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2『天使と悪魔』
2 第一章第七話「魔界へ」
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ゼノの元をどうにか去ったカイ達だったが、ヴァリウスの黒い穴の中はただただ沈黙が広がっていた。理由は一つ、全員がエイラのことを考えているのだ。死ぬために魔界へ向かったエイラのことを。
本来、こういう暗い時こそエイラがカイをからかったりするのだが当の本人はおらず、且ついつもうるさいカイが顔をしかめて大人しくしている。
イデア達はもちろんエイラのことも思っていたが、それと共にカイの様子も気になっていた。
イデア:
「カイ……」
カイは苛立ちを隠せないでいた。死ぬと分かっていて行ってしまったエイラに対しても、本当は助けたいのに助けないゼノに対してもである。
カイ:
「(エイラも親父もふざけやがって……! 納得できるわけがないだろうが!)」
その苛立ちは辺りに伝わっており、周囲はピリついている。
カイが本気で怒っている場面にそう出会っていないイデアは、そのカイの様子を心配していた。
イデア:
「……あの―――」
そして、イデアがカイへ声をかけようとした時だった。
ミーア:
「イデアちゃん、ここはわたしに任せて」
ミーアがイデアを手で制したのである。
イデアはミーアがどうするのか分からなかったが、とりあえず頷いてミーアに任せることにした。
ミーアは一度深呼吸をすると、ゆっくりカイへと近づき声をかけた。
ミーア:
「お兄ちゃん」
カイ:
「ミーア……何だよ」
カイがしかめっ面でミーアへ視線を向ける。そして驚愕した。
ミーア:
「結局デイ兄に負けちゃったね、ざまぁ!」
カイ:
「今そういう空気じゃなかったろ!?」
なんとミーアがだいぶカイを馬鹿にした顔でそう言ってのけたのである。
これにはイデア達も驚いていた。
だが、ミーアは止めない。
ミーア:
「結局ぎゃふんって言うのはお兄ちゃんだったね!」
カイ:
「言ってねえから! 負けたけど言ってねえ!」
ほぼ反射のようにカイがそう答えていく。
ミーアは知っていた。カイが酷く機嫌の悪い時は、罵倒してあげるのが一番機嫌直しに最適なのだと。
先程知っていたとしたが、それはエイラから聞かされた情報だった。
エイラ曰く、
エイラ:
「カイ様はどんな時でも罵倒されれば反射でご返答なされます。ていうかそのように私が教育したと言っても過言ではありません。なので、ご機嫌が優れないとき程罵倒してあげてください。反射でお答えしてくれますし、答えている間に機嫌が悪い理由も忘れてしまいますから。というより馬鹿らしく思えてくるんでしょうね。悩んだり、怒ったりしているのが」
とのことらしい。
実際エイラはいつもそうしていた。カイが何かに悩んで落ち込んでいるときほど罵詈雑言を浴びせていた。
だから、今いないエイラの代わりにミーアがその役を引き受けようとしたのである。
そして、それに気づいたダリルもカイを罵っていく。
ダリル:
「敗因は二刀流なんてなれないことをしたからだな。すぐカッコつけようとする」
カイ:
「二本あって正解だったろ!? ていうか慣れない割には善戦してた方だったろ!?」
ミーアとダリルのお陰でピリついていた空気が徐々に穏やかになっていく。
イデアはいつも通りの返答をしていくカイを見て安堵と共に思わず笑ってしまっていた。
イデア:
「ふふふ」
だが、カイは罵倒に対して反射で返答しているだけで、本当はそんな気分では毛頭ない。今回に限っては罵倒されても気分は戻らなかった。
カイ:
「イデアも笑ってないでミーア達を止めてくれよ! 今は―――」
エイラの命が懸かっている時なんだぞ、とカイが言おうとした時だった。
ふと、カイは思い出したのだ。
昔、エイラが言っていた言葉を。
………………………………………………………………………………
その日も、国民との口論でカイが落ち込んでいた時だった。
レイデンフォートにあるいつもの湖にて、カイはいつも通りエイラに罵倒されて機嫌を直し終えた後、呆れたように口を開いた。
カイ:
「……おまえ、よく機嫌の悪い奴に対して追い打ちをかけるがごとく罵倒出来るよな。ぜってー性格ひん曲がってるよ」
エイラ:
「カイ様にお仕えするには並の性格では不可能ですからね。私もカイ様に仕えるにあたって仕方なく性格を変えたんです」
