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女衒初仕事の褒美、すっぽん女(八十話)

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 さあさあ、土佐兄の言いつけ通り、相模ん国で女三人仕入れての江戸凱旋や。銭をびた一文払わずに、口八丁で連れて来たわいな。みんな、何らかの訳あってのこつや、オラは繋ぎ役だのう。
 あん三人を、一度だけ抱いて味見してある。こいも大事な仕分けよ。壺を六等分にしたども、こいから真打登場で、仕込まれたのち置屋行きや。オラの仕分けの良し悪しは、後で説教がてらに聞こうかい……

 オラ 「土佐兄、相模から女三人連れて来やした。言われた通り、漁村で一人、宿場で一人、山奥からは一人でやす。初めの漁村では、親のいねえ孤児で、タマゆう、おぼこ上がり。宿場では、怪力で客引きやっとった飯盛り女の、キミゆう三十路。そんで、駿河国境からは男好きの美人、サヨですがね」
 土佐兄「うん、でかした。口だけで江戸行きをまとめたんやな。三人と言われたら三人でええ、迷いは禁物やきな。そんで、一番大事な壺の仕分けはどないやった?」
 オラ 「はっ、タマは初物でやした。オラがやんわりと可愛がり、中の上と付けやした。あん飯盛女は、東海道の旅人に使い込まれ過ぎておりやす、中の下。サヨゆうんは、ええ女だけあって、女の悦びにはまる筈、壺もええです、上の下では」
 土佐兄「ほうか、わかったやき、後はオレが技を仕込んでから、高く売るきな」
 オラ 「あん女達を、深川の町屋に待たせておりやす、よしなに」
 土佐兄「ほら、褒美ん小判や、取っとき。そいと、とっておきの女を抱かせたるき。今度のは、すっぽんのマサゆうての、オレら女衒仲間で遊びよる女。おまんも、マサのすっぽん技喰らおうて昇天やで、こいも褒美やき。いつもの町屋に送ったる、朝んなんまで、腹いっぺえすっぽん喰いや。おまんの生汁吸われるだけでのうて、すっぽん女を骨の髄まで味わうんやで。置屋に売るんはもったいねえ、こいも闇ん女やき。じゃあな」
 オラ 「ごちんなりやす……」

 役得と言うか、女衒稼業は極楽びたりやのう。表に出てこん闇ん女は、男を空にさせんは朝飯前や。そいどころか、赤玉出るまで容赦せんのもおるんやろ。今度のすっぽん女とはいか者ぞ、怖い者見たさもあるわい。

 オラ「おい、待たせたのう、あんたがオラん夜研ぎしてくれるんやな」
 マサ「そうや、土佐親分の言い付けや。朝まで喰ったり喰われたりやで」
 オラ「何やら聞くところによんと、すっぽんのマサゆうな、つまり、その……」
 マサ「河んいるスッポンを同じや、一度喰らいついたら、よう離れんでよ。女ん下ん口と、上ん口使おうて男を空っぽんすんや。お前、赤玉出るまで許さんからな、アテが全部呑みこんだる。まるでスッポンの生血がええようにな、同じやで」
 オラ「いや、何も、赤玉ん手前で充分だて、空砲で仕舞いにの」
 マサ「ざまがねえでよ。女衒連中は赤玉ぶってまで女喰うでよ。じゃあ、アテん体を生血が出るかのように、滅茶苦茶にしてんか。ほな、初めは手加減したるわ。ああ、若いのう、やっぱ若いんがええ。うんにゃ。もう、もう我慢出来ねえ、手加減すんの止めや。赤玉欲しかー」
 オラ「おいおいおい、手加減やで、頼む、頼む……」




 スッポンの生血は、滋養強壮にええゆうが、本当やろう。
 すっぽん女は、女衒連中の赤玉呑み過ぎで血の気が多かったのう。
 とことん仕込まれておったわ、さすがは闇ん女や。
 オラは朝方の空砲ぶった後、厠へ行く振りして逃げ出したわ。赤玉ん手前で、何とか女をかわしましたて。
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