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ついムラっとして、ヤっちゃった

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 ひらはんほんはんは…。失礼、みなさんこんばんは。伊勢嶋雪兎16歳、ホモです。今ちょっと、取り込み中で忙しいんですよ。え?何をするのに、忙しいかって?やだなぁ。そんなの、決まってるじゃないですか。

 今日初めて会ったばかりの転校生に、廊下で壁ドンされつつ身体を拘束されて唇を奪われそのまま舌までブチ込まれるのにです…。って、そうはならんやろって?今現在、実際にそうなっとるやろがい!
 こ、こんな所でよく知りもしない奴からファーストキスを奪われるなんて…。あれ?でも、俺って今までキスの経験なかったっけ?何だか、小中学校通してアホみたいにキスしてたような気もするけど…。いやさ、そんなのはまやかしの記憶だ。ウソ・大げさ・紛らわしいんだよ!
 大体、何が「健全な高校生活を垂れ流していく予定☆」だよ。年齢制限が設定されていた時点で、分かっておったのにのうワグナス!伊勢嶋雪兎16歳ホモ、これはしくじったわ…。
 あ。ってかまだ、こうなった経緯を説明してなかったっけ。「独白」担当として、むしろそっちの方がしくじったのかな。ごめんなさいね。まだ物語の主人公になって、日が浅いもので。えぇと。例の転校生・一ノ瀬くんが、学校の施設を案内して欲しいとか言ってきたんですよ。
 そんなもん、俺だって入学して間もないから詳しくないって断ったんですけど…。なにぶん、あの通りのオレ様キャラでオラオラ系なんで強引に押されるままホイホイと…。決して、顔面の良さにほだされたとかそんかんじゃありませんよ。
 そんで夕焼けが照らす放課後の校舎内を案内してたら、廊下で突然壁ドンされて今に至る訳ですね。え?改めて、そうはならんやろって?ですよねー。俺自身も、そうはならんと思います…。
 「んっ…ふっ…。うぅ…」
 しっかしこの人、キス上手いなぁ。言ったように俺は初めてなので、上手いとか下手とかよく分かりませんけど。さぞかしオーストラリアで、男女問わずに四六時中キスしてらっしゃったんでしょうけど。あぁ、留学ってそう言う…?
 ちなみに体育会系なのでガサツかと思いきや、意外と唇のケアはちゃんと行ってました。そこら辺は、ちょっとだけ好感が持てる。後で機会があれば、どのメーカーのリップクリームを使ってるかでも聞いてやろうかい…。なんて、呑気に考えてる状況じゃないんだけど。
 何せ抵抗しようにも、文字通り大人と子供と言っていいほどの体格差。向こうは筋力もあるので、ちょっとやそっと押し返した程度でビクともしません。むしろ、向こうにその様子を楽しまれているフシがある。これじゃ、どうにも仕方ないなぁ。そう思って、ただただ舌で舌を弄ばれるのに身を委ねていましたが…。これ、舌って言うか歯を舐めてる?いや、歯って言うか…。

 八重歯を、舐めてる(※『使徒を、喰ってる!?』っぽく)!?

 「こ、この…。ド変態がぁーッ!」
 言うが早いか、無理やり身を引き剥がしてその横っ面に思いっ切り平手打ちを見舞ってやりました。え?拘束から、逃れられないんじゃなかったっけ?
 説明しましょう!この伊勢嶋雪兎は見た目はヒョロくて、実際にヒョロいです。だけどひとたび変態相手に身の危険を感じた際には、ちょっと相手がビックリする程の腕力を発揮するのですね。まぁ、腐っても男ですし。八重歯…じゃなくて、火事場のクソ力ってやつですね!
 「痛ってーな…。顔は、やめてほしいんだけど」
 そう言って頬をさすりつつ、挑発的にこちらを睨んできました。何その、「おもしれー男…」みたいな台詞と表情。ってか、そっちの方が被害者面かよ。唇と舌と歯をいいように弄ばれて、傷ついたのはこっちの方なんじゃい!
 「ってか、何で歯!?何だって、八重歯なんて舐めるのさ。この変態!」
 「いやちょっと、留学先で八重歯が不足してたから。八重歯分の、補給」
 「何その、ディアボロが鉄分を補給するみたいな…。ってか、状況!いくら放課後とは言え、こんな廊下のど真ん中でいつ誰が通りかかるか分かんないでしょ!?」
 「だけど、姉ちゃんが『今なら誰にも見られてない』って言ってたから。ついムラっとして、ヤっちゃった。でも、大丈夫だって。ヘーキヘーキ」
 何じゃそりゃ。言い訳するにしても、もうちょいマシな内容を考えつかないものかね。お姉ちゃんだか誰だか知らないが、他人をダシに使わないでほしい。って言うか、知ってるぞ。
 こいつ昼休みに、クラスで知り合った連中とめっちゃエロトークしてたもん(転校初日から、すごいコミュ力だよね)。女の子のおっぱいは、やっぱり巨乳がいいとか何とか…。そうかそうか。つまり君は、そう言う奴(ノンケ)だったんだな。
 そうやっていかにも自分はホモですみたいな振りをして、俺のからかうつもりなんでしょう!許せねぇ、乙女ホモの心を弄びやがって。もう二~三発ほど、平手打ちでもかましてやらなきゃ気が済まない。そう思っていた矢先…。
 「おっと、いつまでもこうしちゃいられねぇ。そろそろ、サッカー部に入部届出さなきゃいけないんだよな。それじゃな、雪兎。また、八重歯舐めさせて」
 そう言って背を向け、スタコラサッサと去っていった…。や、ヤリ逃げかよあの野郎!もう怒ったぞ!またもクソも、八重歯どころか指一本触れされるかよ!
 だけど彼が去っていく瞬間、今更だけど背負っている鞄…。鞄って言うか、リュックが目に入った。あ、あれはまさか…。



 あれは伝説の、ホモランドセル!今は制服だけど、あれ背負ってさらにスエット履いてたらもう完璧にホモじゃん!?
 一ノ瀬蒼、やっぱり君は…。本物の、ホモだったと言うのか?分からない。分からない、君の事が…。
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