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41. ピンクさんは何なの?
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「何だか美人を鼻にかけてツンと澄ましちゃってさ、感じ悪いと思わない? ああいう人が影で悪い事したり男を誘惑したり不倫とかするんだよ。女狐っていうんだって。人の彼氏、取ったりしそうじゃない。何だか見てると気分が悪くなってくる! リーナもそう思うでしょ。しおらしそうな顔しちゃってお腹の中で何、考えているのかわからない悪女だし。悪事を働く前に辞めさせられて良かった、と思うよ」
何をおっしゃるピンクさん。
ブーメランしているよ。人の事、言えないでしょ!
それにノヴァーラさんは男です。悪女ではありません。凄い美人ではあるけれど、どちらかというと清楚系だし。もし、彼が男だとわかると凄い美男子ってコロッと態度を変える気もする。
それとまだ辞めていません。
一目会っただけの人によくそんな悪口言えるよね、というくらいの罵詈雑言を言い散らかせて、
「チョコレートケーキに罪はないから買ってきたら届けて!」
と偉そうに腰に手を当ててフンッって言った後、ピンクさんは帰って行った。
「聞いた? お兄様」
「聞いた。フンッって言った。凄いな。あんなの初めて見た」
「ピンクさんに会っていると、ありえない振る舞いに良くあうよね」
「あれ、前世で何、やっていたんだ。品がなさすぎる。日本人で若かったらしいけど」
「ほら、自分でJKって言っていたじゃない。それで毎日、派手に遊んでいたみたい。学校も遊びに行く感覚だったみたいだし、ゲームは割と得意って言っていたわ」
「それにしても、あんまり普通の子じゃなかったと思うな。それにノヴァ神官をあんなに嫌うなんておかしくないか。えーと、ほらエクソシストだったっけ、悪魔祓いの神職にあった悪魔みたいな……ピンク頭って悪魔なのか?」
「まさか、本人はヒロインに転生したって、でもゲームはまだ始まっていないけど悪魔が主役の乙女ゲームってありなの?」
「それはまた、斬新な。いや、ほんとうに、あれはおかしいよね」
と私とお兄様がピンクさんの非常識な言動の話をしているうちにノヴァ神官が帰ってきた。
「只今、戻りました」
彼の手には大きめの紙袋があった。チョコレートケーキを買いに行ったとしても戻りが早い。
「転移陣を使いましたので早く戻ってくることができたのですが、お客様はもう、お帰りになったようですね」
「お疲れ様です。ごめんなさいね。わざわざ買いに行かせてしまって」
「いいえ、せっかくですからチョコレートケーキを頂きませんか」
「喜んで」
お兄様が嬉しそうに答えていそいそとテーブルに残っていたピンクさんの使った茶器を片付けにかかった。
「私がいたしますのに」
「いえいえ、ノヴァ様はお使いに行ってくださったのですからどうぞ座ってください」
3人で手早く片付けて新たなお茶を入れ、チョコレートケーキを食べた。こってりとしたガトーショコラだった。
とても美味しい。チョコレートが流行り始めてそんなに経っていないのにどんどん色々なチョコレートのお菓子がでてきているのは喜ばしい事だと思う。
「このチョコケーキのしっとりした感じがいいな。これ、中にお酒に漬けたレーズンを入れても美味しいと思うんだ」
「はいはい。今度、作ってみるわね」
「リーナ様は色んなお菓子を作られるのが良いですね。それがとても美味しい。皆、喜んで食べています」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「さて、あのピンクさんの事ですが」
「はい」
「彼女は聖女ではありません」
「あーっ、やっぱりそんな気はしていたんだ。聖女って雰囲気ではないですから」
「では、聖女の杖は?」
「あれは、あれは何といったら良いのでしょうか。一応、聖女の杖ではあるのです。いえ、聖女の杖と言って良いのでしょうか」
ノヴァ神官にはピンクさんの持っていたカバンの中に入っていた灰色の靄が見えて、その靄の中にあるスティックとその先端の水晶も見えたそうだ。
