178 / 304
第7章
第314話 無慈悲な授業①
しおりを挟む
(さあ、今日はどうやってユジンをいじめよう)
朝はそんなことを考えている余裕があったのだけど、授業が始まるとそれどころではなくなった。僕は6年生になっている、という残酷な現実をまざまざと突きつけられ、知識の海に溺れ喘ぎ苦しんでいた。
「魔法陣の術式には古代魔法文字を使うと、現代文字を使うときよりも効果が6倍になるのでしたね。水を表す古代文字は103種類ありました。それぞれ使用する魔法に合わせて使い分けましょう」
??
「さらにその文字に魔力を付与すると効果はその魔力量に比例し、術式を書いてから時間が経つと効果は1時間ごとに半減していきます。式を展開すると……」
(まずい。授業の内容が…全っ然わからない)
先生は意味不明な言葉を発し、黒板には見たことのない記号や文字が並び、教科書を開くと未知の呪文でびっしりと埋め尽くされている。4年のうちに授業の内容は格段に難しくなり、僕は置いていかれてるらしい。
あ、でもクライスは妖精の世界に行ってたのだから仲間だよね? とちらっと彼のノートを見たら、レベルSの問題をスイスイ解いている。(仲間じゃなかった)
今までも勉強は得意ではなかったものの、なんとか中の上の成績をキープしていた。だけど、今のかんじだと、下の下。このままでは学期末テストが危うい。
(どうしよう……。テスト結果は掲示板に全学年分が表示される。僕の名前が最下位にあるのを見たら、ユジンはどう思うだろう)
「キル兄様って……馬鹿なんだ~」とは言わずに、きっと彼は「たまたま調子が悪かったんですよ」と慰めてくれるに違いない。弟に気を遣わせる兄の図が頭の中を占拠する。
「んなぁあああ、最悪だぁあああ!」
「どうした? 胸を押さえて叫び出して……。具合が悪いのか?」
「だいじょぶ……(じゃないけど)、具合は悪くない(頭が悪いだけだよ)」
とにかく必死にノートをとり続けた。
その後も何一つ理解できない授業が続き、最後は魔法応用学で、魔法訓練所での授業だった。ここが一年の時僕が放課後補習している間、クライスが学友たちと魔法の練習してたところ……。ずっと来てみたいと思っていた場所にやっと来られた喜びで、僕はキョロキョロと建物を見回す。
「ふわぁ~広いなぁ」
「そうか、キルナは来たことがなかったか」
「ん。放課後はいつも忙しかったから……(補習で)」
魔法訓練所はドームの形をしていて中はかなり広い。硬質な銀の扉はウィーンと機械音のような音を立てて開き、なんだか近未来的なかんじがする建物だ。
メビス先生は4年経っても全然変わっていない。紫の髪は両サイドをキラキラのラメが入った細いリボンとともに編み込み、ポニーテールにしている。ちらりと見えるうなじからは大人の色気が滲み出し、生徒の視線を集めている。
「は~い! では今日は魔力を頭より大きな球にしましょう。複数作れる方はどんどん作ってください。それを正面の的に当てる。的は壊れてもすぐに元に戻るので、思い切って魔力をぶつけてくださいね。それではどうぞ。やってみて」
かけ声に合わせてみんなが一斉に呪文を唱えはじめた。火や土、風の大きな球が的に向かってビュンビュン飛んでいく様子は圧巻だ。方向がずれて失敗した球は壁に張られた結界の力で消滅していた。
見事的中すると、的がボッと燃えたり穴が開いたり、切り裂かれたりして成功したことがわかる。
「できた方はこちらの上級者向けの小さな的にチャレンジしてくださいね」
クライスやその学友たちをはじめ魔法が得意な子たちはさっさと合格し、奥の上級者向けに行ってしまった。リリーもテアも合格し移動している。
(よし、僕も頑張らないと……)
ぐずぐずしている場合じゃない。とにかく練習しよう、と心に決め、正面の的に体を向けた。
まずは頭大の魔力の水を作る。そして、それを的に向けて投げる。頭の中作り上げたイメージの通り、手のひらを上に向け水魔法の呪文を唱え、強く念じた。
(集まれ~、僕のパワーアップした水の魔力~~~!)
僕は左手で触れた首元のチョーカーから右の手のひらへ、魔力が流れるよう意識を集中する。
ぐぐぐぐぐ~っと手のひらに水の魔力が集まっていき、次第に大きな球になり、ついには自分の頭と同じくらいの大きさになった。もしかして、できた?
