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第一章
第5話 真夜中のお茶会
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数日後、出張から戻ってきたお父様にお願いしたものの、結局お兄様たちと同室にしていただく許可は下りなかった。ニンゲンのパーティーへの出席もまだ早いと却下され、大浴場を使うことすら許されず……落ち込んでいた僕を見兼ねたのか、セイン兄様が庭園でお茶会をしようと誘ってくれた。
(お兄様たちと庭に咲き誇る薔薇を鑑賞しながらお茶を飲むなんて。想像するだけで楽しそう!)
もちろん僕はすぐに「行きます」と返事をした。
お茶会当日、僕は誕生日にお兄様たちにいただいたイヤーカフやブレスレット、ブローチをつけ、おめかしをして庭のガゼボに向かった。
ガゼボにはすでに三人のお兄様たちの姿がある。
時間は午前2時。当然真っ暗だ。でも月影に映るシルエットで誰が誰かはすぐにわかった。
「セイン兄様、おまねきくださりありがとうございます」
「そういう堅苦しいのはいいって。さっさと座って座って。今日は花を愛でながら兄弟水入らずで楽しくお茶飲も~」
「ほら、アーシュの好きな甘い菓子がいっぱいあるから全部食え!」
テーブルの上にはシュークリームやチョコレートドーナツ、フルーツケーキなどなど、心をときめかせるお菓子がずらりと並んでいる。
甘いお菓子が好きなのはジュダ兄様もでしょと心の中で突っ込みつつ、僕は「さすがに全部は食べられません」と笑った。
「さあ、お飲み。薔薇の香りのするお茶だよ」
リエル兄様に渡された紅茶を飲むと、鼻からふっと薔薇の香りが抜けた。本当にいいお茶なのだろう。渋みもなくすっきりとした味わいで何杯でも飲めそうだった。
「見ろよ。アーシュの目と同じ色の薔薇だぜ!」
しばらくみんなでまったりとお茶を飲んでいると、ジュダ兄様が庭の中に何かを見つけたらしく興奮した様子で言った。
「へえ、珍し~。一本しかないのに、ジュダにぃよく見つけたな」
「真っ赤な薔薇の中に咲く一輪の青い薔薇か。とても神聖で、尊い色だね」
セイン兄様とリエル兄様が真っ赤に光る目を一方向に向け、感心したように頷いている。僕は──
「…………」
なんと言えばいいのか、内心ものすごく焦っていた。
だって、肝心の色が全然見えないんだもの。こんなに暗くてもお兄様たちは薔薇の色をはっきりと識別できるのに、僕だけ見えてないなんて。
(バレたら変だと思われるかも。どうしよう)
「アーシュ? どうしたの?」
「あ、いえ……えっとみとれてました。すごく、きれいな色なものだから、つい……」
視線を彷徨わせながらリエル兄様の問いに答える。
正直どこを見たらいいのかすらわからなかった。みんなの視線の方向からおそらくあの辺だろう、という場所にあたりをつけ、熱心に見つめるフリをする。
「だよな! あー、いいものを見られてラッキーだったな! 難しいって有名な青薔薇の栽培に成功するなんて、後で庭師を褒めておかないと。ああ、お茶が冷めちまう。早く飲もうぜ」
「まったく、自分が騒ぎ出したくせにジュダにぃは……」
「アーシュ、これも美味しいから食べてみて」
どうしてみんなには見えるものが僕にだけ見えないんだろう。今だけ? 大きくなったら見えるようになるのかな? 僕の目も闇の中でピカって光って、お兄様たちと同じ世界がいつか……
「アーシュ?」
「あっ、は、はいっ。ありがとうございます。いただきます」
「俺が食べさせてやろうか?」
「いえ、大丈夫です。ジュダ兄様の手をわずらわせずとも自分で食べられます。それより見てください。月と星が……きれいです」
月と星、それだけは僕にもよく見えた。なんだかその優しい光がやけに心に沁みて、今にも泣いちゃいそうだったけど、ぐっと我慢した。僕からお兄様たちの表情は見えなくても、彼らからは僕の涙がきっと見えてしまうから。
「ああ、そうだな。綺麗だ。最近元気ないみたいだったし、アーシュに喜んでもらえてよかったよ」
セイン兄様は、すぐ隣で空を見上げながらそう言った。
(お兄様たちと庭に咲き誇る薔薇を鑑賞しながらお茶を飲むなんて。想像するだけで楽しそう!)