ピンクさんは『隠蔽の加護?』で手に入れた灰色の靄の中にスティックとかアクセサリーとか入れて持ち歩いている。その灰色の靄は人目に付くと変に思われるので靄をカバンに入れて持ち歩く事にしたそうだ。
アイテムボックスのようにそれなりの容量があるから見た目は悪いけど役にたっているそうだ。
「聖女の杖の燃え殻? というか、微かな残滓はあるようなんです」
「聖女の杖の澱みたいな?」
「ええ。聖女の杖は聖なるものですから、そんな澱みなんて出るはずはないのですが、間違って出てしまったものを集めたら杖の成分が少し付いてしまった? みたいな?」
「でも、聖女の杖ではあるんですね」
「あれを聖女の杖とは認めたくはありませんが、……物凄く大きな括りで言うとそうであるかもしれません」
ノヴァ神官はピンクさんの杖を聖女の杖とは認めたくないようだが、それでも彼女の杖は聖女の杖の端くれではあるようだ。
そして、ノヴァ神官はピンクさんを見てとても嫌な気分になったそうだ。ピンクさんがノヴァ神官をすごく嫌がって辞めさせるように言っていたことを話すと
「同じですね。私も彼女を見て気分が悪くなりました。あれは聖女とは言えません。むしろ、魔女かもしれません」
「魔女……」
「この世界でも魔女っているのですか?」
「これまで魔女の存在は……あるにはあったらしいのですが」
「魔力のある良くない存在というなら、確かにピンク頭は魔女かもしれない」
「でも、ピンクさん、言動はおかしいけど、あれはゲームの世界と混同しているからで、特に何も悪い事はしてないわ」
「リーナは迷惑を被っている」
「まぁ、確かにそうだけど。ラクアート様を引き受けてくれているし、情報を得るためのちょっとした犠牲だと思えば」
「リーナ様は寛大な方ですね。実は、始まりの勇者の残した手記というか日記みたいなものが残っているのですが、それは厳重に保管の魔法をかけて保存しているのですが……誰も読めないのです。その中にひょっとしたらですが、何か参考になる事が書いてあるかもしれません」
「おう、出た。それは日本語で書かれているのかもしれない! ですね」
「わかりませんが、そのゲームについても不明な点も多いですし、一度アルファント殿下も交えて見てもらったいいかもしれません」
結局、まだ乙女ゲームは始まっていないけど、ピンクさんからの情報はあったほうがいいので、ノヴァ神官は週に1度だけ来てもらう事にした。そして、チョコレートケーキも届けておいた。
我儘なピンクさんにあわせたわけではない、けどね。
何をおっしゃるピンクさん。
ブーメランしているよ。人の事、言えないでしょ!
それにノヴァーラさんは男です。悪女ではありません。凄い美人ではあるけれど、どちらかというと清楚系だし。もし、彼が男だとわかると凄い美男子ってコロッと態度を変える気もする。
それとまだ辞めていません。
一目会っただけの人によくそんな悪口言えるよね、というくらいの罵詈雑言を言い散らかせて、
「チョコレートケーキに罪はないから買ってきたら届けて!」
と偉そうに腰に手を当ててフンッって言った後、ピンクさんは帰って行った。
「聞いた? お兄様」
「聞いた。フンッって言った。凄いな。あんなの初めて見た」
「ピンクさんに会っていると、ありえない振る舞いに良くあうよね」
「あれ、前世で何、やっていたんだ。品がなさすぎる。日本人で若かったらしいけど」
「ほら、自分でJKって言っていたじゃない。それで毎日、派手に遊んでいたみたい。学校も遊びに行く感覚だったみたいだし、ゲームは割と得意って言っていたわ」
「それにしても、あんまり普通の子じゃなかったと思うな。それにノヴァ神官をあんなに嫌うなんておかしくないか。えーと、ほらエクソシストだったっけ、悪魔祓いの神職にあった悪魔みたいな……ピンク頭って悪魔なのか?」
「まさか、本人はヒロインに転生したって、でもゲームはまだ始まっていないけど悪魔が主役の乙女ゲームってありなの?」
「それはまた、斬新な。いや、ほんとうに、あれはおかしいよね」
と私とお兄様がピンクさんの非常識な言動の話をしているうちにノヴァ神官が帰ってきた。
「只今、戻りました」
彼の手には大きめの紙袋があった。チョコレートケーキを買いに行ったとしても戻りが早い。
「転移陣を使いましたので早く戻ってくることができたのですが、お客様はもう、お帰りになったようですね」
