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File No. 90 往生際
しおりを挟む入間教授は結婚前、菅田教授たち登山愛好家とともに、しょっちゅう山登りを楽しんでいた。本格的な山からハイキング気分の山まで。
『入間君の行き先? 何の話かね。こんな時間から山なんか登れないだろ。嫁さんの別荘にでも行ったんじゃないのかな』
あまり刺激的なことは話せない。それでも遠慮してる場合でもないと竜崎はほぼほぼ真実を話した。
本日、既に帰宅していた菅田教授は、入間が学生を拉致して逃げてることを俄かには信じられず、竜崎の話を真剣に受け取るのに少々時間がかかってしまった。
それでも竜崎は声を荒げるような愚行はせず、根気よく説明する。
「奥様の別荘には行かないと考えています。というか、そこはもう確認済みなんです。お願いです。教授、どうかお知恵をお貸し下さい。私の友人が……危険なんですっ」
しばしの沈黙。だが、スマホの向こうで教授が記憶を探っているのが竜崎にはわかった。
『竜崎君、入間教授はレクサスで吉川君と一緒なんだな。ああ、わかってる。それなら一つ心当たりがある』
菅田教授から伝えられた場所は、入間が彼ら登山愛好家と山に登っていたころ、頻繁に訪れていた別荘地だ。登山の後、貸別荘と温泉で疲れを癒していたという。
『そこなら車で行ける。あれからずっと行ってないから、別荘地はどうなってるかわからんが……』
「教授、ありがとうございます! はい、必ずご連絡します」
竜崎は電話を切ると同時に、自分のスマホでその場所を調べる。最寄りのインター、ルート等、頭に叩きこんだ。
「風見さん、二つ先のインターで降りてください」
「え? なんでだ。入間はまだ高速だぞ。それに、菅田が言った別荘地の最寄りインターはそこじゃない。もう一つ先だ」
「この先はしばらく渋滞しています。中央道だと側道が使いづらいから追いつけない。それに二つ先のインターから下道を走れば……サイレン鳴らしてですが、先回りできるはずです」
「それはそうだが。その場所だと決まったわけではないだろう?」
竜崎はグッと息を呑みこんでから応じる。
「俺はそこに賭けます。この場所から藍を助けられるのはそれしかない。間違っていたなら、田代さん達、先行している刑事さん達に任せます」
菅田教授が伝えた場所は、捜査本部を通して追跡中の警察車両に連絡されている。予想通りのインターで降りれば、地元の警察署も動くよう要請もしていた。
また、田代達の先行車も渋滞で阻まれてはいるが、入間の高級車の場所はシステムから逐一報告されて見失ってはいなかった。
風見は大きく息を吐き、前面の無線機を手に取った。
「風見だ。神田201号は情報提供された別荘地に向かう。他車両は引き続き、マル被のレクサスを追跡するように」
『風見さん、なにか勝算あるんですか?』
すぐに田代刑事の声がスピーカーから響いた。
「ないからこの車だけで行くんだ。見失うなよっ、田代!」
無線機を元に戻す。カチャリと音が鳴った。
「風見さん、ありがとうございます」
「なに、私ら一台くらい脇にそれても大事ないだろう。だが、入間が高速をさらに進んだら、おそらく間に合わん。それはいいな」
「はい……でも、高速に戻って追ってはください。猛スピードで」
風見はそこで改めて竜崎の顔を見る。
「なんだ。意外に往生際が悪いんだな」
「あたりまえです。そう簡単に諦めるわけにいかないんで」
竜崎の目は、もうスマホ画面を凝視し別荘地に行くべく最短距離を調べている。目的のインターまでもう少しだ。
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