転校してきた褐色のオレ様イケメンに、何でか溺愛されています

あきら

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惚れてまうやろー!

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 みなさん、こんにちは。伊勢嶋雪兎16歳ホモです。今日は土曜日だけど、うち私学だから午前中は授業だったんですよね。すでに学校は終わったので、近所の日本庭園にやって参りました。

 天気予報では快晴だったのに、午後からはまさかの雨が降ってきました。せいぜい小雨程度の降りですが、ぶっちゃけ雨は苦手。頭は痛むし、体調は不安定になるし。だけど、昔から何でか雨が降るとこの庭園にやって来ちゃうんですよ。
 …っとその前に、ちょっと俺の自己紹介をしておきましょうか。どっかのオレ様キャラな転校生に流されて、今までゆっくり語る暇もありませんでしたからね。
 まずは、すでに述べた通り群馬県は高崎市出身にて在住。男ばかり四人兄弟の、末っ子です。実家は、この辺では知らない者はいない個人病院で…。ってこの辺りの紹介、かれこれ9~10回は行ってるような?気のせいですよね。
 生まれついてのホモで、幼少の頃に「クラスの○○くんが好き」と告白して親戚中の時を凍りつかせたとか。あの頃は、マセていたんだなぁ。その後BLという名の聖典にめぐり逢い、数々のカップリングに妄想を膨らませていましたが…。未だに、好きだとか恋だとかってよく分かりません。自分自身に、結びつける事が出来ないって言うか。
 アロマンティック?そんな、大層なもんじゃないと思います。だけど、何だか自分の中に一つの区切りのような物があって…。それにケリをつけない限り、自分自身の恋が始まらない気がする。この庭園に入り浸っているのは、何かそのためのヒントを見つけるため…?
 庭園のあずま屋の椅子に腰を落ち着けて、考えるともなしに考えをめぐらしました。自転車は、庭園内の駐輪場に置いています。雨に備えて、折りたたみ傘くらいは常備していますが…。傘をさしながら乗るのって、今は禁止されてるんですよね。おさわりまん…じゃなくて、おまわりさんに呼び止められてもつまらない話だし。もう少し雨が強くなったら、母さんに車で迎えに来てもらおうかな。
 恋かぁ。結局、小中学校ともに誰を好きになる事もなければ誰かと付き合う事もなかったんだよなぁ。だけど、本当にそうだっけ…?いつもこの辺りで、頭がボゥとなって何も思い出せなくなる。俺ってあの頃、何を考えて何をして誰に想いを巡らせていたっけ…?
 一ノ瀬蒼?何であいつの事が、いま脳内に浮かんだんだろう。こないだ会った彼の事は、関係ないじゃん。だけど、あんな風に俺を見つめてきた奴は初めて…。ついでに言うならあんな風にされたのも、八重歯舐められたのもね。そんな簡単に心動かされるほど、俺は安いホモじやない…つもりだけど。
 何で彼の事を考えると、こんなに胸が騒ぐんだろう。心が乱されて、自分が自分でなくなるような気がする。それに何でか知らないけど、気を抜けば涙が流れてそのまま止まらなくなりそうなんだ。アカンわ。我ながら、どうにも不安定だな。
 ってか、「乱されて」で気づいたけど…。あずま屋の外、えらい事になってない?雨が、勢いを増してきた…レベルの話じゃなくて。これ雨って言うかむしろ、氷の塊が降ってる?あら~、雪降ってるじゃな~い。道理で、寒いと思ったわ~。四月になって、そこそこ日も過ぎたと言うのにねぇ。じゃなくて、これは…。

 雹だー(※「アリだー!」っぽく)!

 ど、どうすんだこれ。一応あずま屋の屋根に守られてはいるんだけど、頭上で激しくボコボコ言ってていつ突き破ってくるものか不安で仕方ない。ってかすでに、ちょっと横殴り気味に身体に当たりそうになってきた。慌てて、隅っこの方で身をすくめる。
 これ、マジでどうすんの?母さんに迎えに来てもらうとしても、その母さんの身が危ないって話。車の屋根なんか、平気で突き破ってきそうな勢いだしね、うぅ。伊勢嶋雪兎16歳(ホモ)、ここで人生一環の終わりなのか?死ぬ前に、部屋に隠してる山ほどのBL本とゲイDVDを始末しないと…。あぁそれと、PCに保存してるこっ恥ずかしいBL小説の草稿と…。
 いやいや人生まだまだこれからなんだから、こんな所で死にたくないよ!助けて…。そこまで、考えた時だった。降りしきる雹の中、駆けつけてくる一つの影があった。賢明なる読者様なら、もう検討はついているかな。
 「あお君!?…じゃなくて、一ノ瀬くん?どうして、こんな所まで」
 たまたま日本庭園を歩いていて、避難しに来たと言った格好ではない。ってか避難するなら、他に入りやすい施設が山ほどあるしね。これは、考えるまでもなく…。俺の事を、助けに来てくれた!?よく見れば、そこら辺のコンビニで慌てて買ったと思われるビニール傘を携えている。この荒れ狂う雹の中、屁の突っ張りにもなっちゃいないんだけど。
 「雪兎、大丈夫か!?すまねぇ、遅くなったぜ。姉ちゃんから、雪兎がピンチだって聞いて…。慌てて、駆け付けたんだけどな。いやそもそも朝の時点で、今日は天気が荒れるって言ってたんだけど。まさか、ここまでとは…」
 などと、またもや良く分からん事を言い出した。姉ちゃんが云々はもはやどうでもいいとして、何で…。何で、そっちが謝るの?俺の事、助けに来てくれたんでしょう!?そんな、雹に打たれて服も身体もボロボロの姿になって。そんな事、そんな事をされたら…。

 惚れてまうやろー!

 「じゃ、なくて…。こ、これからどうするの一ノ瀬くん?来てくれたのは嬉しいけど、このままじゃ二人とも身動きが取れない…」
 「安心しろ、雪兎。そろそろ雹の勢いが弱くなるって、姉ちゃんが言ってたぜ。だけど一時的なもんだから、その機に応じてあずま屋を抜け出すんだ。そして…」
 「そして?」
 「こんな事もあろうかと、すぐ近くのラブホを一室取ってるぜ!そこで、一発…じゃなくて一泊するんだよ。なぁに、フロント無人の所だから男同士でも気にすんな」
 「アイエエエ!?ラブホ!?ラブホナンデ!?」

 ってな訳で、次回はお楽しみのラブホ回です…。
 字数が嵩んできたんで、一旦ここでページをまたぎますね。
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