「お疲れ様です。ごめんなさいね。わざわざ買いに行かせてしまって」
「いいえ、せっかくですからチョコレートケーキを頂きませんか」
「喜んで」
お兄様が嬉しそうに答えていそいそとテーブルに残っていたピンクさんの使った茶器を片付けにかかった。
「私がいたしますのに」
「いえいえ、ノヴァ様はお使いに行ってくださったのですからどうぞ座ってください」
3人で手早く片付けて新たなお茶を入れ、チョコレートケーキを食べた。こってりとしたガトーショコラだった。
とても美味しい。チョコレートが流行り始めてそんなに経っていないのにどんどん色々なチョコレートのお菓子がでてきているのは喜ばしい事だと思う。
「このチョコケーキのしっとりした感じがいいな。これ、中にお酒に漬けたレーズンを入れても美味しいと思うんだ」
「はいはい。今度、作ってみるわね」
「リーナ様は色んなお菓子を作られるのが良いですね。それがとても美味しい。皆、喜んで食べています」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「さて、あのピンクさんの事ですが」
「はい」
「彼女は聖女ではありません」
「あーっ、やっぱりそんな気はしていたんだ。聖女って雰囲気ではないですから」
「では、聖女の杖は?」
「あれは、あれは何といったら良いのでしょうか。一応、聖女の杖ではあるのです。いえ、聖女の杖と言って良いのでしょうか」
ノヴァ神官にはピンクさんの持っていたカバンの中に入っていた灰色の靄が見えて、その靄の中にあるスティックとその先端の水晶も見えたそうだ。
ピンクさんは『隠蔽の加護?』で手に入れた灰色の靄の中にスティックとかアクセサリーとか入れて持ち歩いている。その灰色の靄は人目に付くと変に思われるので靄をカバンに入れて持ち歩く事にしたそうだ。
アイテムボックスのようにそれなりの容量があるから見た目は悪いけど役にたっているそうだ。
「聖女の杖の燃え殻? というか、微かな残滓はあるようなんです」
「聖女の杖の澱みたいな?」
「ええ。聖女の杖は聖なるものですから、そんな澱みなんて出るはずはないのですが、間違って出てしまったものを集めたら杖の成分が少し付いてしまった? みたいな?」
「でも、聖女の杖ではあるんですね」
「あれを聖女の杖とは認めたくはありませんが、……物凄く大きな括りで言うとそうであるかもしれません」
ノヴァ神官はピンクさんの杖を聖女の杖とは認めたくないようだが、それでも彼女の杖は聖女の杖の端くれではあるようだ。
そして、ノヴァ神官はピンクさんを見てとても嫌な気分になったそうだ。ピンクさんがノヴァ神官をすごく嫌がって辞めさせるように言っていたことを話すと
「同じですね。私も彼女を見て気分が悪くなりました。あれは聖女とは言えません。むしろ、魔女かもしれません」
「魔女……」
「この世界でも魔女っているのですか?」
「これまで魔女の存在は……あるにはあったらしいのですが」
「魔力のある良くない存在というなら、確かにピンク頭は魔女かもしれない」
「でも、ピンクさん、言動はおかしいけど、あれはゲームの世界と混同しているからで、特に何も悪い事はしてないわ」
「リーナは迷惑を被っている」
「まぁ、確かにそうだけど。ラクアート様を引き受けてくれているし、情報を得るためのちょっとした犠牲だと思えば」
「リーナ様は寛大な方ですね。実は、始まりの勇者の残した手記というか日記みたいなものが残っているのですが、それは厳重に保管の魔法をかけて保存しているのですが……誰も読めないのです。その中にひょっとしたらですが、何か参考になる事が書いてあるかもしれません」
「おう、出た。それは日本語で書かれているのかもしれない! ですね」
「わかりませんが、そのゲームについても不明な点も多いですし、一度アルファント殿下も交えて見てもらったいいかもしれません」
結局、まだ乙女ゲームは始まっていないけど、ピンクさんからの情報はあったほうがいいので、ノヴァ神官は週に1度だけ来てもらう事にした。そして、チョコレートケーキも届けておいた。
我儘なピンクさんにあわせたわけではない、けどね。
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