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オリエンテーション
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エリカは何度も頭を下げて謝罪をし、去っていった。
「セレス、大丈夫だった?何処も怪我はしていない?」
「はい、大丈夫です」
「建物内を走る令嬢なんて初めて見たから、平民からの合格者だろうか?」
王都在住の貴族子女は学園への入学を義務付けられており、各領地で生活をする貴族子女は希望すれば入学が可能。
そして学園へ通えるのは、貴族だけに限らない。試験で決められた点さえ取れば、平民でも入学が認められるが、それはかなりの難関と聞く。
そのため学園の敷地内には、遠方の者や平民のための寮も併設されている。
「だとしたらこれから色んな事、マナー面においても苦労するかもしれないけれど、折れずに頑張って欲しいね」
「はい」
先程のフレデリック殿下はエリカの非常識さに眉を顰めていたものの、瞬時に彼女の背景を考察し理解を示す。
人の立場に立って気持ちを理解しようとする、心優しい王子様だと改めて尊敬の念を抱いた。
今現在のエリカは得体が知れないけれど、わたしもフレデリック殿下の意見に心から同意を示した。
:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:
『せっかくだからフラグを立ててみようと思い立っちゃって』
教室へ向かう道中も、わたしはエリカのこの言葉が特に引っかかっていた。
フラグ、それは物語でエリカが始めて学園に足を踏み入れる時の事。遅刻をしかけて急いで教室へ向かう途中、フレデリック殿下にぶつかるイベントの事を言っているのだろう。
それはゲーム内で一番最初に起こる強制イベントであり、一番最初に出会う攻略キャラがフレデリック殿下だ。
それ故に彼の高感度は、他の攻略者よりもフライングで上がる。
お陰でフレデリック殿下のエリカへの好感度は上がりやすく、攻略難易度が低い。
現実はフラグを立てたのか、へし折ったのか、よく分からない状況になったけど……。
仮にエリカがフラグを立てる気でいたとすると、私達が来るのをあそこでずっと待っていたという事か。
そうだとしたら、ちよっと怖い……。
:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:
教室では生徒に向けて、教員から学園についての説明が行われた。
そして実際に各設備やその他の教室や食堂、音楽棟など説明を受けながら、学園を案内して貰うのが本日の主な予定である。
入学直後のオリエンテーションはどの世界でも共通らしい。
施設の説明を聞いている最中も、やはりエリカの存在が気になり、さり気なく彼女を観察してしまう。すると彼女も幾度となく、こちらを振り向いてくる。
向こうから話しかけてくる気配は今のところないけれど、こちらもあまり視線を送るのはやめた方がいいかもしれない。
オリエンテーションが終わると教室へと戻り、それぞれ簡単な自己紹介をする事となった。
それぞれが順調に自己紹介を終えていき、いよいよエリカの番となった。エリカは立ち上がると緊張の面持ちで口を開く。
「エリカ・ダンドリューです。現在ダンドリュー伯爵家の養女となりました。よろしくお願い致します」
ハスキーな声で自己紹介を終えると、エリカはほっとした表情で着席した。
──ダンドリュー伯爵家……。
そんな設定あっただろうかと、心中でわたしは首を捻った。
ダンドリュー伯爵夫妻はとても出来た人柄であり、異世界から来た聖女となるかもしれない少女を託すには、適任な方々だとわたしも思う。
もしかしたら現実の世界となる事で、ゲーム上の足りない細かな設定が、補われているのかもしれない。
「セレス、大丈夫だった?何処も怪我はしていない?」
「はい、大丈夫です」
「建物内を走る令嬢なんて初めて見たから、平民からの合格者だろうか?」
王都在住の貴族子女は学園への入学を義務付けられており、各領地で生活をする貴族子女は希望すれば入学が可能。
そして学園へ通えるのは、貴族だけに限らない。試験で決められた点さえ取れば、平民でも入学が認められるが、それはかなりの難関と聞く。
そのため学園の敷地内には、遠方の者や平民のための寮も併設されている。
「だとしたらこれから色んな事、マナー面においても苦労するかもしれないけれど、折れずに頑張って欲しいね」
「はい」
先程のフレデリック殿下はエリカの非常識さに眉を顰めていたものの、瞬時に彼女の背景を考察し理解を示す。
人の立場に立って気持ちを理解しようとする、心優しい王子様だと改めて尊敬の念を抱いた。
今現在のエリカは得体が知れないけれど、わたしもフレデリック殿下の意見に心から同意を示した。
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『せっかくだからフラグを立ててみようと思い立っちゃって』
教室へ向かう道中も、わたしはエリカのこの言葉が特に引っかかっていた。
フラグ、それは物語でエリカが始めて学園に足を踏み入れる時の事。遅刻をしかけて急いで教室へ向かう途中、フレデリック殿下にぶつかるイベントの事を言っているのだろう。
それはゲーム内で一番最初に起こる強制イベントであり、一番最初に出会う攻略キャラがフレデリック殿下だ。
それ故に彼の高感度は、他の攻略者よりもフライングで上がる。
お陰でフレデリック殿下のエリカへの好感度は上がりやすく、攻略難易度が低い。
現実はフラグを立てたのか、へし折ったのか、よく分からない状況になったけど……。
仮にエリカがフラグを立てる気でいたとすると、私達が来るのをあそこでずっと待っていたという事か。
そうだとしたら、ちよっと怖い……。
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教室では生徒に向けて、教員から学園についての説明が行われた。
そして実際に各設備やその他の教室や食堂、音楽棟など説明を受けながら、学園を案内して貰うのが本日の主な予定である。
入学直後のオリエンテーションはどの世界でも共通らしい。
施設の説明を聞いている最中も、やはりエリカの存在が気になり、さり気なく彼女を観察してしまう。すると彼女も幾度となく、こちらを振り向いてくる。
向こうから話しかけてくる気配は今のところないけれど、こちらもあまり視線を送るのはやめた方がいいかもしれない。
オリエンテーションが終わると教室へと戻り、それぞれ簡単な自己紹介をする事となった。
それぞれが順調に自己紹介を終えていき、いよいよエリカの番となった。エリカは立ち上がると緊張の面持ちで口を開く。
「エリカ・ダンドリューです。現在ダンドリュー伯爵家の養女となりました。よろしくお願い致します」
ハスキーな声で自己紹介を終えると、エリカはほっとした表情で着席した。
──ダンドリュー伯爵家……。
そんな設定あっただろうかと、心中でわたしは首を捻った。
ダンドリュー伯爵夫妻はとても出来た人柄であり、異世界から来た聖女となるかもしれない少女を託すには、適任な方々だとわたしも思う。
もしかしたら現実の世界となる事で、ゲーム上の足りない細かな設定が、補われているのかもしれない。
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