もちろん僕はすぐに「行きます」と返事をした。
お茶会当日、僕は誕生日にお兄様たちにいただいたイヤーカフやブレスレット、ブローチをつけ、おめかしをして庭のガゼボに向かった。
ガゼボにはすでに三人のお兄様たちの姿がある。
時間は午前2時。当然真っ暗だ。でも月影に映るシルエットで誰が誰かはすぐにわかった。
「セイン兄様、おまねきくださりありがとうございます」
「そういう堅苦しいのはいいって。さっさと座って座って。今日は花を愛でながら兄弟水入らずで楽しくお茶飲も~」
「ほら、アーシュの好きな甘い菓子がいっぱいあるから全部食え!」
テーブルの上にはシュークリームやチョコレートドーナツ、フルーツケーキなどなど、心をときめかせるお菓子がずらりと並んでいる。
甘いお菓子が好きなのはジュダ兄様もでしょと心の中で突っ込みつつ、僕は「さすがに全部は食べられません」と笑った。
「さあ、お飲み。薔薇の香りのするお茶だよ」
リエル兄様に渡された紅茶を飲むと、鼻からふっと薔薇の香りが抜けた。本当にいいお茶なのだろう。渋みもなくすっきりとした味わいで何杯でも飲めそうだった。
「見ろよ。アーシュの目と同じ色の薔薇だぜ!」
しばらくみんなでまったりとお茶を飲んでいると、ジュダ兄様が庭の中に何かを見つけたらしく興奮した様子で言った。
「へえ、珍し~。一本しかないのに、ジュダにぃよく見つけたな」
「真っ赤な薔薇の中に咲く一輪の青い薔薇か。とても神聖で、尊い色だね」
セイン兄様とリエル兄様が真っ赤に光る目を一方向に向け、感心したように頷いている。僕は──
「…………」
なんと言えばいいのか、内心ものすごく焦っていた。
だって、肝心の色が全然見えないんだもの。こんなに暗くてもお兄様たちは薔薇の色をはっきりと識別できるのに、僕だけ見えてないなんて。
(バレたら変だと思われるかも。どうしよう)
「アーシュ? どうしたの?」
「あ、いえ……えっとみとれてました。すごく、きれいな色なものだから、つい……」
視線を彷徨わせながらリエル兄様の問いに答える。
正直どこを見たらいいのかすらわからなかった。みんなの視線の方向からおそらくあの辺だろう、という場所にあたりをつけ、熱心に見つめるフリをする。
「だよな! あー、いいものを見られてラッキーだったな! 難しいって有名な青薔薇の栽培に成功するなんて、後で庭師を褒めておかないと。ああ、お茶が冷めちまう。早く飲もうぜ」
「まったく、自分が騒ぎ出したくせにジュダにぃは……」
「アーシュ、これも美味しいから食べてみて」
どうしてみんなには見えるものが僕にだけ見えないんだろう。今だけ? 大きくなったら見えるようになるのかな? 僕の目も闇の中でピカって光って、お兄様たちと同じ世界がいつか……
「アーシュ?」
「あっ、は、はいっ。ありがとうございます。いただきます」
「俺が食べさせてやろうか?」
「いえ、大丈夫です。ジュダ兄様の手をわずらわせずとも自分で食べられます。それより見てください。月と星が……きれいです」
月と星、それだけは僕にもよく見えた。なんだかその優しい光がやけに心に沁みて、今にも泣いちゃいそうだったけど、ぐっと我慢した。僕からお兄様たちの表情は見えなくても、彼らからは僕の涙がきっと見えてしまうから。
「ああ、そうだな。綺麗だ。最近元気ないみたいだったし、アーシュに喜んでもらえてよかったよ」
セイン兄様は、すぐ隣で空を見上げながらそう言った。
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