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File No. 21 ゼミ生
しおりを挟む塩谷教授のゼミは当然のことながら閉講になった。ゼミ生はそれぞれ別のゼミに。都市計画の講義は当面、土屋さんや都市工学科内の准教授たちが行うそうだ。
そのうちどこかの教授を招聘するんだろう。これを機に土屋さん、准教授に昇格できるといいな。それだけの能力があるというのは、講義を受けていた僕ら学生の共通認識だ。
――――とはいえ、僕は取ってないから無関係なんだけど……塩谷教授じゃないなら、受けたいななんて、今更だよね。
ゼミと言えば昨日の月曜日、最年長の院生、能代さんと学食でバッタリ会った。
「よお、第一発見者。警察から随分絞られたんだって?」
などと、不謹慎なことを言う。院生だからか、僕ら学生より服装に気を使って見える。本日もブルーストライプのボタンダウンシャツにボトムス、ジャケットを羽織っていた。
けど、言い草はガキっぽい。テーブルには空になった食器とリップクリームが転がっていた。
「そんなことはないですよ。何度聞かれても同じことしか言えないし。能代さんだって、あの日研究棟にいたんでしょ?」
僕らが警察に連絡した後、その騒ぎを聞きつけたのか、いつの間にかあの騒然とした研究室に顔を見せていた。
「おお、そうそう。美山も知ってる通り、理工学系の学生は土日も大学に来てる奴多いからな。で、あの日も俺を初めとする結構なゼミ生が来てたんだよ。なのに、教授が五時までに出てけって言うから。また可愛い子を呼ぶのかとウンザリしてた」
あからさまにいやらしい視線を投げてきた。椅子に座ったまま大きく股を広げ、僕を上目遣いで見ている。おまけにまた唇をぺろりと舐めた。癖なのか、ただ唇が渇くからなのかしらないけれど、嫌な感じ。
――――でも、彼らゼミ生にしてみれば、いい迷惑だったんだろうな。
「で、仕方なく地下の資料室にいたんだ。そしたらいきなり警察官がやってきて、ここに居る連中、みんな二階の会議室に集まれって」
二階の会議室は研究棟で一番広い部屋だ。そこで研究棟にいた全員、名前と所属学科、それに住所を書かされたと。
塩谷教授のゼミ生だった能代さんは、現場に連れていかれたのだと少し高い地声を半音ほど高くして言った。
「それで? もう容疑者からは外されたのか?」
興味津々の目を輝かせて聞いてくる。刑事たちからは、死亡推定時刻や僕のアリバイについて、まだ人に話すなと言われている。容疑者が絞られていない今、どこにそいつがいるかわからないからだと。
「さあ、わかりません。でも、僕は犯人じゃないですから」
優等生の回答をすると、能代さんはやや薄目の唇をへの字に曲げた。
「ち、つまんねえな。土屋さんも同じようなこと言ってたし」
「そう言えば、土屋さんはどこにいたんですか。あの人も人払いされてたんでしょうけど」
土屋さんも警察がわさわさしたころ、教授の部屋に戻ってきていた。帰宅したわけじゃなかったんだ。
教授が殺されたと言うのに、どこかハイテンションだったように思う。あれも緊張の裏返しかな。非日常のことが起こったから、各々性格が出るものだ。
「さあ。資料室にはいなかった。あの人も、教授が殺されたって時に全然動じてなかったな。そりゃ、ろくでもない教授だったから、泣けとは言わんけどさ」
眼鏡のブリッジを指ではじくようにしながらそんなふうに言う。能代さんも僕と似たような印象を持ったようだ。教授と土屋さんはうまくいってると思ってたけど、そうでもないのかな。
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