がらくたのおもちゃ箱

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ライオンさんとシマウマさん

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ライオンさんはいじめっ子。いつもシマウマさんを追いかけては、その鋭い牙と爪でいたぶり回しておりました。

ある日のこと、ライオンさんの暴虐にとうとう耐えかねたシマウマさんは神様にお願いしました。
「神様。どうかお願いします。ライオンのやつらときたらひどいんです。私たちシマウマに牙や爪が無いのをいいことにやりたい放題。私たちにはライオンの奴らに対抗する手段がありません。何とか奴らを大人しくさせて下さい。」
「ふうむ…。それはよろしくないな。よし、わかった。何とかしてみよう。」

かくしてシマウマさんの願いは聞き入れられました。
次の日、全てのライオンさんから牙と爪が奪われたのです。ライオンさんはこれで以前のような横暴はできなくなりました。シマウマさんたちは大喜び。

しかしライオンさんは面白くありません。早速神様に抗議に向かいました。
「神様。何故俺たちから牙と爪を奪ったのですか⁉︎」
「ふうむ。お前たちライオンがその爪と牙で弱い者をいじめていたからじゃ。」
「そんな……!俺たちはライオンなんですよ!肉を食わなきゃ生きていけない!牙と爪無しでどうやって生きていけと言うんですか⁉︎」
「死肉を食えばよいじゃろう。いいか。お前たちは力が強すぎるんじゃ。強い者はいたずらに弱い者を脅かしてはいかん。」
「しかし……!」
まだ食ってかかろうとするライオンさんを見て、神様はピシャリと諌めました。
「くどいぞ。今まで散々好き放題やってきたんじゃ。少しは我慢したらどうだ。」
「……。」
ライオンさんのうなだれる様子を見て少し哀れに思いながらも、神様はそう言ってなだめるのでした。


その日からライオンさんとシマウマさんの力関係が変わって来ました。
牙と爪を奪われたライオンさんはそれでも力強く、まれにシマウマさんを腹いせに殴りつける者もおりました。しかしシマウマさんはそのようなことがあればすぐさま神様に言いつけ、ライオンさんへ罰を与えるように仕向けました。シマウマさんに危害を与えると我が身に返ってくると気づいたライオンさんは、もう必要以上にシマウマさんを傷つけようとはしませんでした。

次第にシマウマさんはサバンナの大草原を我が物顔で闊歩するようになりました。一方でライオンさんはどんどんと肩身が狭くなっていくばかり。食べられる肉もまずい死肉ばかりで体は次第に痩せ細っていきました。

シマウマさんの要求は次第にエスカレートしていき、ライオンさんに触られた途端やれ傷つけられただの、目があった途端脅しを受けただのと騒ぎ、その都度神様に言いつけたのでした。ライオンさんは必死に抗議しましたが、今まで散々に悪いことをシマウマさんにやってきたので信じてもらえません。一度神様に言いつけられたライオンさんは必ずと言ってもいいほど罰せられました。



ある日のことでした。
その日もシマウマさんはライオンさんに襲われたと言って神様に訴えました。いつものように神様は襲ったとされるライオンさんを呼びつけました。
「ライオンよ。またシマウマを傷つけたのか?」
「……何度も申し上げます。私は決してそんなことはしておりません。第一この腕を見てください。こんな細い腕であのシマウマを襲う事ができますか?」
そう言ってライオンさんは片腕を上げて神様に見せました。ライオンさんの腕は無残に痩せ細り、まるで枯れ木の細枝のようでした。こんな腕では襲いかかってもポキリと簡単に折れてしまいそうです。
「ふうむ……。お前の言うことももっともだ。では訴え出たシマウマもこの場に呼んで話を聞いてみようか。」
そういう訳で神様はライオンさんを訴えたシマウマさんをその場に呼びました。
シマウマさんは到着するやいなやえらい剣幕でまくしたてます。
「一体なんですか⁉︎神様!どうして私がライオンと一緒にいるこの場に呼ばれないといけないんですか⁉︎私はこいつに襲われたんですよ⁉︎被害者なんです!もうちょっと私の気持ちを考えても……。」
抗議を続けるシマウマさん。神様はなだめようとしたのですが、ある事に気がつき思わずシマウマさんに尋ねました。
「お前……。その姿は一体どうしたんだ。」
「え?」
シマウマさんはいつの間にやら、その口元に鋭い牙を、指先に尖った爪を備える姿になっておりました。身体は筋骨隆々としてたくましく、あの痩せっぽちのライオンさんに襲われたとはとても思えません。
その姿はかつて自分たちを襲っていたライオンさんの姿にそっくりなのでした。
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