カイ:
「その性格おれのせいなの!?」
機嫌が直ったにも関わらず罵倒は続いていた。
そんな中、エイラがふと遠くを見ながら微笑んでこう言ったのである。
エイラ:
「……落ち込んだり苛ついたり、怒ったり悲しんだりするのは構いません。ですが、それを周囲に悟らせない努力をしてみてください」
カイ:
「周囲に?」
エイラ:
「いいですかカイ様、感情というものは時に自身だけでなく周囲にいる人へも影響を与えてしまうものです。特にそれが人の上に立つ者の感情だとよりそうなのです。例えば……そうですね、戦いの直前に大将が凄い臆病になって震えていたら周りの士気に関わるでしょう? それと同じです」
その時のカイはエイラの姿に見惚れていた。いつもカイをからかってふざけているエイラが優しい声音で微笑みながら何か大切なことを伝えようとしているその姿に。
エイラ:
「ゼノ様もそうです。いつも毅然に振る舞っておられますが、内心ではたくさんの葛藤や後悔が渦巻いているはずです。でもそれを周りに悟らせまいと必死に堪えているのですよ」
カイ:
「親父が……」
カイは生まれてから一度もゼノの弱気な姿などは見たことが無かった。
エイラ:
「そうです、ゼノ様も一国の王ですからね。あの方の心の動揺はそれだけで周りに影響を及ぼしてしまいます。それを分かっているからこそ、ゼノ様はどんな時でも毅然とした態度でいるのですよ」
そしてエイラがカイへ微笑む。
エイラ:
「カイ様もいずれ王になるのでしたらそのことは覚えておいてください。人を導くには、どんな状況でもドーンと構えることが大切なのだと。辛い時こそ笑顔で皆を引っ張っていってください。……まぁカイ様が王になりたくても周りが認めないでしょうけど」
カイ:
「おいぃ! 最後の言葉絶対余計だったろ!」
エイラがくすくすと笑い始める。
エイラ:
「そうですか? 認められているのでしたら、今日だって国民と口論にならないと思いますけどー」
カイ:
「うっ」
痛いところを突かれてカイが言葉に詰まる。
エイラはその様子に笑いを堪えつつ言った。
エイラ:
「でも、いつも気張り続けるのは大変ですからね。弱音を吐ける相手を見つけてくださいね。ゼノ様だってセラ様の前では悩んだり落ち込んだりしてますもの、あなた達男三兄弟のこととか」
カイ:
「何で母さんの前でしか吐かない親父の弱音をおまえが知ってるんだよ……」
エイラ:
「それは秘密です」
エイラが人差し指を立てて笑みの前へ持って行く。カイはエイラの恐ろしさを改めて感じたのであった。
エイラ:
「でもカイ様には私がいますし大丈夫ですね。すぐ弱音を言って下さりますし。これってやっぱり信頼の証ですか? そうなんですか?」
カイ:
「は、はぁ!? 全然そんな事ねぇし!」
カイが急に恥ずかしくなって照れながらエイラから顔を逸らす。
対してエイラは嬉しそうにカイへにじり寄っていた。
エイラ:
「あらあら、照れてるんですか? 可愛らしいですね」
カイ:
「っ、もう絶対おまえに弱音なんて吐かねぇからなー!」
そうカイが強く叫ぶ。
その様子にエイラは笑いが止まらなかった。
ちなみにその後もカイは事あるごとにエイラへ弱音を吐いていたのであった。
………………………………………………………………………………
カイ:
「……」
途端に黙ったカイをイデアが心配そうに見つめる。
イデア:
「カイ……?」
いつの間にか俯いていたカイの顔をイデアが覗いてみると、その目には涙が溜まっていた。エイラとの記憶を思い出した途端、思わず涙が込み上げてきたのである。
カイ:
「……まだ、弱音言い足りねえよ、ばか」
カイはそうボソッと呟くと、目尻に溜まった涙を拭って顔を上げた。
カイ:
「それに、おまえの弱音だってまだ聞いてねぇぞ……!」
いなくなる瞬間でもエイラは弱音を吐かなかった。本当は辛いはずなのに、必死に堪えていたのだ。
カイ:
「おまえの弱音くらい受け止められるに決まってんだろ……!」
そう言ってカイは立ち上がった。怒りや苛立ちを堪えて。どれだけ辛くても王として周りを動揺させないために堪えていたゼノの姿を思い浮かべて。
カイ:
「(親父だって助けたくなかったわけじゃないんだ……。なんだよ、助けたいなら助けたいって、弱音くらい吐けよな……。おれに頼むくらいしてみろってんだ)」
そして拳を手に叩きつけて全員へ聞こえるように言い放った。
カイ:
