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好きになる時はなるんだよ
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みなさん、こんにちは。一ノ瀬蒼12歳、ホモです…。
え?今回は、「前振り」から始めないのかって?ちょ、ちょっと緊張してるんだ。何せ、満を持して登場した「ラスボス」とのご対面だからね。だから今回は、状況の整理から始めたいと思うよ。
まず雪兎は、寒さが限界そうなので地元の甘味所で待っててもらう事になりました。お汁粉と温かいお茶でもすすって、活力を取り戻す事でしょう。だから今は、母親と二人で柏崎の海岸を歩いています。
その母親についても、少々補足の説明をしておきましょうか。改めて、たびたび話題には出ておりました母親・一ノ瀬美登里さんです。名字は間もなく、旧姓に戻る事でしょう。年齢?永遠の17歳って事で、ひとつ。実際、色々と苦労した事をカケラにも思わせない若々しい外見ですよ。
由香里姉ちゃんが亡くなって。W不倫が発覚して、世間らは後ろ指をさされて。しかも、親父があんなんで。メンタルやられそうになって、新潟の実家に避難してたんだ。その実家にしても、もともと両親から…。つまりおれの、母方の祖父母ね。結婚を反対されてたんで、あんまり居心地は良くないみたい。おれも、こっちの祖父母には挨拶せずに帰るつもりだよ。
心身ともに回復してきたので、毎日この時間帯に海辺を散歩してるとは聞いていた。突然押しかけてこわなにバッチリのタイミングで会えるとは、思ってなかったけどね。これも、日頃の行いがいいからと…。後はやっぱり、運命とかの巡り合わせかな。
「あお君、あなた学校は?いま平日で、授業の時間帯でしょう。…なんて、偉そうな事は言えないわね。私のために、あなたまで周りの人間からとやかく言われた事でしょう」
「まぁね。はるばる群馬まで、W不倫の噂が轟いてた時には驚いた。東京の学校やサッカーチームでも、色々言ってくる奴はいたけどさ。言いたい奴には、言わせとけばいいって話。おれも最初の頃は、不倫ってどうなのとか思ってたけど…。好きになるって、そう言うもんだよな。周りの眼とか迷惑とか、そんなん関係なく好きになる時はなるんだよ」
「あお君、あなた変わったわね。強くなったし…何だか、雰囲気がとても優しくなった。当ててみましょうか。ズバリあなたも、恋をしたでしょう。そしてその相手は、先ほどまで一緒にいた男の子でしょう…?」
「分かっちゃう?参ったね」
「そりゃあなたの、この世で一人の母親ですからね。あなたを取り巻く環境は、これから厳しくなるでしょうけど…。私もあまり、人の事は言えない。思えば、あお君には随分キツい事を言って当たってきたよね。ごめんなさい」
「お互い様ってやつ。親父があんな唐変木で、当たるほどの甲斐性も無かっただろうからさ。おれも、本気で言われてたとは思ってない。だけど『お姉ちゃんと比べて、何でそんなに健康なの?』ってのはさ。知らねぇよ。健康なんだから、仕方ないじゃん」
「そうよね。重ねて、本当にごめんなさい。ねぇ…そろそろ離婚が成立して、新しい人と一緒になるでしょう?私とお父さんのどちらに付いていくか、あお君の意見を尊重したい。だけど、もし私たちを選ぶのなら…。あなたの夢を、サッカーの夢を最大限応援したいと思うの。もちろん、たくさんお金がかかるって事は重々承知してる」
「母さんと、一緒にかぁ。悪くねぇな。でもそしたら、おれの名字も母さんの旧姓になるから…。青木蒼?やだなぁ。めっちゃ、アオアオで被るやん」
「そうだけど…。あなたそれで、本当にいいの?名字がどうとかじゃなくて、あなたが本当に幸せになれる道を選んでほしいの」
本当の幸せ、かぁ。もちろん、考えてるよ。母さんに付いていった方が、「楽しく」はあるんだろうな。新しいお父さんと、新しい妹(向こうの連れ子が、年下の女の子らしいんだ)と一緒になってさ。家族四人、何となく由香里姉ちゃんが生き返ったような気になって…。忙しくも、楽しい新生活を送れるんだと思う。
だけど、そんなのはただの幻…。絵空事だよ。おれはおれで、言われなくても「本当の幸せ」を探してやる。おれの夢を実現するには、確かにとてつもない金がかかるんだ。そのためには、少しでも可能性の高い道を選ぶべきだ。
それに新しい家族との触れ合いは、何となく未練って言うか…。足枷に、なってしまいそうな気がする。今更だけど、トオイが父親を選んだ理由も多分似たようなものじゃないかな。
ずっと前から、心の内で決めていた事だ。その決意はこうしてはるばる母さんに会いに来ても、やっぱり変わる事はなかった。
「あぁ。でも、そう言や…。母さんが再婚すれば、おれの名字も新しいご主人のものになるのか。参考までに、お相手の名字は何て言うの?」
「鼻の毛と書いて、鼻毛さん。全国でも数十人しかいない、珍しい名字よ」
「おれ、やっぱり今の親父に付いていくよ。そして、本格的にサッカーの夢を追いかけるんだ」
え?今回は、「前振り」から始めないのかって?ちょ、ちょっと緊張してるんだ。何せ、満を持して登場した「ラスボス」とのご対面だからね。だから今回は、状況の整理から始めたいと思うよ。
まず雪兎は、寒さが限界そうなので地元の甘味所で待っててもらう事になりました。お汁粉と温かいお茶でもすすって、活力を取り戻す事でしょう。だから今は、母親と二人で柏崎の海岸を歩いています。
その母親についても、少々補足の説明をしておきましょうか。改めて、たびたび話題には出ておりました母親・一ノ瀬美登里さんです。名字は間もなく、旧姓に戻る事でしょう。年齢?永遠の17歳って事で、ひとつ。実際、色々と苦労した事をカケラにも思わせない若々しい外見ですよ。
由香里姉ちゃんが亡くなって。W不倫が発覚して、世間らは後ろ指をさされて。しかも、親父があんなんで。メンタルやられそうになって、新潟の実家に避難してたんだ。その実家にしても、もともと両親から…。つまりおれの、母方の祖父母ね。結婚を反対されてたんで、あんまり居心地は良くないみたい。おれも、こっちの祖父母には挨拶せずに帰るつもりだよ。
心身ともに回復してきたので、毎日この時間帯に海辺を散歩してるとは聞いていた。突然押しかけてこわなにバッチリのタイミングで会えるとは、思ってなかったけどね。これも、日頃の行いがいいからと…。後はやっぱり、運命とかの巡り合わせかな。
「あお君、あなた学校は?いま平日で、授業の時間帯でしょう。…なんて、偉そうな事は言えないわね。私のために、あなたまで周りの人間からとやかく言われた事でしょう」
「まぁね。はるばる群馬まで、W不倫の噂が轟いてた時には驚いた。東京の学校やサッカーチームでも、色々言ってくる奴はいたけどさ。言いたい奴には、言わせとけばいいって話。おれも最初の頃は、不倫ってどうなのとか思ってたけど…。好きになるって、そう言うもんだよな。周りの眼とか迷惑とか、そんなん関係なく好きになる時はなるんだよ」
「あお君、あなた変わったわね。強くなったし…何だか、雰囲気がとても優しくなった。当ててみましょうか。ズバリあなたも、恋をしたでしょう。そしてその相手は、先ほどまで一緒にいた男の子でしょう…?」
「分かっちゃう?参ったね」
「そりゃあなたの、この世で一人の母親ですからね。あなたを取り巻く環境は、これから厳しくなるでしょうけど…。私もあまり、人の事は言えない。思えば、あお君には随分キツい事を言って当たってきたよね。ごめんなさい」
「お互い様ってやつ。親父があんな唐変木で、当たるほどの甲斐性も無かっただろうからさ。おれも、本気で言われてたとは思ってない。だけど『お姉ちゃんと比べて、何でそんなに健康なの?』ってのはさ。知らねぇよ。健康なんだから、仕方ないじゃん」
「そうよね。重ねて、本当にごめんなさい。ねぇ…そろそろ離婚が成立して、新しい人と一緒になるでしょう?私とお父さんのどちらに付いていくか、あお君の意見を尊重したい。だけど、もし私たちを選ぶのなら…。あなたの夢を、サッカーの夢を最大限応援したいと思うの。もちろん、たくさんお金がかかるって事は重々承知してる」
「母さんと、一緒にかぁ。悪くねぇな。でもそしたら、おれの名字も母さんの旧姓になるから…。青木蒼?やだなぁ。めっちゃ、アオアオで被るやん」
「そうだけど…。あなたそれで、本当にいいの?名字がどうとかじゃなくて、あなたが本当に幸せになれる道を選んでほしいの」
本当の幸せ、かぁ。もちろん、考えてるよ。母さんに付いていった方が、「楽しく」はあるんだろうな。新しいお父さんと、新しい妹(向こうの連れ子が、年下の女の子らしいんだ)と一緒になってさ。家族四人、何となく由香里姉ちゃんが生き返ったような気になって…。忙しくも、楽しい新生活を送れるんだと思う。
だけど、そんなのはただの幻…。絵空事だよ。おれはおれで、言われなくても「本当の幸せ」を探してやる。おれの夢を実現するには、確かにとてつもない金がかかるんだ。そのためには、少しでも可能性の高い道を選ぶべきだ。
それに新しい家族との触れ合いは、何となく未練って言うか…。足枷に、なってしまいそうな気がする。今更だけど、トオイが父親を選んだ理由も多分似たようなものじゃないかな。
ずっと前から、心の内で決めていた事だ。その決意はこうしてはるばる母さんに会いに来ても、やっぱり変わる事はなかった。
「あぁ。でも、そう言や…。母さんが再婚すれば、おれの名字も新しいご主人のものになるのか。参考までに、お相手の名字は何て言うの?」
「鼻の毛と書いて、鼻毛さん。全国でも数十人しかいない、珍しい名字よ」
「おれ、やっぱり今の親父に付いていくよ。そして、本格的にサッカーの夢を追いかけるんだ」
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