『Pâtisserie Hina 〜夢と絆のスイーツ物語〜』

第7章 フードアカデミーニューヨーク校開校！

第148話 - 本音を聞く

アレックスが退学届けを提出し、フードアカデミーを去る決意を固めたその日、理事長はリンを呼び出した。アレックスの選択が彼女にどんな影響を与えるのか、そしてリン自身の本音を知りたかったからだ。

リンは少し不安げな表情で理事長室に足を踏み入れた。彼女が座ると、理事長は静かに話し始めた。

「リン、君がここに来てくれたのは、アレックスのことだろう？」

リンは頷いた。目を伏せると、声を震わせながら言った。「はい…アレックスが退学すること、どうしても信じられません。彼がフードアカデミーを辞めるなんて…一体何があったんですか？」

理事長は少し黙り込んだ後、静かに言った。「彼は自分の道を歩むことを選んだ。君との関係も含めて、彼は決断を下したんだよ。」

リンは驚きの表情を浮かべた。「それって…どういう意味ですか？」

「アレックスは君との結婚について考えているが、彼には自分の成し遂げたい目標がある。それが、君との関係を続けることとぶつかっているんだ。」理事長の言葉は静かで、けれど重く響いた。「君は彼をどうしたいと思っている？」

リンは目を閉じ、しばらく黙っていた。彼女の心の中で、アレックスのことを思うと同時に、自分の心情も揺れ動いていた。アレックスがフードアカデミーを辞めることで、彼の未来を奪うような形になるのではないかという恐れがあった。しかし、それと同時に彼女は彼の幸せを願っている自分にも気づいていた。

「アレックスがどうしてそんな決断をしたのか、私にはまだよくわかりません。でも、彼が自分の未来に向かって進んでいくのを、私は邪魔したくない。ただ…彼がいなくなることは、怖い。」リンは静かに言葉を紡いだ。「でも、もし彼が本当に自分の夢を追いかけるためにフードアカデミーを辞めるのなら、私はそれを応援したいと思っています。」

理事長はじっとリンを見守った。「その言葉を聞けて、私は安心した。君がアレックスを思っている気持ちはとても大切だ。だが、君にも自分の人生があることを忘れてはいけない。アレックスが進む道が君との関係にどう影響を与えるか、それを考えているのは君だ。」

リンは少し涙を浮かべて頷いた。「わかっています。でも、私は彼を失いたくないんです…彼がどんな道を歩むとしても、私はその道を一緒に歩みたいと思っている。だから、これからどうすればいいのか、まだわかりません。」

理事長は優しく微笑んだ。「君の気持ちがわかるよ、リン。だが、アレックスの決断を尊重することも大切だ。もし君が本当に彼を愛しているのなら、君の気持ちを伝えることを恐れずに、彼に伝えてみることだ。」

リンはしばらく考えた後、静かに言った。「はい…私、アレックスにきちんと伝えます。彼の決断を尊重するけれど、私の気持ちもきちんと伝えたい。彼がどういう答えを出すかはわからないけれど、私はそれを受け入れる覚悟はあります。」

理事長は優しく頷いた。「君がそう言うのなら、アレックスもきっと心強いだろう。君の誠実な気持ちは、彼にも届くはずだ。」

リンは深呼吸をしてから立ち上がり、理事長に礼を言った。「ありがとうございました。私、もう少し考えて、アレックスに話してみます。」

理事長は微笑んで見送った。「君が幸せになれるように、心から願っているよ。」

リンは理事長室を後にし、外に出ると、アレックスとの関係について何をどう伝えるべきかを真剣に考え始めた。彼の選んだ道がどんなものであれ、彼を支え、理解する覚悟を持って彼に向き合うことを決めた。

その日、リンは心の中で一つ決意を固めた。彼女はアレックスに自分の気持ちを伝え、どんな答えが返ってきても、それを受け入れる覚悟を決めた。そして、アレックスとの未来を再び歩むために、勇気を持って向き合う決意を固めた。