「エイラの奴、絶対助け出して説教してやるわ! 助けを求めなかったことを後悔するくらいの長時間コースをお見舞いしてやる!」
その顔には覚悟と共に笑みが浮かんでいた。辛い時こそ笑顔で。皆を引っ張っていくために。
そうしていつものカイに戻ったのだった。
そのカイの様子に全員が安堵の息を洩らす。
ダリル:
「ふっ、ようやくいつものカイに戻ったな」
ミーア:
「お兄ちゃんが暗いと何か調子狂うっていうか士気が下がるんだからさー。ほら、いつもみたいに馬鹿やってよね!」
カイ:
「別にいつも馬鹿やってるつもりないんですけど!?」
そう言いつつ、カイがミーアの頭に手を乗せた。そして金色に輝く髪を乱雑に掻き回す。
ミーア:
「ちょ、何するのよ!」
カイ:
「……ありがとな」
カイが顔を逸らしながらボソッと呟く。カイにはミーアがエイラの代わりをしようとしていたのが分かっていたのだ。
ミーアは一瞬口元が緩んで笑みを浮かべたが、すぐに顔を赤くしてそっぽを向いた。
ミーア:
「……べ、別にお兄ちゃんの為じゃないから! エイラの大変さを経験してみようって思っただけ! あー、大変だった。あの一瞬で数回は自殺を考えたよ!」
カイ:
「はいはい、ツンデレご苦労様です」
ミーア:
「ツンデレじゃないよ!」
カイが向かってくるミーアを腕一本で押さえ込んでいると、傍にいたイデアが心配そうにカイを見つめていることに気付いた。
イデア:
「もう、大丈夫なの?」
カイ:
「ん、ああ、悪い、もう大丈夫だ。ちょっと心の整理がつかなかったけど、もうついた。当面の目標はエイラを助けて説教に決めたから、もう大丈夫」
大丈夫と繰り返しながら、空いている方の手でイデアの頭を撫でてやる。
イデアは嬉しそうにそれを受け入れていた。
イデア:
「わたしも一緒に説教するね」
カイ:
「お、イデアの説教には流石のエイラも狼狽えるだろうな」
ダリル:
「私ももちろん説教するぞ」
メリル:
「皆で説教ってことだね! あたしももちろん参加するよ!」
メリルが嬉しそうにそう言う。
すると、ふとダリルがメリルへ視線を向けた。
ダリル:
「そういえばメリル、確か用事があって闘技場には来れないんじゃなかったか?」
メリル:
「え、あぁうん、まあそうなんだけど、どうせお父さんが風邪を引いて倒れちゃっただけだし」
カイ:
「意外に一大事じゃねえか……」
つまり一国の王が倒れてしまったのである。誰が聞いても一大事であった。
カイ:
「よくイデア闘技場の方来たな!?」
イデア:
「……だってお父様のその風邪、昨日お酒で酔ってる時にお風呂に入って間違って冷水浴びちゃったのが原因なんだもん。その風邪よりはカイの闘いの方が大事だったの」
メリル:
「そ、だからあたしも途中でサボって抜けてきたわけ」
あまりにしょうもない風邪の理由にカイ達は苦笑をせざるを得なかった。
と、その時突如どこからともなくヴァリウスの声が聞こえてきた。ここはヴァリウスの穴の中であり、ヴァリウス自体は外界にいるのである。
ヴァリウス:
「『……あのさ、たぶん着いたよ、魔界への入り口』」
カイ:
「本当か!?」
ヴァリウス:
「『うん……だけど、これは……』」
カイ:
「……ヴァリウス?」
何やら歯切れの悪いヴァリウスだったが、何か覚悟を決めたのか話し始めた。
ヴァリウス:
「『僕は悪魔族のことが秘密にされる前、つまり聖戦が終わる前に生まれたわけなんだけど、とにかく魔界の入り口として思い当たるところに色々転移してみたんだ』」
カイ:
「……あのさ、ヴァリウスって今何歳だよ」
ダリル:
「私は二十四だが、そのころ聖戦などやっていなかったぞ。既に終戦していたのだろうが……」
ミーア:
「確か人間達が悪魔達の奴隷だったのは二十五年前だって言ってたよね」
メリル:
「少なくともそれ以上ってこと!? 見た目カイみたいなのに!?」
ヴァリウス:
「『その話はまた今度ね。とにかく、何度かの転移の末確かに魔界への入り口は見つけたよ。それは天地谷にあった』」
カイ:
「天地谷だって!?」
そう聞いたカイに、ある記憶が蘇る。それはジェガロが言っていた言葉だ。
ジェガロ:
「『儂はこの山から離れられぬのじゃよ』」
カイ:
「あれってもしかして天地谷に魔界の入り口があるからだったのか……」
ミーア:
「てことはジェガロがいるんだね!」
ヴァリウス:
「『それが……』」
そこで再びヴァリウスの歯切れが悪くなる。
それだけでカイ達は不吉な予感がしたのだった。
ダリル:
