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File No. 20 仮設 実験 検証
しおりを挟む早めに昼食を済ませてバイトに行くと竜崎が言うので、僕らは近くのハンバーガー屋に入った。
竜崎が行ってるラーメン屋はランチタイムの客数が半端ないらしい。それでも平日よりはマシらしいけれど。
「あのさ……僕のアリバイは大丈夫みたいだけど、竜崎のはどうなの? ちょっと心配してるんだけど」
僕はハンバーガーを頬張りながらそう切り出した。竜崎は平気そうだけど、どうしても気になって仕方ないんだ。
「あ? ああ。なんか何度も聞かれたけど、俺が家出たの5時過ぎだからな。その前は普通にない」
「そうなんだ……」
「なんだ。気にすることないよ。犯人は他にいるんだから」
「そうだけど……」
妙に断言する。まさか犯人の目星がついてるとか。な、わけないか。
『ま、わかってたけど』
さっき、竜崎は死亡推定時刻が分かった時、そんなことを言ってた。僕はそれもどういうことなのかと考えてた。
――――そう言えば、竜崎は警察に電話したあと、なにやら教授の周りをうろうろしてた。ペン先で教授の指を持ち上げたり。
僕は怖くて教授の死体のそばはもちろん、部屋に入るのも嫌だったんだ。パニック状態だったし、見るのも怖かった。あの時、竜崎にはなにかわかったんだろうか。ずっと予想もできない鋭い推理を披露してる。
「ん? どうした?」
僕の視線に気付いたのか、竜崎が僕の顔を覗き込んで来た。うおっ、なんか近いよ。いや、嬉しいんだけど照れてしまうし、頬のあたりが熱くなるっ。
「な、なんでもない。ただ……」
「ただ? なんだ?」
竜崎カッコよすぎるんだよ。なんて言えない心の声。
「その、なんていうか、そんな推理力あるなんて思わなかったから」
「推理力? そんなもの別にないよ」
あっという間に食べ終え、くしゃくしゃと包装紙を丸める。節々がはっきりしてる大きな手に意味もなくドキリとした。
「あのさ。こういうのも俺たちが日常茶飯事やってる仮説、実験、検証と同じなんだよ。あとはちょっとした知識。わかんなきゃネットで調べればいい」
「はあ……」
コーラをごくごくと喉を鳴らして飲んでる。これ飲み終わったらバイト行くんだ……。ちょっと寂しい。僕もバイト行くか。休むとは言っておいたけど。
「なんてな。俺、実はミステリーとか好きだから」
「え、そうなんだ。初耳」
けど考えてみれば、竜崎は以前から観察眼は鋭かったのかもしれない。僕が元気なかったり、実家とうまくいってなかったり、塩谷教授に絡まれてたこと、何も言わなくても気付いてた。
あのキャンプに誘ってくれた時だって、僕が孤立気味なのを感じてたのかもしれない。
――――観察だけじゃない。優しいんだ、竜崎は。ずっと気にしてくれてたんだ。
始まりは階段教室でのちょっとした会話だったのに。僕はあの時隣に座ってくれた竜崎に、あの瞬間の奇跡に改めて感謝した。
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