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玉座より
国王
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王宮の冷たい廻廊に、3人の足音が響く。モデューセ公爵夫妻。そしてその背後をとぼとぼと歩くのは、ミレーユだった。
白いドレスは、染みや皺の1つもない。
けれどミレーユの表情は憂いを帯びている。美しき公爵令嬢のその姿に、頭を下げる近衛兵や、文官達はちらりちらりとそのかんばせを伺う。
「ミレーユ。もっと私の傍へおいでなさいな」
ミレーユの母・エリーチェが即すと、ミレーユはまたほんの少し足を早めて、母の手に支えられながら歩く。人とすれ違うたびに、ミレーユは顔を伏せて、母の手をぎゅうと握り込んだ。
王宮の奥深くにある謁見室の扉は、王宮にある全ての扉の何倍も大きい。金色と青のコントラストが美しい扉は、しかし今はミレーユを委縮させるのに十分なものだった。
立ちすくむミレーユに、公爵夫妻は「今すぐにでも屋敷へ帰らせて休ませてあげたい」と思ったが、扉はすでに開き始め、その奥、大きな階段の上に設置された玉座には国王の姿があった。
仕方なく進み、国王の前で礼を取る。入口から玉座まで続く赤い絨毯の上、白いドレスの裾が白い薔薇のように広がった。
「すまないな、公爵。いきなり呼び出したりして。皆、立ちなさい」
親しげな様子で声を掛けるのは間違いなく国王だった。温和で穏やかなその声は、謁見の間に優しく響く。ミレーユはすっと立ち上がった。
「今日はお前の娘に用があってな。そうだろう、リダル」
玉座の背後からリダルが、姿を現す。
(……最悪だわ)
ミレーユはこちらへ微笑みを向けてきたリダルには答えず、父である公爵の背にそっと隠れた。
「はい。ですが、父上だって良心が痛んだからこそ、こうして公爵一家を招かれたのでしょう?」
美しい笑みをたたえるリダルに、国王は「うむ」とたっぷりした髭を撫で、そっと手をあげた。その手の意味をミレーユが考えあぐねている内に、謁見室の大扉が重厚な音をたてて再び開く。
そこから現れた信じがたい人物達に、ミレーユは一気に顔を青ざめさせた。
「これは、これは……侯爵」
ミセラは訝しげにつぶやいた。そう。入って来たのはアランの父・カダール侯爵とアランの2人だった。
「ミレーユ!」
アランは、喜々とした表情を浮かべ(ているようにみえる)、すぐに駆け寄ろうとしてくるが、意外にもそれを留めたのは国王だった。
「留まりなさい」
その声はどこか冷たく、叱るような響きがあった。まさか国王直々にそのような言葉を掛けられるとは思わず、アランは顔を真っ青にして、すぐに留まった。
白いドレスは、染みや皺の1つもない。
けれどミレーユの表情は憂いを帯びている。美しき公爵令嬢のその姿に、頭を下げる近衛兵や、文官達はちらりちらりとそのかんばせを伺う。
「ミレーユ。もっと私の傍へおいでなさいな」
ミレーユの母・エリーチェが即すと、ミレーユはまたほんの少し足を早めて、母の手に支えられながら歩く。人とすれ違うたびに、ミレーユは顔を伏せて、母の手をぎゅうと握り込んだ。
王宮の奥深くにある謁見室の扉は、王宮にある全ての扉の何倍も大きい。金色と青のコントラストが美しい扉は、しかし今はミレーユを委縮させるのに十分なものだった。
立ちすくむミレーユに、公爵夫妻は「今すぐにでも屋敷へ帰らせて休ませてあげたい」と思ったが、扉はすでに開き始め、その奥、大きな階段の上に設置された玉座には国王の姿があった。
仕方なく進み、国王の前で礼を取る。入口から玉座まで続く赤い絨毯の上、白いドレスの裾が白い薔薇のように広がった。
「すまないな、公爵。いきなり呼び出したりして。皆、立ちなさい」
親しげな様子で声を掛けるのは間違いなく国王だった。温和で穏やかなその声は、謁見の間に優しく響く。ミレーユはすっと立ち上がった。
「今日はお前の娘に用があってな。そうだろう、リダル」
玉座の背後からリダルが、姿を現す。
(……最悪だわ)
ミレーユはこちらへ微笑みを向けてきたリダルには答えず、父である公爵の背にそっと隠れた。
「はい。ですが、父上だって良心が痛んだからこそ、こうして公爵一家を招かれたのでしょう?」
美しい笑みをたたえるリダルに、国王は「うむ」とたっぷりした髭を撫で、そっと手をあげた。その手の意味をミレーユが考えあぐねている内に、謁見室の大扉が重厚な音をたてて再び開く。
そこから現れた信じがたい人物達に、ミレーユは一気に顔を青ざめさせた。
「これは、これは……侯爵」
ミセラは訝しげにつぶやいた。そう。入って来たのはアランの父・カダール侯爵とアランの2人だった。
「ミレーユ!」
アランは、喜々とした表情を浮かべ(ているようにみえる)、すぐに駆け寄ろうとしてくるが、意外にもそれを留めたのは国王だった。
「留まりなさい」
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