158 / 377
第七章 光が射す方角
嫉妬
しおりを挟む
貴族院へと到着するや、私は早速と絡まれていました。
相手は例によってミランダなのですが、レセプションパーティーで目立った事に対する文句があるようです。
「貴方、少し図に乗りすぎではなくて? ここはセントローゼス王国なの。貴方がいるべき小国ではなくてよ?」
今となっては何も思わない。
ミランダの取り巻きであったサマンサは既に処刑されていますし、たった一人で向かってきたところで小鳥のさえずり程度にしか感じません。
「サマンサ・マキシム侯爵令嬢は処刑されましたよね? 私は彼女が自発的にあのような暗殺を企てるとは思えないのです。どこかの誰かに指示されたとしか……」
私は強気に返す。イセリナを暗殺しようとしたご令嬢はメルヴィス公爵家の寄子なのです。
証拠不十分にて疑惑は証明されませんでしたが、何らかの圧力がかけられていたのは間違いありません。
「その件は無罪で確定しておりますわ! 私はサマンサに指示など出しておりません!」
「証拠がなかっただけですよ。誰もが貴方様を疑っております。子飼いのご令嬢が処刑されたというのに、堂々と貴族院へ入学してくる方がどうかと思いますわ」
私の話にクスクスと笑い声が聞こえました。きっと誰もが理解していたのだと思います。
なぜならサマンサ・マキシムはリッチモンド公爵と無関係。
ランカスタ公爵家の後継者を抹殺する理由が北部にあるマキシム侯爵家にあるはずもなく、四大公爵家の一角が衰退をして利益を得られるのは一つしかないからです。
「あ、貴方ね……?」
「何でしょう? 朝から不愉快ですわ。レセプションパーティーでミランダ様が不人気であったのはメルヴィス公爵家の問題に他なりません。私とは無関係です。沈みゆく船に乗ろうとする者がどれほどいらっしゃるのか。まだ理由が分からないのであれば、お爺さま……いえ、お父様でしたわね? 年老いた公爵様に聞いてみてはいかがでしょう? きっと直ぐに解決いたしますわ」
今も遠巻きに笑い声が聞こえています。
北部での求心力でさえ落ちていると聞いている。貴族院に入る者は事前に調べているでしょうし、自ら地雷を踏みに行く者がいるとも思えません。
「貴方、無礼ですわよ!?」
今までどれほどチヤホヤとされてきたのか。現実を見ようともしないミランダには辟易としてしまう。
「私は別に貴方様の寄子でもなければ、下位貴族でもございませんわ。どうぞ訴えてくださいまし。ラマティック正教会は正式にアウローラ聖教会から分派した教会です。貴方様が訴えたのなら、さぞかし親身になって話を聞いてくださるでしょう」
朝から気分が悪い。
だから私は突きつけてやります。この女が別に特別な存在ではないことを。
「悔い改めよと……」
失笑が一段と大きくなりました。
残念だけど喧嘩を売る相手が悪いわ。ろくな手札もないくせに、権力だけで相手を威圧するとか馬鹿にしないでくれるかな。
流石のミランダも周囲の笑い声に気付いています。ばつの悪そうな顔をして、私の前から無言で去って行きました。
溜め息を吐く私はイセリナの隣に着席します。
どうして、こんなにも苛立つのか。
理由は明々白々としていたのですけれど、私は事実から目を逸らすように不機嫌さを露わにしています。
「ルイ、八つ当たりもほどほどにしなさい?」
どうしてかイセリナはそんな風に言った。
不機嫌さは彼女にも分かったことでしょうけれど、私は売られた喧嘩を買っただけ。何の謂われもないはずです。
「八つ当たり?」
「そうでしょ? ルイはどこまでいっても他国の要人。対するミランダは疑惑こそあれど、歴とした王国の上位貴族ですわ。ルイが思うように動けないのに対して、ミランダを縛るものなどありませんもの……」
言われてみると確かに。
昨日の夜は少しばかり楽しかった。でも、それは朝起きるまで。
目が覚めた私はまるでシンデレラであるかのように、魔法が解けていることを実感していたのですから。
ま、自業自得だよね。得られた結論はイセリナが話した通りでした。
「私は嫉妬していたのかもしれない……」
相手は例によってミランダなのですが、レセプションパーティーで目立った事に対する文句があるようです。