「……ヴァリウス、もしかしてジェガロに何かあったのか?」
ヴァリウス:
「『……見てもらったらわかるよ』」
その次の瞬間、真っ黒だった空間に円状に光の穴が開いた。そこから外界に繋がっているのである。
カイ達はその不吉な予感を振り払いながら光の穴から外界へ出て、そして驚愕した。
イデア:
「そんな……」
カイ達の目の前には、太陽と月がそれぞれ描かれている巨大な二つの扉が広がっており、そのうち月の扉は半分開いていて中には闇が広がっていた。
そして、そのカイ達の隣にジェガロの……亡骸があった。
カイ:
「嘘……だろ……!?」
赤く巨大なその竜の背には翼がなく、四肢ももがれている。鱗はボロボロと剥がれ落ちており、口からはだらしなく舌がはみ出ていた。
ミーア:
「ジェガロ!」
ミーアが慌てて回復魔法をかけようと駆け寄るが、ヴァリウスがそれを制した。
ヴァリウス:
「無駄だよ。僕もやってみたけどもう手遅れだ。死んでる」
メリル:
「何で、ジェガロが……!」
誰がやったのか、その答えは明白であった。
カイ:
「あの野郎……! エイラだけじゃなくてジェガロまでも! 絶対に許さねぇ!」
バルサを思ってカイが強く叫ぶ。
と、その時だった。
半開きだった月の扉が徐々に閉まり始めたのである。
ヴァリウス:
「っ、おそらくあの先が魔界へ続くはずだよ! きっとエイラ達が今通ったから開いているんだ! つまり、もう開けておく必要はなくなったんだよ! 閉じてしまったらもう行けないかもしれない! 早く!」
そう言ってヴァリウスが駆けだす。
カイ:
「……っ、帰ってきたら、絶対供養してやるからな!」
カイ達はジェガロの亡骸に視線を向けたが、悲しみを堪えて必死にその扉へと走り出した。
カイ:
「絶対だ、絶対にエイラを助けるぞ!」
ダリル:
「ああ!」
イデア&ミーア&メリル&ヴァリウス:
「うん!」
カイ:
「待ってろよ、エイラ!」
そうしてカイ達は月の扉へ、闇へと足を踏み入れたのであった。
………………………………………………………………………………
カイ達が丁度天地谷へ到着した頃、エリスとシオルンは何の用もなくレイデンフォート城を空から訪れていた。要は遊びに来たのだが、実際はハンから逃げて来たのである。
シオルンが寂しそうに笑いながら呟く。
シオルン:
「わたし、やっぱりお義父様には受け入れられそうにありませんね」
エリス:
「そんなことない! 絶対受け入れてくれるよ! ていうか受け入れさせてやる!」
エリスがそうシオルンを励ましつつ、勝手に城内へ入りカイ達を探し始める。だが、当然そこにカイ達の姿はない。
エリスは首を傾げた。
エリス:
「あっれー、カイ達どこに行ったんだろうな? こんなに皆いないなんてある?」
シオルン:
「何か今日は行事があったのでしょうか?」
そう言いながら、今日は大人しく帰るかと踵を返そうとした時だった。
ゼノ:
「ん、エリスにシオルンちゃんじゃないか」
エリス達の背後の廊下からゼノとデイナが現れたのである。丁度闘技場から帰ってきたばかりであった。
シオルン:
「あ、こ、こんにちは」
シオルンが緊張しながら丁寧に挨拶するのに対して、エリスは挨拶なしにゼノへと尋ねた。
エリス:
「お、カイのお父さん、丁度いいところに。いやね、カイ達の姿が全く見当たらないんだけどどこにいるか知らない?」
その問いにゼノとデイナは顔を見合わせたが、何もなかったかのようにゼノが答える。
ゼノ:
「あー、カイ達は今ちょっと野暮用で出ている」
エリス達はまだ悪魔族のことを知らない。ここで教えても混乱させるだけであった。
エリス:
「やっぱそっかー。教えてくれてありがと。じゃあここにいてもやることないし帰るか、シオルン」
シオルン:
「そうですね。えっと、し、失礼しました」
エリス:
「それじゃね」
そう言ってエリスとシオルンがゼノ達に背を向ける。
と、その時ゼノがエリスとシオルンを引き留めた。
ゼノ:
「二人共、もし暇ならちょっと俺達の用事に付き合ってくれないか?」
エリス:
「用事に? 俺達が?」
シオルン:
「じゃ、邪魔じゃないですか?」
デイナ:
「……いいのか父様」
デイナの問いにゼノが頷く。
ゼノ:
「ああ、どうせいずれ皆が知る話だ。問題あるまい。それで、どうだ?」
エリスとシオルンはどうするか首を傾げて迷っていたが、結局暇なので同行することにした。
エリス:
「別にいいけど……どこか行く予定?」
首を傾げながら尋ねるエリスに、ゼノはニッコリ笑顔で答えた。
