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第7章
第314話 無慈悲な授業①
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(さあ、今日はどうやってユジンをいじめよう)
朝はそんなことを考えている余裕があったのだけど、授業が始まるとそれどころではなくなった。僕は6年生になっている、という残酷な現実をまざまざと突きつけられ、知識の海に溺れ喘ぎ苦しんでいた。
「魔法陣の術式には古代魔法文字を使うと、現代文字を使うときよりも効果が6倍になるのでしたね。水を表す古代文字は103種類ありました。それぞれ使用する魔法に合わせて使い分けましょう」
??
「さらにその文字に魔力を付与すると効果はその魔力量に比例し、術式を書いてから時間が経つと効果は1時間ごとに半減していきます。式を展開すると……」
(まずい。授業の内容が…全っ然わからない)
先生は意味不明な言葉を発し、黒板には見たことのない記号や文字が並び、教科書を開くと未知の呪文でびっしりと埋め尽くされている。4年のうちに授業の内容は格段に難しくなり、僕は置いていかれてるらしい。
あ、でもクライスは妖精の世界に行ってたのだから仲間だよね? とちらっと彼のノートを見たら、レベルSの問題をスイスイ解いている。(仲間じゃなかった)
今までも勉強は得意ではなかったものの、なんとか中の上の成績をキープしていた。だけど、今のかんじだと、下の下。このままでは学期末テストが危うい。
(どうしよう……。テスト結果は掲示板に全学年分が表示される。僕の名前が最下位にあるのを見たら、ユジンはどう思うだろう)
「キル兄様って……馬鹿なんだ~」とは言わずに、きっと彼は「たまたま調子が悪かったんですよ」と慰めてくれるに違いない。弟に気を遣わせる兄の図が頭の中を占拠する。
「んなぁあああ、最悪だぁあああ!」
「どうした? 胸を押さえて叫び出して……。具合が悪いのか?」
「だいじょぶ……(じゃないけど)、具合は悪くない(頭が悪いだけだよ)」
とにかく必死にノートをとり続けた。
その後も何一つ理解できない授業が続き、最後は魔法応用学で、魔法訓練所での授業だった。ここが一年の時僕が放課後補習している間、クライスが学友たちと魔法の練習してたところ……。ずっと来てみたいと思っていた場所にやっと来られた喜びで、僕はキョロキョロと建物を見回す。
「ふわぁ~広いなぁ」
「そうか、キルナは来たことがなかったか」
「ん。放課後はいつも忙しかったから……(補習で)」
魔法訓練所はドームの形をしていて中はかなり広い。硬質な銀の扉はウィーンと機械音のような音を立てて開き、なんだか近未来的なかんじがする建物だ。
メビス先生は4年経っても全然変わっていない。紫の髪は両サイドをキラキラのラメが入った細いリボンとともに編み込み、ポニーテールにしている。ちらりと見えるうなじからは大人の色気が滲み出し、生徒の視線を集めている。
「は~い! では今日は魔力を頭より大きな球にしましょう。複数作れる方はどんどん作ってください。それを正面の的に当てる。的は壊れてもすぐに元に戻るので、思い切って魔力をぶつけてくださいね。それではどうぞ。やってみて」
かけ声に合わせてみんなが一斉に呪文を唱えはじめた。火や土、風の大きな球が的に向かってビュンビュン飛んでいく様子は圧巻だ。方向がずれて失敗した球は壁に張られた結界の力で消滅していた。
見事的中すると、的がボッと燃えたり穴が開いたり、切り裂かれたりして成功したことがわかる。
「できた方はこちらの上級者向けの小さな的にチャレンジしてくださいね」
クライスやその学友たちをはじめ魔法が得意な子たちはさっさと合格し、奥の上級者向けに行ってしまった。リリーもテアも合格し移動している。
(よし、僕も頑張らないと……)
ぐずぐずしている場合じゃない。とにかく練習しよう、と心に決め、正面の的に体を向けた。
まずは頭大の魔力の水を作る。そして、それを的に向けて投げる。頭の中作り上げたイメージの通り、手のひらを上に向け水魔法の呪文を唱え、強く念じた。
(集まれ~、僕のパワーアップした水の魔力~~~!)
