、その裏には宇宙規模の侵略が潜んでおり、タクミは地球の未来を守るために3度目の異世界行きを余儀なくされる。 自己紹介もしないうちに召喚された彼と行動を共にしてくれるクラスメートはいるのだろうか? そして本当に地球の運命なんて大そうなモノが彼の肩に懸かっているという重圧を撥ね退けて使命を果たせるのか? 剣と魔法が何よりも物を言う世界で地球と銀河の運命を賭けた一大叙事詩がここからスタートする。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

七星点灯
ファンタジー
俺は屋上から飛び降りた。いつからか始まった、凄惨たるイジメの被害者だったから。 天国でゆっくり休もう。そう思って飛び降りたのだが── 俺は赤子に転生した。そしてとあるお爺さんに拾われるのだった。 ──数年後 自由に動けるようになった俺に対して、お爺さんは『指導』を行うようになる。 それは過酷で、辛くて、もしかしたらイジメられていた頃の方が楽だったかもと思ってしまうくらい。 だけど、俺は強くなりたかった。 イジメられて、それに負けて自殺した自分を変えたかった。 だから死にたくなっても踏ん張った。 俺は次第に、拾ってくれたおじいさんのことを『師匠』と呼ぶようになり、厳しい指導にも喰らいつけるようになってゆく。 ドラゴンとの戦いや、クロコダイルとの戦いは日常茶飯事だった。 ──更に数年後 師匠は死んだ。寿命だった。 結局俺は、師匠が生きているうちに、師匠に勝つことができなかった。 師匠は最後に、こんな言葉を遺した。 「──外の世界には、ワシより強い奴がうじゃうじゃいる。どれ、ワシが居なくなっても、お前はまだまだ強くなれるぞ」 俺はまだ、強くなれる! 外の世界には、師匠よりも強い人がうじゃうじゃいる! ──俺はその言葉を聞いて、外の世界へ出る決意を固めた。 だけど、この時の俺は知らなかった。 まさか師匠が、『かつて最強と呼ばれた冒険者』だったなんて。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...