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エドモンド

好み

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「アランには、前の方が良かったって言われたわ」
「冗談だろう。あれはあれで良かったが、今日のあなたの方が輝いているぞ」
「あなたは本当にすごいのね。私も今日のドレスの方が似合っていると思っていたんだもの。見る目があるわ。それとも、女心が分かるからそんなことを言うの?」
「違う、違う。本当に心から褒めてるぞ」

ほんの少し慌てた様子を見せるエドモンドに、クスリとミレーユは笑いを零した。

「……それで?アラン殿とはどうだ?今のところ上手くやってるか?」

顰めた声で問われて、ミレーユは思案した後に首を振った。ほんの僅かの間に、エドモンドはどこからか水の入ったグラスを持ってきて、それをミレーユに手渡した。レディに喋るように即しておいてグラスも渡せないアランとは大違いである。

「上手く……やってるかどうかは分からないの。確かに私が冷たい態度を取ればアランは焦るし、エリ―も心を痛めてるみたいだけど。こんなことしてたって、全然すっきりしないの」
「……そうか」

エドモンドが何かを考え込むようにして顔を俯けた時、ふいに顔をあげて艶やかに笑ってみせた。ミレーユの背筋がゾワリと泡立つ。

「あなたの留飲は少しも下がらなかったか?」
「いいえ、少しは下がったけど。どうしてそんなこと聞くの?」
「……あなたは今、アランが何を考えているか分かるか?」
「……そんなの分かんないわ」
「あなたに飽きられてしまうのではないかという恐怖が僅かにその心に芽生えたんだ。あの男は……結婚を急ぐだろうな」
「公爵位を手に入れたいから?」
「ああ」
「……それなら、私がその場で結婚を断ればいいじゃないの」
「ああ。だがなあ……。これは公爵家と侯爵家の縁談だ。事はそう簡単にはいかない。これからは侯爵家から矢のように早く結婚をと催促がくるだろう。遠回しにな。侯爵家は公爵家より爵位は下だが……知っているだろう?侯爵家の現当主、アランの父親には妹がいる。その妹君は、現国王陛下のご側室で、しかも第二皇子を産んでいる。今の公爵家には王家との繋がりはない。というより薄いと言った方が正しいな。つまり、王家との繋がりが濃い時点で、侯爵家の方が政治的に有利だ。そんな状況で、こちらが一方的に結婚を断れば……あなたの父上が危うい立場に立たされる」
「……そんな」

この人はそんなことまで考えていたのか。とミレーユは驚愕すると共に絶望した。つまり、こちらから一方的に結婚を断ることが出来ない、つまり証拠もなしにアランの浮気と騒いで婚約破棄するのはもっとしてはいけないこと、というわけか。

「だからあなたは……私の留飲をほんの少し下げる方法を提案したのね」
「……留飲を下げて、落ち着いて行動しなけりゃ、侯爵家に足元をすくわれるからな。……それに、俺にも策を練る時間が必要だった。……まずは確実に証拠を掴まないとな」

片目を瞑るエドモンドに対して、ミレーユは慎重に頷いた。
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