僕は左手で触れた首元のチョーカーから右の手のひらへ、魔力が流れるよう意識を集中する。
ぐぐぐぐぐ~っと手のひらに水の魔力が集まっていき、次第に大きな球になり、ついには自分の頭と同じくらいの大きさになった。もしかして、できた?
「やった!」
こんなにすぐにできるなんて、僕ってやればできる子! と思ったのも束の間、水のボールの表面がうねうねと波立ちはじめる。
(やばい! 魔力が大きすぎて丸い形に維持するのが難しい。手に伝わる振動が強すぎて……、震えが止まらない……。ど、どうしよっ)
朝はそんなことを考えている余裕があったのだけど、授業が始まるとそれどころではなくなった。僕は6年生になっている、という残酷な現実をまざまざと突きつけられ、知識の海に溺れ喘ぎ苦しんでいた。
「魔法陣の術式には古代魔法文字を使うと、現代文字を使うときよりも効果が6倍になるのでしたね。水を表す古代文字は103種類ありました。それぞれ使用する魔法に合わせて使い分けましょう」
??
「さらにその文字に魔力を付与すると効果はその魔力量に比例し、術式を書いてから時間が経つと効果は1時間ごとに半減していきます。式を展開すると……」
(まずい。授業の内容が…全っ然わからない)
先生は意味不明な言葉を発し、黒板には見たことのない記号や文字が並び、教科書を開くと未知の呪文でびっしりと埋め尽くされている。4年のうちに授業の内容は格段に難しくなり、僕は置いていかれてるらしい。
あ、でもクライスは妖精の世界に行ってたのだから仲間だよね? とちらっと彼のノートを見たら、レベルSの問題をスイスイ解いている。(仲間じゃなかった)
今までも勉強は得意ではなかったものの、なんとか中の上の成績をキープしていた。だけど、今のかんじだと、下の下。このままでは学期末テストが危うい。
(どうしよう……。テスト結果は掲示板に全学年分が表示される。僕の名前が最下位にあるのを見たら、ユジンはどう思うだろう)
「キル兄様って……馬鹿なんだ~」とは言わずに、きっと彼は「たまたま調子が悪かったんですよ」と慰めてくれるに違いない。弟に気を遣わせる兄の図が頭の中を占拠する。
「んなぁあああ、最悪だぁあああ!」
「どうした? 胸を押さえて叫び出して……。具合が悪いのか?」
「だいじょぶ……(じゃないけど)、具合は悪くない(頭が悪いだけだよ)」
とにかく必死にノートをとり続けた。
その後も何一つ理解できない授業が続き、最後は魔法応用学で、魔法訓練所での授業だった。ここが一年の時僕が放課後補習している間、クライスが学友たちと魔法の練習してたところ……。ずっと来てみたいと思っていた場所にやっと来られた喜びで、僕はキョロキョロと建物を見回す。
「ふわぁ~広いなぁ」
「そうか、キルナは来たことがなかったか」
「ん。放課後はいつも忙しかったから……(補習で)」
魔法訓練所はドームの形をしていて中はかなり広い。硬質な銀の扉はウィーンと機械音のような音を立てて開き、なんだか近未来的なかんじがする建物だ。
メビス先生は4年経っても全然変わっていない。紫の髪は両サイドをキラキラのラメが入った細いリボンとともに編み込み、ポニーテールにしている。ちらりと見えるうなじからは大人の色気が滲み出し、生徒の視線を集めている。
「は~い! では今日は魔力を頭より大きな球にしましょう。複数作れる方はどんどん作ってください。それを正面の的に当てる。的は壊れてもすぐに元に戻るので、思い切って魔力をぶつけてくださいね。それではどうぞ。やってみて」
かけ声に合わせてみんなが一斉に呪文を唱えはじめた。火や土、風の大きな球が的に向かってビュンビュン飛んでいく様子は圧巻だ。方向がずれて失敗した球は壁に張られた結界の力で消滅していた。
見事的中すると、的がボッと燃えたり穴が開いたり、切り裂かれたりして成功したことがわかる。
「できた方はこちらの上級者向けの小さな的にチャレンジしてくださいね」
クライスやその学友たちをはじめ魔法が得意な子たちはさっさと合格し、奥の上級者向けに行ってしまった。リリーもテアも合格し移動している。
(よし、僕も頑張らないと……)
ぐずぐずしている場合じゃない。とにかく練習しよう、と心に決め、正面の的に体を向けた。
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