ゼノ:
「ああ、ちょっと天界にな」
エリス:
「……天界?」
その単語だけでは、エリス達はこれから起こる出来事を予想すら出来なかったのだった。
本来、こういう暗い時こそエイラがカイをからかったりするのだが当の本人はおらず、且ついつもうるさいカイが顔をしかめて大人しくしている。
イデア達はもちろんエイラのことも思っていたが、それと共にカイの様子も気になっていた。
イデア:
「カイ……」
カイは苛立ちを隠せないでいた。死ぬと分かっていて行ってしまったエイラに対しても、本当は助けたいのに助けないゼノに対してもである。
カイ:
「(エイラも親父もふざけやがって……! 納得できるわけがないだろうが!)」
その苛立ちは辺りに伝わっており、周囲はピリついている。
カイが本気で怒っている場面にそう出会っていないイデアは、そのカイの様子を心配していた。
イデア:
「……あの―――」
そして、イデアがカイへ声をかけようとした時だった。
ミーア:
「イデアちゃん、ここはわたしに任せて」
ミーアがイデアを手で制したのである。
イデアはミーアがどうするのか分からなかったが、とりあえず頷いてミーアに任せることにした。
ミーアは一度深呼吸をすると、ゆっくりカイへと近づき声をかけた。
ミーア:
「お兄ちゃん」
カイ:
「ミーア……何だよ」
カイがしかめっ面でミーアへ視線を向ける。そして驚愕した。
ミーア:
「結局デイ兄に負けちゃったね、ざまぁ!」
カイ:
「今そういう空気じゃなかったろ!?」
なんとミーアがだいぶカイを馬鹿にした顔でそう言ってのけたのである。
これにはイデア達も驚いていた。
だが、ミーアは止めない。
ミーア:
「結局ぎゃふんって言うのはお兄ちゃんだったね!」
カイ:
「言ってねえから! 負けたけど言ってねえ!」
ほぼ反射のようにカイがそう答えていく。
ミーアは知っていた。カイが酷く機嫌の悪い時は、罵倒してあげるのが一番機嫌直しに最適なのだと。
先程知っていたとしたが、それはエイラから聞かされた情報だった。
エイラ曰く、
エイラ:
「カイ様はどんな時でも罵倒されれば反射でご返答なされます。ていうかそのように私が教育したと言っても過言ではありません。なので、ご機嫌が優れないとき程罵倒してあげてください。反射でお答えしてくれますし、答えている間に機嫌が悪い理由も忘れてしまいますから。というより馬鹿らしく思えてくるんでしょうね。悩んだり、怒ったりしているのが」
とのことらしい。
実際エイラはいつもそうしていた。カイが何かに悩んで落ち込んでいるときほど罵詈雑言を浴びせていた。
だから、今いないエイラの代わりにミーアがその役を引き受けようとしたのである。
そして、それに気づいたダリルもカイを罵っていく。
ダリル:
「敗因は二刀流なんてなれないことをしたからだな。すぐカッコつけようとする」
カイ:
「二本あって正解だったろ!? ていうか慣れない割には善戦してた方だったろ!?」
ミーアとダリルのお陰でピリついていた空気が徐々に穏やかになっていく。
イデアはいつも通りの返答をしていくカイを見て安堵と共に思わず笑ってしまっていた。
イデア:
「ふふふ」
だが、カイは罵倒に対して反射で返答しているだけで、本当はそんな気分では毛頭ない。今回に限っては罵倒されても気分は戻らなかった。
カイ:
「イデアも笑ってないでミーア達を止めてくれよ! 今は―――」
エイラの命が懸かっている時なんだぞ、とカイが言おうとした時だった。
ふと、カイは思い出したのだ。
昔、エイラが言っていた言葉を。
………………………………………………………………………………
その日も、国民との口論でカイが落ち込んでいた時だった。
レイデンフォートにあるいつもの湖にて、カイはいつも通りエイラに罵倒されて機嫌を直し終えた後、呆れたように口を開いた。
カイ:
「……おまえ、よく機嫌の悪い奴に対して追い打ちをかけるがごとく罵倒出来るよな。ぜってー性格ひん曲がってるよ」
エイラ:
「カイ様にお仕えするには並の性格では不可能ですからね。私もカイ様に仕えるにあたって仕方なく性格を変えたんです」
カイ:
「その性格おれのせいなの!?」
機嫌が直ったにも関わらず罵倒は続いていた。
そんな中、エイラがふと遠くを見ながら微笑んでこう言ったのである。
エイラ:
「……落ち込んだり苛ついたり、怒ったり悲しんだりするのは構いません。ですが、それを周囲に悟らせない努力をしてみてください」
カイ:
「周囲に?」
エイラ:
「いいですかカイ様、感情というものは時に自身だけでなく周囲にいる人へも影響を与えてしまうものです。特にそれが人の上に立つ者の感情だとよりそうなのです。例えば……そうですね、戦いの直前に大将が凄い臆病になって震えていたら周りの士気に関わるでしょう? それと同じです」
その時のカイはエイラの姿に見惚れていた。いつもカイをからかってふざけているエイラが優しい声音で微笑みながら何か大切なことを伝えようとしているその姿に。
エイラ:
「ゼノ様もそうです。いつも毅然に振る舞っておられますが、内心ではたくさんの葛藤や後悔が渦巻いているはずです。でもそれを周りに悟らせまいと必死に堪えているのですよ」
カイ:
「親父が……」
カイは生まれてから一度もゼノの弱気な姿などは見たことが無かった。
エイラ:
「そうです、ゼノ様も一国の王ですからね。あの方の心の動揺はそれだけで周りに影響を及ぼしてしまいます。それを分かっているからこそ、ゼノ様はどんな時でも毅然とした態度でいるのですよ」
そしてエイラがカイへ微笑む。
エイラ:
「カイ様もいずれ王になるのでしたらそのことは覚えておいてください。人を導くには、どんな状況でもドーンと構えることが大切なのだと。辛い時こそ笑顔で皆を引っ張っていってください。……まぁカイ様が王になりたくても周りが認めないでしょうけど」
カイ:
「おいぃ! 最後の言葉絶対余計だったろ!」
エイラがくすくすと笑い始める。
エイラ:
「そうですか? 認められているのでしたら、今日だって国民と口論にならないと思いますけどー」
カイ:
「うっ」
痛いところを突かれてカイが言葉に詰まる。
エイラはその様子に笑いを堪えつつ言った。
エイラ:
「でも、いつも気張り続けるのは大変ですからね。弱音を吐ける相手を見つけてくださいね。ゼノ様だってセラ様の前では悩んだり落ち込んだりしてますもの、あなた達男三兄弟のこととか」
カイ:
「何で母さんの前でしか吐かない親父の弱音をおまえが知ってるんだよ……」
エイラ:
「それは秘密です」
エイラが人差し指を立てて笑みの前へ持って行く。カイはエイラの恐ろしさを改めて感じたのであった。
エイラ:
「でもカイ様には私がいますし大丈夫ですね。すぐ弱音を言って下さりますし。これってやっぱり信頼の証ですか? そうなんですか?」
カイ:
「は、はぁ!? 全然そんな事ねぇし!」
カイが急に恥ずかしくなって照れながらエイラから顔を逸らす。
対してエイラは嬉しそうにカイへにじり寄っていた。
エイラ:
「あらあら、照れてるんですか? 可愛らしいですね」
カイ:
「っ、もう絶対おまえに弱音なんて吐かねぇからなー!」
そうカイが強く叫ぶ。
その様子にエイラは笑いが止まらなかった。
ちなみにその後もカイは事あるごとにエイラへ弱音を吐いていたのであった。
………………………………………………………………………………
カイ:
「……」
途端に黙ったカイをイデアが心配そうに見つめる。
イデア:
「カイ……?」
いつの間にか俯いていたカイの顔をイデアが覗いてみると、その目には涙が溜まっていた。エイラとの記憶を思い出した途端、思わず涙が込み上げてきたのである。
カイ:
「……まだ、弱音言い足りねえよ、ばか」
カイはそうボソッと呟くと、目尻に溜まった涙を拭って顔を上げた。
カイ:
「それに、おまえの弱音だってまだ聞いてねぇぞ……!」
いなくなる瞬間でもエイラは弱音を吐かなかった。本当は辛いはずなのに、必死に堪えていたのだ。
カイ:
「おまえの弱音くらい受け止められるに決まってんだろ……!」
そう言ってカイは立ち上がった。怒りや苛立ちを堪えて。どれだけ辛くても王として周りを動揺させないために堪えていたゼノの姿を思い浮かべて。
カイ:
「(親父だって助けたくなかったわけじゃないんだ……。なんだよ、助けたいなら助けたいって、弱音くらい吐けよな……。おれに頼むくらいしてみろってんだ)」
そして拳を手に叩きつけて全員へ聞こえるように言い放った。
カイ:
「エイラの奴、絶対助け出して説教してやるわ! 助けを求めなかったことを後悔するくらいの長時間コースをお見舞いしてやる!」
その顔には覚悟と共に笑みが浮かんでいた。辛い時こそ笑顔で。皆を引っ張っていくために。
そうしていつものカイに戻ったのだった。
そのカイの様子に全員が安堵の息を洩らす。
ダリル:
「ふっ、ようやくいつものカイに戻ったな」
ミーア:
「お兄ちゃんが暗いと何か調子狂うっていうか士気が下がるんだからさー。ほら、いつもみたいに馬鹿やってよね!」
カイ:
「別にいつも馬鹿やってるつもりないんですけど!?」
そう言いつつ、カイがミーアの頭に手を乗せた。そして金色に輝く髪を乱雑に掻き回す。
ミーア:
「ちょ、何するのよ!」
カイ:
「……ありがとな」
カイが顔を逸らしながらボソッと呟く。カイにはミーアがエイラの代わりをしようとしていたのが分かっていたのだ。
ミーアは一瞬口元が緩んで笑みを浮かべたが、すぐに顔を赤くしてそっぽを向いた。
ミーア:
「……べ、別にお兄ちゃんの為じゃないから! エイラの大変さを経験してみようって思っただけ! あー、大変だった。あの一瞬で数回は自殺を考えたよ!」
カイ:
「はいはい、ツンデレご苦労様です」
ミーア:
「ツンデレじゃないよ!」
カイが向かってくるミーアを腕一本で押さえ込んでいると、傍にいたイデアが心配そうにカイを見つめていることに気付いた。
イデア:
「もう、大丈夫なの?」
カイ:
「ん、ああ、悪い、もう大丈夫だ。ちょっと心の整理がつかなかったけど、もうついた。当面の目標はエイラを助けて説教に決めたから、もう大丈夫」
大丈夫と繰り返しながら、空いている方の手でイデアの頭を撫でてやる。
イデアは嬉しそうにそれを受け入れていた。
イデア:
「わたしも一緒に説教するね」
カイ:
「お、イデアの説教には流石のエイラも狼狽えるだろうな」
ダリル:
「私ももちろん説教するぞ」
メリル:
「皆で説教ってことだね! あたしももちろん参加するよ!」
メリルが嬉しそうにそう言う。
すると、ふとダリルがメリルへ視線を向けた。
ダリル:
「そういえばメリル、確か用事があって闘技場には来れないんじゃなかったか?」
メリル:
「え、あぁうん、まあそうなんだけど、どうせお父さんが風邪を引いて倒れちゃっただけだし」
カイ:
「意外に一大事じゃねえか……」
つまり一国の王が倒れてしまったのである。誰が聞いても一大事であった。
カイ:
「よくイデア闘技場の方来たな!?」
イデア:
「……だってお父様のその風邪、昨日お酒で酔ってる時にお風呂に入って間違って冷水浴びちゃったのが原因なんだもん。その風邪よりはカイの闘いの方が大事だったの」
メリル:
「そ、だからあたしも途中でサボって抜けてきたわけ」
あまりにしょうもない風邪の理由にカイ達は苦笑をせざるを得なかった。
と、その時突如どこからともなくヴァリウスの声が聞こえてきた。ここはヴァリウスの穴の中であり、ヴァリウス自体は外界にいるのである。
ヴァリウス:
「『……あのさ、たぶん着いたよ、魔界への入り口』」
カイ:
「本当か!?」
ヴァリウス:
「『うん……だけど、これは……』」
カイ:
「……ヴァリウス?」
何やら歯切れの悪いヴァリウスだったが、何か覚悟を決めたのか話し始めた。
ヴァリウス:
「『僕は悪魔族のことが秘密にされる前、つまり聖戦が終わる前に生まれたわけなんだけど、とにかく魔界の入り口として思い当たるところに色々転移してみたんだ』」
カイ:
「……あのさ、ヴァリウスって今何歳だよ」
ダリル:
「私は二十四だが、そのころ聖戦などやっていなかったぞ。既に終戦していたのだろうが……」
ミーア:
「確か人間達が悪魔達の奴隷だったのは二十五年前だって言ってたよね」
メリル:
「少なくともそれ以上ってこと!? 見た目カイみたいなのに!?」
ヴァリウス:
「『その話はまた今度ね。とにかく、何度かの転移の末確かに魔界への入り口は見つけたよ。それは天地谷にあった』」
カイ:
「天地谷だって!?」
そう聞いたカイに、ある記憶が蘇る。それはジェガロが言っていた言葉だ。
ジェガロ:
「『儂はこの山から離れられぬのじゃよ』」
カイ:
「あれってもしかして天地谷に魔界の入り口があるからだったのか……」
ミーア:
「てことはジェガロがいるんだね!」
ヴァリウス:
「『それが……』」
そこで再びヴァリウスの歯切れが悪くなる。
それだけでカイ達は不吉な予感がしたのだった。
ダリル:
「……ヴァリウス、もしかしてジェガロに何かあったのか?」
ヴァリウス:
「『……見てもらったらわかるよ』」
その次の瞬間、真っ黒だった空間に円状に光の穴が開いた。そこから外界に繋がっているのである。
カイ達はその不吉な予感を振り払いながら光の穴から外界へ出て、そして驚愕した。
イデア:
