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友人
最悪
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「アラン……」
先まで微かに開いていた瞼をぱっちりと開き、自分を凝視するミレーユに驚いたのか、アランは大げさに肩をはねた。その横に立っていたエリーは、あからさまに眉を顰める。
甘い時間を邪魔されて内心腹が立っているのだろう。
(腹を立てたいのは私の方なのだけど……)
そう心の中で文句を言いながら、ミレーユは不機嫌な顔をつくる。
エドモンドに言われた通り、アランを焦らせるために効果的な方法とそれに付随してエリーの心を痛めつける方法を実行することにする。
「……帰って頂戴」
「ミレーユ?一体、急にどうしたって言うんだ」
(うるさいわね。そんな大声を出さないで頂戴)
こっちは病人なのだ。こういう態度1つ取っても、アランはミレーユが心配で来たのではなく、エリーに会いに来たことが分ってしまう。あるいはミレーユが何か病に罹ってしまった場合、まだ婚約者という不安定な立場では爵位を手に入れることが出来ないのではないか。と踏んで焦ったのか。
どちらかは知らないが、どちらにしたって最低なことに変わりはない。
ミレーユは何だか、投げやりな気持ちになって「あなたがいると不快だから早く帰って」と口から零しそうになってしまったが、何とかぐっと堪える。
匙加減とやらが非常に難しい。
不貞を悟られたと思わせず、あからさまに「愛してる」だの「大好き」だのと言わないこと。
まさかミレーユの心が自分から離れるわけがあるまいと考えているであろうアランは、少なからずいつもとは違い、好意を真っ直ぐに伝えてこないミレーユに必ず焦る。
エドモンドの言葉をすべて理解したわけではないが、そのくらいのことは分かる。それが全て上手く行くとは考えないが、多少の効果はあるだろう。できるだけ長く、そしてむごく苦しめたいと思っているミレーユにとってはなかなかに魅了的な提案だった。
(……それでも、難しすぎるわ)
アランを焦らせるために、どこまでの発言が許されるのか。どれくらい冷たくして、どれくらい甘くしてやればいいのか。
「ミレーユ……苦しいんだね。だから、そんなことを言うんだろう。安心していい。今日はずっと僕がここにいるから」
(……最悪だわ)
ミレーユが冷たくすると、確かにアランは猫なで声を出してミレーユの関心を誘おうとする。ちらりと見たエリーの表情はあからさまに嫉妬で歪んでいた。
(……はあ、いつまでこんな茶番を続ければいいのかしら)
さっさと、こんな茶番は終わりにして2人が目の前から消えてくれればいいのに。
熱で朦朧とする頭で、ぼんやりと未来の自分がこの2人を前にして高笑いしている姿を想像しながら溜飲を下げ、ミレーユは何とかこの最悪な状況の部屋の中で眠りについた。
先まで微かに開いていた瞼をぱっちりと開き、自分を凝視するミレーユに驚いたのか、アランは大げさに肩をはねた。その横に立っていたエリーは、あからさまに眉を顰める。
甘い時間を邪魔されて内心腹が立っているのだろう。
(腹を立てたいのは私の方なのだけど……)
そう心の中で文句を言いながら、ミレーユは不機嫌な顔をつくる。
エドモンドに言われた通り、アランを焦らせるために効果的な方法とそれに付随してエリーの心を痛めつける方法を実行することにする。
「……帰って頂戴」
「ミレーユ?一体、急にどうしたって言うんだ」
(うるさいわね。そんな大声を出さないで頂戴)
こっちは病人なのだ。こういう態度1つ取っても、アランはミレーユが心配で来たのではなく、エリーに会いに来たことが分ってしまう。あるいはミレーユが何か病に罹ってしまった場合、まだ婚約者という不安定な立場では爵位を手に入れることが出来ないのではないか。と踏んで焦ったのか。
どちらかは知らないが、どちらにしたって最低なことに変わりはない。
ミレーユは何だか、投げやりな気持ちになって「あなたがいると不快だから早く帰って」と口から零しそうになってしまったが、何とかぐっと堪える。
匙加減とやらが非常に難しい。
不貞を悟られたと思わせず、あからさまに「愛してる」だの「大好き」だのと言わないこと。
まさかミレーユの心が自分から離れるわけがあるまいと考えているであろうアランは、少なからずいつもとは違い、好意を真っ直ぐに伝えてこないミレーユに必ず焦る。
エドモンドの言葉をすべて理解したわけではないが、そのくらいのことは分かる。それが全て上手く行くとは考えないが、多少の効果はあるだろう。できるだけ長く、そしてむごく苦しめたいと思っているミレーユにとってはなかなかに魅了的な提案だった。
(……それでも、難しすぎるわ)
アランを焦らせるために、どこまでの発言が許されるのか。どれくらい冷たくして、どれくらい甘くしてやればいいのか。
「ミレーユ……苦しいんだね。だから、そんなことを言うんだろう。安心していい。今日はずっと僕がここにいるから」
(……最悪だわ)
ミレーユが冷たくすると、確かにアランは猫なで声を出してミレーユの関心を誘おうとする。ちらりと見たエリーの表情はあからさまに嫉妬で歪んでいた。
(……はあ、いつまでこんな茶番を続ければいいのかしら)
さっさと、こんな茶番は終わりにして2人が目の前から消えてくれればいいのに。
熱で朦朧とする頭で、ぼんやりと未来の自分がこの2人を前にして高笑いしている姿を想像しながら溜飲を下げ、ミレーユは何とかこの最悪な状況の部屋の中で眠りについた。
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