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第1部
フェーズ2-9
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大学の試験が終わる頃を見計らって、大学の正門前で正木さんを待った。高校の門で正木さんが私を待つことはあっても、逆は初めてだ。私の姿を見つけるなり、正木さんはかなり驚いていた。
一緒に大学前のカフェに入った。私はアイスティーを、正木さんはコーラを注文した。
「会いにきてくれたのはうれしいけど、もう大丈夫なの? 一人で出歩いて」
「はい。解決したので、今日はその報告に」
正木さんはがっかりしたようにため息をついた。
「なんだ、デートの誘いだと思ったのに」
ドリンクが運ばれてきた。私は涼と母から聞いた話を併せて報告した。
「婚約が決め手になったわけだ。結局、解決したのは白衣の王子様ってわけか。そりゃそうだよな」
「正木さんにもたくさん守ってもらって、感謝してます。本当にありがとうございました」
かしこまってお辞儀をした。
「先生も、正木さんに感謝してました」
「あいつに感謝されてもねえ」
まったくうれしくないという様子で、正木さんが顔をしかめる。
「本当、全然なびかないよね、彩ちゃんは。最初はさ、彼氏いるって聞いて、かわいいし、奪っちゃおうかなーくらいの気持ちだったんだけど。全然なびかないんだわ、これが。ああ、この子は一途なんだなーって。その一途な気持ちを、俺に向かせてやりたいなんて思っちゃったりしてさ」
もし私が正木さんに乗り換えていたら、その時点で一途ではなくなるので、正木さんは私に冷めていたのではないだろうか、とも思う。
「そんなにいい? 顔?」
正木さんがふてくされたように質問した。
「つらかったときに励まして支えてくれた人なので」
「医者なんだから当然じゃん?」
それを言われると、何も返せなくなってしまうのだけど。優しくしてもらってるうちに、医者としてではない彼のことを知りたくなった。どんどん興味が湧いて、気がつけば目が離せなくなってた。
「あいつのほうが本気になったってことかな」
どう答えていいかわからない。答えづらい。
「じゃなきゃ高校生に手出さないだろ。下手すりゃ逮捕されるんだから。っていうかあの人、本気どころかけっこう独占欲強そうだよね。俺と彩ちゃんが話してるところに割り込んできたりしてさ。あのときはマジで驚いたよ」
「すみません」
私は小さくなって謝った。でもあのときはただ話していただけではない。涼が飛んできたのは、正木さんが私にキスしようとしたせいだと思うんだけどな。
「ま、それだけ彩ちゃんは大事にしてもらえるんじゃないの」
正木さんはグラスに半分ほど残っていたコーラを一気に飲み干した。
「俺は、ここ数日、彩ちゃんと毎日一緒に登校して帰って、たまに寄り道なんかもして、恋人気分を味わえた。それで十分だよ」
胸が締めつけられる。最初は見た目で判断して軽い人だと思ってた。実際には全然そんなことなかった。真剣に私のことを思ってくれてた。
「ごめんなさい」
気持ちに応えられないことを、頭を下げて改めて詫びる。
「お幸せにね」
目頭が熱くなる、まだ泣いちゃダメ。
店を出たところで、「じゃあ、また」と微笑みを残して正木さんは去っていった。大学に進学すれば構内で顔を合わせることもあるだろう。そのときは笑顔で再会しよう。でも今は、涙が止まらない。
一緒に大学前のカフェに入った。私はアイスティーを、正木さんはコーラを注文した。
「会いにきてくれたのはうれしいけど、もう大丈夫なの? 一人で出歩いて」
「はい。解決したので、今日はその報告に」
正木さんはがっかりしたようにため息をついた。
「なんだ、デートの誘いだと思ったのに」
ドリンクが運ばれてきた。私は涼と母から聞いた話を併せて報告した。
「婚約が決め手になったわけだ。結局、解決したのは白衣の王子様ってわけか。そりゃそうだよな」
「正木さんにもたくさん守ってもらって、感謝してます。本当にありがとうございました」
かしこまってお辞儀をした。
「先生も、正木さんに感謝してました」
「あいつに感謝されてもねえ」
まったくうれしくないという様子で、正木さんが顔をしかめる。
「本当、全然なびかないよね、彩ちゃんは。最初はさ、彼氏いるって聞いて、かわいいし、奪っちゃおうかなーくらいの気持ちだったんだけど。全然なびかないんだわ、これが。ああ、この子は一途なんだなーって。その一途な気持ちを、俺に向かせてやりたいなんて思っちゃったりしてさ」
もし私が正木さんに乗り換えていたら、その時点で一途ではなくなるので、正木さんは私に冷めていたのではないだろうか、とも思う。
「そんなにいい? 顔?」
正木さんがふてくされたように質問した。
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「医者なんだから当然じゃん?」
それを言われると、何も返せなくなってしまうのだけど。優しくしてもらってるうちに、医者としてではない彼のことを知りたくなった。どんどん興味が湧いて、気がつけば目が離せなくなってた。
「あいつのほうが本気になったってことかな」
どう答えていいかわからない。答えづらい。
「じゃなきゃ高校生に手出さないだろ。下手すりゃ逮捕されるんだから。っていうかあの人、本気どころかけっこう独占欲強そうだよね。俺と彩ちゃんが話してるところに割り込んできたりしてさ。あのときはマジで驚いたよ」
「すみません」
私は小さくなって謝った。でもあのときはただ話していただけではない。涼が飛んできたのは、正木さんが私にキスしようとしたせいだと思うんだけどな。
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胸が締めつけられる。最初は見た目で判断して軽い人だと思ってた。実際には全然そんなことなかった。真剣に私のことを思ってくれてた。
「ごめんなさい」
気持ちに応えられないことを、頭を下げて改めて詫びる。
「お幸せにね」
目頭が熱くなる、まだ泣いちゃダメ。
店を出たところで、「じゃあ、また」と微笑みを残して正木さんは去っていった。大学に進学すれば構内で顔を合わせることもあるだろう。そのときは笑顔で再会しよう。でも今は、涙が止まらない。
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