Campus・Case(キャンパス・ケース)番外編追加しました!

紫紺

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File No. 28 烈火のごとく

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 僕はサッと読んだメールの内容に驚愕して、思わず挙動不審な態度を取ってしまった。
 スマホを背中に隠し、空いた手を竜崎の目の前でフリフリする。座ったまま、少々後退ってもいた。

「怪しいな。それ、違わないだろう。なにを要求されたんだ、藍。おまえが貧乏学生だと知ってるはずだから、お金じゃないだろう?」

 図星だ。僕自身、拾ったのが僕のキーホルダーだと知った犯人は、どこに旨味を感じたのかと思ってたけど。このメールを読んだらそれは一目瞭然。そして相当ショックだ。

「それが……あの」

 言い逃れは難しいと悟った僕はガックリと肩を落とす。

「これ……」

 でも、自分の口で言うのはあまりにも屈辱で、僕はそっとスマホを差し出した。竜崎は何も言わずに受け取り、目を通す。手の中のスマホが小刻みに揺れているのに気付いた。うめき声とともに。

「許さん……こいつ、警察に任せようかと思ったが、絶っっ対俺が捕まえてぶん殴ってやる!」
「お、おいおい竜崎、どーした。そんな怒らなくても……」
「これが怒らずにおれるか! 畜生! ふざけやがって。絶っ対こいつを許さんからな、俺は!」

 目がマジになってる。顔も真っ赤だし、こんなに真剣に怒ってる竜崎を見たのは初めてだ。日本語まで変になって。烈火のごとく怒るってこういうのを言うんだなと思っちゃった。
 なんだか今回の事件を通して、始めて見る竜崎の姿が多い。とても貴重な瞬間ばかりに立ち合えて、得した気分だ。いや、僕だってこの脅迫者は許せないけど。

『裸の写真。特に恥ずかしい写真を何枚か送れ。私がいいと言うまでだ。飽きたらキーホルダーを返してやる』

 メールにはそうあったんだ。恥ずかしい写真ってなんだよ。マジで〇ね。こんな不適切なことを言うような僕じゃないけど、本気でそう思った。



 相手の携帯はプリペイドだろう。アドレスからそうだと思えた。警察に届ければ、割と簡単に特定できるかもしれないけど、竜崎が断固として拒否した。
 僕もこの内容を風見さん達に見せるのは苦痛すぎるので、全く異論はない。

 ――――でも、竜崎はやっぱり僕のことわかってくれてるな。教授のセクハラでもそうだったけど、僕がそういうの凄く嫌なのわかってる。だから、あんなに怒ってくれたんだ。

 こういう被害にあったことない人は、「いいじゃん、男だし。減るもんじゃないやん」なんて軽く受け流すこともある。でも、本人にとっては殴られるほうがマシと思うくらい嫌だし傷つくことなんだ。

 尊厳とか難しいこと言わないけど、そこは女性と同じだよ。だから僕は、そう言う立場になりやすい女性の人は大変だって敬服してるんだ。

「だが、こいつがこのキーホルダーが藍のだと分かるまで多少時間が必要だったようだな。知ってたら、すぐにも脅迫してきそうなものだ。それが目的で拾ったんだろうし……」

 ようやく落ち着きを取り戻した竜崎が、胡坐の膝の上に肘を置き、その手を顎にのっける。和風考える人みたいなポーズでそう言った。

「なにか心当たりあるか? 藍」

 そう言われても、なんもない。僕はまた、枯れ果てた大地のような脳内から、記憶を呼び覚まそうと頑張った。



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