「そんな……」
カイ達の目の前には、太陽と月がそれぞれ描かれている巨大な二つの扉が広がっており、そのうち月の扉は半分開いていて中には闇が広がっていた。
そして、そのカイ達の隣にジェガロの……亡骸があった。
カイ:
「嘘……だろ……!?」
赤く巨大なその竜の背には翼がなく、四肢ももがれている。鱗はボロボロと剥がれ落ちており、口からはだらしなく舌がはみ出ていた。
ミーア:
「ジェガロ!」
ミーアが慌てて回復魔法をかけようと駆け寄るが、ヴァリウスがそれを制した。
ヴァリウス:
「無駄だよ。僕もやってみたけどもう手遅れだ。死んでる」
メリル:
「何で、ジェガロが……!」
誰がやったのか、その答えは明白であった。
カイ:
「あの野郎……! エイラだけじゃなくてジェガロまでも! 絶対に許さねぇ!」
バルサを思ってカイが強く叫ぶ。
と、その時だった。
半開きだった月の扉が徐々に閉まり始めたのである。
ヴァリウス:
「っ、おそらくあの先が魔界へ続くはずだよ! きっとエイラ達が今通ったから開いているんだ! つまり、もう開けておく必要はなくなったんだよ! 閉じてしまったらもう行けないかもしれない! 早く!」
そう言ってヴァリウスが駆けだす。
カイ:
「……っ、帰ってきたら、絶対供養してやるからな!」
カイ達はジェガロの亡骸に視線を向けたが、悲しみを堪えて必死にその扉へと走り出した。
カイ:
「絶対だ、絶対にエイラを助けるぞ!」
ダリル:
「ああ!」
イデア&ミーア&メリル&ヴァリウス:
「うん!」
カイ:
「待ってろよ、エイラ!」
そうしてカイ達は月の扉へ、闇へと足を踏み入れたのであった。
………………………………………………………………………………
カイ達が丁度天地谷へ到着した頃、エリスとシオルンは何の用もなくレイデンフォート城を空から訪れていた。要は遊びに来たのだが、実際はハンから逃げて来たのである。
シオルンが寂しそうに笑いながら呟く。
シオルン:
「わたし、やっぱりお義父様には受け入れられそうにありませんね」
エリス:
「そんなことない! 絶対受け入れてくれるよ! ていうか受け入れさせてやる!」
エリスがそうシオルンを励ましつつ、勝手に城内へ入りカイ達を探し始める。だが、当然そこにカイ達の姿はない。
エリスは首を傾げた。
エリス:
「あっれー、カイ達どこに行ったんだろうな? こんなに皆いないなんてある?」
シオルン:
「何か今日は行事があったのでしょうか?」
そう言いながら、今日は大人しく帰るかと踵を返そうとした時だった。
ゼノ:
「ん、エリスにシオルンちゃんじゃないか」
エリス達の背後の廊下からゼノとデイナが現れたのである。丁度闘技場から帰ってきたばかりであった。
シオルン:
「あ、こ、こんにちは」
シオルンが緊張しながら丁寧に挨拶するのに対して、エリスは挨拶なしにゼノへと尋ねた。
エリス:
「お、カイのお父さん、丁度いいところに。いやね、カイ達の姿が全く見当たらないんだけどどこにいるか知らない?」
その問いにゼノとデイナは顔を見合わせたが、何もなかったかのようにゼノが答える。
ゼノ:
「あー、カイ達は今ちょっと野暮用で出ている」
エリス達はまだ悪魔族のことを知らない。ここで教えても混乱させるだけであった。
エリス:
「やっぱそっかー。教えてくれてありがと。じゃあここにいてもやることないし帰るか、シオルン」
シオルン:
「そうですね。えっと、し、失礼しました」
エリス:
「それじゃね」
そう言ってエリスとシオルンがゼノ達に背を向ける。
と、その時ゼノがエリスとシオルンを引き留めた。
ゼノ:
「二人共、もし暇ならちょっと俺達の用事に付き合ってくれないか?」
エリス:
「用事に? 俺達が?」
シオルン:
「じゃ、邪魔じゃないですか?」
デイナ:
「……いいのか父様」
デイナの問いにゼノが頷く。
ゼノ:
「ああ、どうせいずれ皆が知る話だ。問題あるまい。それで、どうだ?」
エリスとシオルンはどうするか首を傾げて迷っていたが、結局暇なので同行することにした。
エリス:
「別にいいけど……どこか行く予定?」
首を傾げながら尋ねるエリスに、ゼノはニッコリ笑顔で答えた。
ゼノ:
「ああ、ちょっと天界にな」
エリス:
「……天界?」
その単語だけでは、エリス達はこれから起こる出来事を予想すら出来なかったのだった。
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