「貴方、少し図に乗りすぎではなくて? ここはセントローゼス王国なの。貴方がいるべき小国ではなくてよ?」
今となっては何も思わない。
ミランダの取り巻きであったサマンサは既に処刑されていますし、たった一人で向かってきたところで小鳥のさえずり程度にしか感じません。
「サマンサ・マキシム侯爵令嬢は処刑されましたよね? 私は彼女が自発的にあのような暗殺を企てるとは思えないのです。どこかの誰かに指示されたとしか……」
私は強気に返す。イセリナを暗殺しようとしたご令嬢はメルヴィス公爵家の寄子なのです。
証拠不十分にて疑惑は証明されませんでしたが、何らかの圧力がかけられていたのは間違いありません。
「その件は無罪で確定しておりますわ! 私はサマンサに指示など出しておりません!」
「証拠がなかっただけですよ。誰もが貴方様を疑っております。子飼いのご令嬢が処刑されたというのに、堂々と貴族院へ入学してくる方がどうかと思いますわ」
私の話にクスクスと笑い声が聞こえました。きっと誰もが理解していたのだと思います。
なぜならサマンサ・マキシムはリッチモンド公爵と無関係。
ランカスタ公爵家の後継者を抹殺する理由が北部にあるマキシム侯爵家にあるはずもなく、四大公爵家の一角が衰退をして利益を得られるのは一つしかないからです。
「あ、貴方ね……?」
「何でしょう? 朝から不愉快ですわ。レセプションパーティーでミランダ様が不人気であったのはメルヴィス公爵家の問題に他なりません。私とは無関係です。沈みゆく船に乗ろうとする者がどれほどいらっしゃるのか。まだ理由が分からないのであれば、お爺さま……いえ、お父様でしたわね? 年老いた公爵様に聞いてみてはいかがでしょう? きっと直ぐに解決いたしますわ」
今も遠巻きに笑い声が聞こえています。
北部での求心力でさえ落ちていると聞いている。貴族院に入る者は事前に調べているでしょうし、自ら地雷を踏みに行く者がいるとも思えません。
「貴方、無礼ですわよ!?」
今までどれほどチヤホヤとされてきたのか。現実を見ようともしないミランダには辟易としてしまう。
「私は別に貴方様の寄子でもなければ、下位貴族でもございませんわ。どうぞ訴えてくださいまし。ラマティック正教会は正式にアウローラ聖教会から分派した教会です。貴方様が訴えたのなら、さぞかし親身になって話を聞いてくださるでしょう」
朝から気分が悪い。
だから私は突きつけてやります。この女が別に特別な存在ではないことを。
「悔い改めよと……」
失笑が一段と大きくなりました。
残念だけど喧嘩を売る相手が悪いわ。ろくな手札もないくせに、権力だけで相手を威圧するとか馬鹿にしないでくれるかな。
流石のミランダも周囲の笑い声に気付いています。ばつの悪そうな顔をして、私の前から無言で去って行きました。
溜め息を吐く私はイセリナの隣に着席します。
どうして、こんなにも苛立つのか。
理由は明々白々としていたのですけれど、私は事実から目を逸らすように不機嫌さを露わにしています。
「ルイ、八つ当たりもほどほどにしなさい?」
どうしてかイセリナはそんな風に言った。
不機嫌さは彼女にも分かったことでしょうけれど、私は売られた喧嘩を買っただけ。何の謂われもないはずです。
「八つ当たり?」
「そうでしょ? ルイはどこまでいっても他国の要人。対するミランダは疑惑こそあれど、歴とした王国の上位貴族ですわ。ルイが思うように動けないのに対して、ミランダを縛るものなどありませんもの……」
言われてみると確かに。
昨日の夜は少しばかり楽しかった。でも、それは朝起きるまで。
目が覚めた私はまるでシンデレラであるかのように、魔法が解けていることを実感していたのですから。
ま、自業自得だよね。得られた結論はイセリナが話した通りでした。
「私は嫉妬していたのかもしれない……」
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
75
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる