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42. 勇者の覚書
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王宮の神殿にお邪魔して勇者の手記を見せてもらう事になった。
アルファント殿下とお兄様と、何故か国王陛下もご一緒です。
神殿の奥に小部屋があってそこからさらに地下に続く階段があった。
こんな場所、知ってしまったらもうこの国から出られないんじゃない? 何だか、簡単に見せていただけるというから来てしまったがこれは早まったのではないだろうか。
横を歩いているお兄様もしまったという顔をしている。
ノヴァ神官は優しそうな顔の裏側で結構な策士なのかもしれない。
とにかく、来てしまったからには仕方がない。開き直って見てしまおう。始まりの勇者の手記なんて神話級のモノだから興味はある。
お兄様は現代日本からの転移者であれこれとあって伝説の勇者になったのではないか、女神様と結ばれるなんてロマンだと言ってワクワクしていたけど、私としてはパンドラの箱を開けるような気がしないでもない。
私達、色々と深入りしすぎてない?!
階段の下には居心地の良さそうな小部屋があった。ここは昔、勇者の拠点となった場所だそうだ。
ソファーにテーブル、キッチンまで一部屋に纏められている。それに作り付けの棚に置いてあるのはテレビに見える。勇者の時代にテレビ? というか今の時代にもテレビはない。
「どうして、テレビが?」
「テレビ? それも俺の知っているテレビだ」
アルファント殿下とお兄様が同時にテレビを指さして叫んだ。殿下が思わず駆け寄って触っていたが、
「張りぼて? 外側だけの模型? みたいな」
「中身は無いんですか?」
「うん。外枠だけそれらしく作ってある……でも、最近のテレビだ」
「その、テレビですが、見かけだけで実際のテレビとしての機能はないそうです。ただ、転生者の方が聖女として目覚められた時にはこのテレビを見ていただく事になっています。テレビを見る事で記憶が戻るかもしれませんから」
「転生者って意外といるのですか?」
「私は殿下とアプリコット家のお二人しか、いえ、ピンクさんも、でしたね。4人しか知りませんし、これまでの歴史でも転生者の聖女は2人しかおられません。いえ、転生者であるという自覚のある方が2人だけなのかもしれません。聖女に成られた方は皆、不思議な言葉で歌を歌われますから」
「桜の歌ですね。という事は始まりの勇者は日本人だったのかもしれません。それも、俺たちとそんなに時代が変わらない」
「この世界の遥か過去に転生、いや転移したって事か」
ノヴァ神官と国王陛下が二人で壁の窪みに指を当て小声で呪文を唱えると壁に隠し扉が現れた。さらにノヴァ神官がなにやら操作をすると扉が開いた。かなり厳重に保管されているようだ。
扉の中にはキラキラした宝冠や幾つかの宝玉があるのが見えたがノヴァ神官はその中から黒い布の包みを取り出すと、扉を閉めてその包みをそっとテーブルの上に置いた。
そして、その包みを開けるとそこには黒い革表紙の小振りなノートがあった。
「どうぞ、ご覧になってください」
その言葉に私とお兄様、アルファント殿下は3人で譲り合うように顔を見合わせた。しばらくして、
「では、わたしが」
そういうとアルファント殿下がそのノートを手に取りゆっくりと開いた。ノートの最初のページには『覚書』エドガー・サガン 忘れないように記憶を書いておく。とあった。
フランス語で。
「えっ!? 日本語じゃない!」
お兄様が驚くと
「これ、フランス語ですね。えーと、忘れないように、書いておく、記憶を。忘れないように記憶を書いておく。覚書、ですか」
「殿下! フランス語、読めるんですか? 凄い」
「いや、昔、フランスに出向していたことがあって、でも、だいぶ年月が経っているから単語とか忘れているかもしれない」
「それでも凄いです。俺、英語なら何とか読めますけどフランス語なんて。でも、まさか、日本語だと思ったのに違うなんて」
「殿下が読めるのならばもっと早くお目にかければよかったですね。これで何かわかればいいんですけど」
驚いた。まさかのフランス語。
そして、殿下がフランス語を読めるなんて。
実は私も大学でフランス語を第二外国語で取って、響きがきれいだから話せたらいいなってちょっと頑張った記憶があるんだけど、だいぶ前だから記憶も曖昧だし別に言わなくてもいいかな。
殿下がパラパラとページをめくって見ていたが、急に私にノートを差し出してきた。
「聖女、いや、聖女の資格のあるリーナから見てこのノートに何か感じるモノはないだろうか?」
「えっ、そうですね」
差し出されたので仕方なく受け取ってちょうど開かれたページを見ると『佐々木小太郎』という名前が目についた。『エドガー・サガン』さんと『佐々木小太郎』さんは同時に召喚されたようだ。
「リーナ、フランス語が読めるんだね」
「えっ、いえ」
「同時に召喚って声に出ていたよ」
不覚。
召喚って言葉に驚いて思わず声が出てしまっていたらしい。
でも、これってどういう事だろう。
フランス人のエドガーさんと佐々木さんが同時に召喚されて、なにがどうなってエドガーさんが勇者になって、女神様と建国する事になったんだろう。
佐々木小太郎さんの名前は今の時代には伝わってないけれど、彼はどうしたのかしら。
というか、小太郎さんの覚書はないの?
この勇者の覚書、読むのが怖い。
アルファント殿下とお兄様と、何故か国王陛下もご一緒です。
神殿の奥に小部屋があってそこからさらに地下に続く階段があった。
こんな場所、知ってしまったらもうこの国から出られないんじゃない? 何だか、簡単に見せていただけるというから来てしまったがこれは早まったのではないだろうか。
横を歩いているお兄様もしまったという顔をしている。
ノヴァ神官は優しそうな顔の裏側で結構な策士なのかもしれない。
とにかく、来てしまったからには仕方がない。開き直って見てしまおう。始まりの勇者の手記なんて神話級のモノだから興味はある。
お兄様は現代日本からの転移者であれこれとあって伝説の勇者になったのではないか、女神様と結ばれるなんてロマンだと言ってワクワクしていたけど、私としてはパンドラの箱を開けるような気がしないでもない。
私達、色々と深入りしすぎてない?!
階段の下には居心地の良さそうな小部屋があった。ここは昔、勇者の拠点となった場所だそうだ。
ソファーにテーブル、キッチンまで一部屋に纏められている。それに作り付けの棚に置いてあるのはテレビに見える。勇者の時代にテレビ? というか今の時代にもテレビはない。
「どうして、テレビが?」
「テレビ? それも俺の知っているテレビだ」
アルファント殿下とお兄様が同時にテレビを指さして叫んだ。殿下が思わず駆け寄って触っていたが、
「張りぼて? 外側だけの模型? みたいな」
「中身は無いんですか?」
「うん。外枠だけそれらしく作ってある……でも、最近のテレビだ」
「その、テレビですが、見かけだけで実際のテレビとしての機能はないそうです。ただ、転生者の方が聖女として目覚められた時にはこのテレビを見ていただく事になっています。テレビを見る事で記憶が戻るかもしれませんから」
「転生者って意外といるのですか?」
「私は殿下とアプリコット家のお二人しか、いえ、ピンクさんも、でしたね。4人しか知りませんし、これまでの歴史でも転生者の聖女は2人しかおられません。いえ、転生者であるという自覚のある方が2人だけなのかもしれません。聖女に成られた方は皆、不思議な言葉で歌を歌われますから」
「桜の歌ですね。という事は始まりの勇者は日本人だったのかもしれません。それも、俺たちとそんなに時代が変わらない」
「この世界の遥か過去に転生、いや転移したって事か」
ノヴァ神官と国王陛下が二人で壁の窪みに指を当て小声で呪文を唱えると壁に隠し扉が現れた。さらにノヴァ神官がなにやら操作をすると扉が開いた。かなり厳重に保管されているようだ。
扉の中にはキラキラした宝冠や幾つかの宝玉があるのが見えたがノヴァ神官はその中から黒い布の包みを取り出すと、扉を閉めてその包みをそっとテーブルの上に置いた。
そして、その包みを開けるとそこには黒い革表紙の小振りなノートがあった。
「どうぞ、ご覧になってください」
その言葉に私とお兄様、アルファント殿下は3人で譲り合うように顔を見合わせた。しばらくして、
「では、わたしが」
そういうとアルファント殿下がそのノートを手に取りゆっくりと開いた。ノートの最初のページには『覚書』エドガー・サガン 忘れないように記憶を書いておく。とあった。
フランス語で。
「えっ!? 日本語じゃない!」
お兄様が驚くと
「これ、フランス語ですね。えーと、忘れないように、書いておく、記憶を。忘れないように記憶を書いておく。覚書、ですか」
「殿下! フランス語、読めるんですか? 凄い」
「いや、昔、フランスに出向していたことがあって、でも、だいぶ年月が経っているから単語とか忘れているかもしれない」
「それでも凄いです。俺、英語なら何とか読めますけどフランス語なんて。でも、まさか、日本語だと思ったのに違うなんて」
「殿下が読めるのならばもっと早くお目にかければよかったですね。これで何かわかればいいんですけど」
驚いた。まさかのフランス語。
そして、殿下がフランス語を読めるなんて。
実は私も大学でフランス語を第二外国語で取って、響きがきれいだから話せたらいいなってちょっと頑張った記憶があるんだけど、だいぶ前だから記憶も曖昧だし別に言わなくてもいいかな。
殿下がパラパラとページをめくって見ていたが、急に私にノートを差し出してきた。
「聖女、いや、聖女の資格のあるリーナから見てこのノートに何か感じるモノはないだろうか?」
「えっ、そうですね」
差し出されたので仕方なく受け取ってちょうど開かれたページを見ると『佐々木小太郎』という名前が目についた。『エドガー・サガン』さんと『佐々木小太郎』さんは同時に召喚されたようだ。
「リーナ、フランス語が読めるんだね」
「えっ、いえ」
「同時に召喚って声に出ていたよ」
不覚。
召喚って言葉に驚いて思わず声が出てしまっていたらしい。
でも、これってどういう事だろう。
フランス人のエドガーさんと佐々木さんが同時に召喚されて、なにがどうなってエドガーさんが勇者になって、女神様と建国する事になったんだろう。
佐々木小太郎さんの名前は今の時代には伝わってないけれど、彼はどうしたのかしら。
というか、小太郎さんの覚書はないの?
この勇者の覚書、読むのが怖い。
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