「やった!」
こんなにすぐにできるなんて、僕ってやればできる子! と思ったのも束の間、水のボールの表面がうねうねと波立ちはじめる。
(やばい! 魔力が大きすぎて丸い形に維持するのが難しい。手に伝わる振動が強すぎて……、震えが止まらない……。ど、どうしよっ)
朝はそんなことを考えている余裕があったのだけど、授業が始まるとそれどころではなくなった。僕は6年生になっている、という残酷な現実をまざまざと突きつけられ、知識の海に溺れ喘ぎ苦しんでいた。
「魔法陣の術式には古代魔法文字を使うと、現代文字を使うときよりも効果が6倍になるのでしたね。水を表す古代文字は103種類ありました。それぞれ使用する魔法に合わせて使い分けましょう」
??
「さらにその文字に魔力を付与すると効果はその魔力量に比例し、術式を書いてから時間が経つと効果は1時間ごとに半減していきます。式を展開すると……」
(まずい。授業の内容が…全っ然わからない)
先生は意味不明な言葉を発し、黒板には見たことのない記号や文字が並び、教科書を開くと未知の呪文でびっしりと埋め尽くされている。4年のうちに授業の内容は格段に難しくなり、僕は置いていかれてるらしい。
あ、でもクライスは妖精の世界に行ってたのだから仲間だよね? とちらっと彼のノートを見たら、レベルSの問題をスイスイ解いている。(仲間じゃなかった)
今までも勉強は得意ではなかったものの、なんとか中の上の成績をキープしていた。だけど、今のかんじだと、下の下。このままでは学期末テストが危うい。
(どうしよう……。テスト結果は掲示板に全学年分が表示される。僕の名前が最下位にあるのを見たら、ユジンはどう思うだろう)
「キル兄様って……馬鹿なんだ~」とは言わずに、きっと彼は「たまたま調子が悪かったんですよ」と慰めてくれるに違いない。弟に気を遣わせる兄の図が頭の中を占拠する。
「んなぁあああ、最悪だぁあああ!」
「どうした? 胸を押さえて叫び出して……。具合が悪いのか?」
「だいじょぶ……(じゃないけど)、具合は悪くない(頭が悪いだけだよ)」
とにかく必死にノートをとり続けた。
その後も何一つ理解できない授業が続き、最後は魔法応用学で、魔法訓練所での授業だった。ここが一年の時僕が放課後補習している間、クライスが学友たちと魔法の練習してたところ……。ずっと来てみたいと思っていた場所にやっと来られた喜びで、僕はキョロキョロと建物を見回す。
「ふわぁ~広いなぁ」
「そうか、キルナは来たことがなかったか」
「ん。放課後はいつも忙しかったから……(補習で)」
魔法訓練所はドームの形をしていて中はかなり広い。硬質な銀の扉はウィーンと機械音のような音を立てて開き、なんだか近未来的なかんじがする建物だ。
メビス先生は4年経っても全然変わっていない。紫の髪は両サイドをキラキラのラメが入った細いリボンとともに編み込み、ポニーテールにしている。ちらりと見えるうなじからは大人の色気が滲み出し、生徒の視線を集めている。
「は~い! では今日は魔力を頭より大きな球にしましょう。複数作れる方はどんどん作ってください。それを正面の的に当てる。的は壊れてもすぐに元に戻るので、思い切って魔力をぶつけてくださいね。それではどうぞ。やってみて」
かけ声に合わせてみんなが一斉に呪文を唱えはじめた。火や土、風の大きな球が的に向かってビュンビュン飛んでいく様子は圧巻だ。方向がずれて失敗した球は壁に張られた結界の力で消滅していた。
見事的中すると、的がボッと燃えたり穴が開いたり、切り裂かれたりして成功したことがわかる。
「できた方はこちらの上級者向けの小さな的にチャレンジしてくださいね」
クライスやその学友たちをはじめ魔法が得意な子たちはさっさと合格し、奥の上級者向けに行ってしまった。リリーもテアも合格し移動している。
(よし、僕も頑張らないと……)
ぐずぐずしている場合じゃない。とにかく練習しよう、と心に決め、正面の的に体を向けた。
まずは頭大の魔力の水を作る。そして、それを的に向けて投げる。頭の中作り上げたイメージの通り、手のひらを上に向け水魔法の呪文を唱え、強く念じた。
(集まれ~、僕のパワーアップした水の魔力~~~!)
僕は左手で触れた首元のチョーカーから右の手のひらへ、魔力が流れるよう意識を集中する。
ぐぐぐぐぐ~っと手のひらに水の魔力が集まっていき、次第に大きな球になり、ついには自分の頭と同じくらいの大きさになった。もしかして、できた?
「やった!」
こんなにすぐにできるなんて、僕ってやればできる子! と思ったのも束の間、水のボールの表面がうねうねと波立ちはじめる。
(やばい! 魔力が大きすぎて丸い形に維持するのが難しい。手に伝わる振動が強すぎて……、震えが止まらない……。ど、どうしよっ)
309
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。